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2004年03月05日(金)
「長嶋茂雄」という聖域

市井紗耶香さんの話はこちらを御覧ください。


毎日新聞の記事より。

【脳卒中の疑いで4日、東京女子医大病院(東京都新宿区)に緊急入院したプロ野球の元巨人監督でアテネ五輪野球日本代表の長嶋茂雄監督(68)について、同病院脳神経センターの内山真一郎教授が5日、記者会見し、「中程度の脳こうそくが起き、右半身に軽いまひがある。生命に危険があるほどではないが、軽くはない」と発表した。

 内山教授によると、「(CT検査で)左の大脳に脳こうそくと思われる影が見られる」という。手足が自由に動かせない状態だが、意識はあり、会話はできる状態。ただ鎮静剤などを投与しているため、言葉はやや不明瞭(ふめいりょう)だという。

 今後の回復見通しについて、内山教授は「まだ不安定な状態で、ここ1週間の治療が大事になる。長期的なお話はできない」と明言を避けた。現在は脳にできた血栓を溶かすための点滴治療などを施しており、現時点では手術をする考えはないという。

 8月のアテネ五輪代表監督についても、「長期的な展望については差し控えたい」と述べるにとどまった。】

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 かなり以前に、こんな話を聞いた記憶があります。
 「メディアには、絶対に悪口を書いてはいけない『聖域』がある。ひとりは天皇陛下、ひとりは石原裕次郎(美空ひばりも、だったかな…)、そして、もうひとりは長嶋茂雄だ」
 現在では、某〇。ニーズ事務所の偉い人なども、この「聖域」として扱われていると言って良いでしょう。
 しかしながら、これらの人たちと比較してみると、長嶋茂雄という人の異質さは、あらためて浮き彫りにされるような気がします。天皇陛下の悪口なんて、右翼に狙われるかもしれないし、石原さんや美空さん、某大手芸能事務所の偉い人などは、悪口を書くことによって、「圧力」をかけられる恐れがあるわけです(出演拒否とか、ですね)。でも、長嶋さんというのは、そういった圧力みたいなものとは無縁な存在なのに、「聖域」として扱われている、唯一無二の人なのではないでしょうか。
もちろん、巨人の監督をやっていたときには、その采配能力を疑問視する声は上がりましたが、それ以上に「長嶋待望論」というか「長嶋さんのやることだから」と、巨人ファンはみんな、不平を言いながらも長嶋さんについていったような気がします。僕のようなアンチ巨人からすれば、「普通の監督だったら、もう何回解任されていることやら…」と思っていたんですけどね。
 それでも、2000年のONシリーズのような節目には、ちゃんと日本一になってしまう男。
 人々から愛されることによって「聖域」になってしまった、不滅の背番号3。

 さきほどから書いているように、僕は子供の頃から巨人が大嫌いでした。金をばらまいての補強と、テレビから聞こえてくる、あからさまに巨人の選手を贔屓した実況放送。広島ファンであると同時に、もしくはそれ以上にアンチ巨人だったのです。
 しかし、うちの母親は野球自体にはほとんど興味はなかったようなのですが、テレビに長嶋監督が映ると、「あっ、長嶋さん!」と嬉しそうに観ていたという記憶があります。
 「こんな巨人の犬のどこがいいんだ!」と小学生の僕がその背信行為を責めると、「う〜ん、でも長嶋さんだけは別」と、答えていたのを思い出します。母は関東育ちだったということもあったのかもしれないけれど、僕は今まで、本当にたくさんの人から、この「巨人は好きじゃないけど、長島さんだけは別」という言葉を聞いてきたのです。
 現在32の僕は、長嶋さんの現役時代のプレーや「巨人軍は永遠に不滅です!」というシーンのリアルタイムの記憶はありません。記憶している長嶋さんは、すでに「長嶋監督」だったのです。そして、一流プレイヤーで「記録より記憶に残る選手」であったという長嶋茂雄というのは、「巨人軍」の象徴として、けっして好意的にみることはできませんでした。
 なんだよ、みんな長嶋、長嶋って。王のほうがホームランたくさん打ってるのに!とか。

 正直、今でも長嶋茂雄という人間が、僕にはよくわかりませんし、「好き?」と聞かれれば、「面白い人だとは思うけど…」という感じです。あの、さまざまな伝説(野球観戦に行って、息子を忘れてきたとか、素っ裸で素振りをしていた、とか)で知られる天真爛漫なキャラクターは、確かに魅力的だと思うし、血液型B型、というのを聞くと、「要するに、長嶋さんみたいな人か」と思ってしまうのですが。
 でも、長嶋さんがプロ野球の監督としてのキャリアを終えられてから考えてみると、アンチ巨人としての僕は、「大多数の人に愛される球団=長嶋茂雄」に反発し続けていたような気がするのです。そして、巨人ファンは、きっとこの愛すべき人に「ほんとに何も考えてないんだから!」って言いながら、ずっとついてきたのだろうな、って。
 いつまでも現役で天真爛漫な長嶋さんに憧れる人もいれば、それに対して僕のように「つくられた虚像」を感じる人間もいた。どちらにしても、「心に引っかかる人」であることは間違いありません。

 「68歳の男性が脳梗塞を発症」
 医療を生業にしている僕にとっては、「よくある話」のひとつです。でも、この68歳の男性が長嶋茂雄という人だと、世間というのはこんなに過剰に「信じられない!」というリアクションを示すものなのだなあ、ということをあらためて知りました。

 「やっぱり、長嶋さんが好きだ!」なんて気持ちには、僕はいまさらなれません。
 それでもやっぱり、この人には元気で長生きしてもらいたいと思います。
 好き嫌いというより、やっぱり「昭和の神」ですし、悲しむ人もたくさんいるだろうし。

 たぶん、長嶋茂雄以外に「長嶋茂雄を演じ続けられる人」は、今後も出てこないはずです。
 今回の急病の話を聞いて、なんとなく、「ずっと長嶋茂雄をやらせてしまって、すみません」とか思ってしまいました。

 キライキライも好きのうちって、こういうこと、なのでしょうか…