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2004年03月06日(土)
「新人らしくないね。」という言葉

「私がアナウンサー」(菊間千乃著・文春文庫)より。

(フジテレビアナウンサー・菊間千乃さんが新人時代を回想して)

【「新人らしくないね。」私が新人の頃よく言われた言葉。そして一番嫌いな言葉だった。失敗しないように一生懸命やった。不安を打ち消すように、必死に取り組んできた。だから、大きな失敗はなかったように思う。でも、それが「新人らしくなく、つまらない」と言われた。小さくまとまるな、そうも言われた。当時の私は、その意味がよくわからず、わざとヘラヘラして、失敗すればいいのか?NG出せばいいの?アナウンサーっていったいなんなの?そんなことでも、悩み出してしまった。】

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 この言葉を読んで、僕は大学時代に一緒に病院実習していた女の子を思い出してしまいました。彼女は真面目で要領がよくて、先生の質問にもいつもきちんと答えていたし、カンファレンスでの発表も文句のつけようがなかったのです。僕はその姿をみて、うまくできない自分に強いコンプレックスを感じていたものでした。
 でも、この菊間さんの言葉を読むと、そういう彼女も、ひょっとしたら、こんなことを考えていたのかなあ、なんていう気もするのですよね。僕自身だって、優等生だった中学生のころくらいまでは、「子供らしくない」なんて周りから言われて、「じゃあ、子供らしく、やりたくもない缶蹴りでもしたり、読みたくもない「世界の名作」を読んだりしなければならないのだろうか?って。
 「子供らしさ」って、結局、大人の側からの「イメージの押し付け」なのです。「子供らしくしろ!」というのは、本当は「自分の思い通りにしろ!」という意味で。
 自分が大人になってみると、確かに子供というのは「幼い存在」で、「つまらないことで悩んでいる」ような気がしてくるのですが、「好きで悩んでいたわけじゃなくって、それが不安で仕方なかった」だけなんですよね、自分が子供だったときには。

 「他人とは違う人」「失敗しない人」に対して投げつけられる言葉で「○○らしくない」というのは、ある意味、究極のイヤミです。だって、失敗したら怒られるし、うまくやれば「らしくない」って嘆かれるのでは、本当に、行き場がなくなってしまいます。

 「らしさ」って、何なのでしょうね…考えれば考えるほど、泥沼にはまってしまう。
 まあ、あんまりそんなこと考えなくても、上司からみたら「新人らしく」失敗してみせられる人というのも、世間にはいるような気もするんですよね。
 でも、そういう人も「自分はこんなに一生懸命やっているのに、なんでうまくいかないんだろう…」なんて悩んでいるのかもしれません。
 他の人はうまくやっているように見えるんだよなあ、失敗さえも含めて。

 こうして悩むことは、けっしてマイナスにはならないとは思いますし、医者なんて仕事は「医者らしくしよう!」なんてプレッシャーに支えられて、身についていくのかなあ、なんていう気もするんですけどね。
 その「らしさ」っていうのは、自分で見つけ出すもので、他人に決め付けられることではないんだけどさ。