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2004年06月06日(日)
本当の「リスク」とは何だろう?

「翼の王国」(全日空の機内誌)2004年6月号のコラム「起業家のリスク」(文・斎藤清美)より。

【だが、リスクとは何だろう?
 アメリカのある教授がビジネススクールの学生に、何をリスクと思うかと尋ねたところ、一人の学生が「アントレプレナー(起業家)になること!」と発言し、他の学生たちもうなずいた。すると、その教授は一人のアントレプレナーの言葉を引用した。
『どんなことがリスクだろう?収入源が一つしかないことだと私は思う。サラリーマンはリスクを背負っている。給料の出所が一か所しかないからだ。ビル清掃会社はどうか。客が100社あれば、収入は100か所から生じることになる』。(「となりの億万長者」トマス・J・スタンリー、ウイリアム・D・ダンコ 早川書房)
 不祥事の発覚やトップの経営判断の誤りで、突如会社が傾くことがある。サラリーマンの場合、個人の努力とはまったく無関係に、突然会社の外に放り出され安定収入を奪われるリスクがつきまとう。それでいて、どんなに頑張って働いても給料は「安定」していてさほど上がらないのだから、考えてみると実に割に合わない商売だ。】

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 確かに、「自分で会社を起こして独立」なんて話を聞くと、僕も「大丈夫かなあ…」なんて感じてしまいます。まあ、テレビとかに出てくる「起業家」の人たちには、怪しい人が多いので、そういうイメージが染み付いてしまっているということもあるのですが。
 しかし、こういうふうに言われてみると、確かに「サラリーマンというのは、割に合わないリスクを背負わされているにもかかわらず、『安定している』という幻想のもとにこき使われている職業なのかもしれないなあ」なんて気もしてきます。
 最近世間を騒がせた、銀行や自動車メーカーの不祥事にしても、実際に現場で働いている社員の人たちは「自分にはどうしようもない状況」にもかかわらず、矢面に立たされて、顧客に「お宅のメーカーは…」なんて責められたり、リストラの危機に直面したりしているわけです。そりゃ、同じ会社の「社員」であっても、ディーラーで働く一社員が日本中での状況を把握しているわけもありませんし、リコールのお知らせができる権限もないに決まっているのに。
 会社の上層部にとっては、これは「因果応報」なわけです。今まで自分たちがやってきたことの「結果責任」ですから、同じ社会的非難を受けるにしても、当然のことのような気がします。
 逆に、彼らはうまくやっていれば、賞賛を一身に浴びていたのだから。
 自分で車を運転していれば、事故に遭う前にハンドルを切ることもできるでしょうし、結果として事故にあっても「自分の責任」として諦めもつくでしょう。
 でも、他人が運転している車で事故に遭うというのは、やっぱりなんだか心残りなところもありますよね。

 ひょっとしたら「安定している」というのは、「自分で責任を取らなくてもいい」という本当の理由を隠すための表向きの自分への言い訳なのかもしれないなあ、なんて思いました。
 とはいえ、他人を乗せて運転するというのは、けっしてラクなことではないのでしょうし、無謀な運転をされては他のドライバーにも迷惑がかかるのも間違いないことなのですが。