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2005年02月09日(水)
「大好きなこと」を仕事にする難しさ

「ゲームセンター『CX』」(太田出版)より。

(よゐこの有野さんが、名作ゲームの制作者に開発当時のエピソードを聞く深夜番組を書籍化したものです。第1回「スペースインベーダー」の開発者・西角友宏さんのインタビューより。

【有野:ゲームはあまりやらないんですか?

西角:私は、部下には「あまりゲームにのめり込むな」って教えてるんですよ。私の部下の中で、ゲームにのめり込んで伸びた奴がいなかったんですよ。

有野:ゲーム好きとゲームが作れる人は違うんですか?

西角:違うんですね。私と同じで、あんまりゲームしないほうが、結構いいゲーム作っていたので、そういう考えですね。】

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 「テレビゲーム」という存在を日本中に認知させた「スペースインベーダー」の開発者である西角さんは、昭和19年生まれだそうですから、現在還暦を迎えられています。そのことだけでも、「テレビゲーム」自体が歴史を積み重ねてきたということがしのばれますね。
 あれだけの大ヒットゲームを作られた方ですから、さぞかしゲーム好きで、腕のほうも相当のものかと思いきや、ご本人によると「スペースインベーダー」の「1面はクリアできる。今までの最高は2面」で、「ゲームというのは、作っても遊んじゃダメ」で、「作って、遊んでいる人を観て、また作ってというのが私のやり方」だという話には、ちょっとビックリしました。

 よく「好きこそものの上手なれ」と言いますし、やっぱり、ある程度「自分が好きなもの」に対してでないと、創造的な才能というのを持続的に発揮するのは難しいと思うのですが(もちろん、才能を評価されることによって、モチベーションが上がる、という場合もあるでしょう)、「好き」という気持ちがあまりに高じてしまうのも考えものなのかもしれませんね。
 その対象を「一歩引いて」眺めることができないと、多くの人から評価されるような作品を創造することができない、という場合もあるのでしょうし。
 もちろん、そういう「愛情」と「客観性」を両立できる稀有な人も存在するのだとは思うのですけど。
 某映画評論家の方の「●ベリア超特急」などは、まさに「対象への愛情」はあっても…という感じですし(まあ、いろんな意味で「面白い」と思う人がいるのもわかるけど)、映画好きの有名人が作った映画というのは、そういう失敗に陥ってしまうことも多いような気もするのです。そこに、「ノウハウの欠如」という要因があったとしても。
 たぶん多くの映画製作者は、愛情から製作にかかわっているうちに、「プロ」としての客観性を身につけていくのでしょうから、いきなり「監督」として才能を発揮するのは、なかなか難しいことです。

 そういう意味では、「2番目に好きな人と結婚したほうが、幸せになれる」という「伝説」って、言い得て妙なのかもしれませんね。