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2002年12月29日(日)
『痴呆は病気』なのだと、誰か教えてあげて…


読売新聞の記事より。

【28日午後10時半ごろ、埼玉県杉戸町鷲巣で、会社員松本行夫さん(63)が帰宅したところ、自宅の台所で妻の千恵子さん(62)が倒れ「頭が痛い」などと訴えているのを見つけ、119番通報した。千恵子さんは病院に運ばれ、間もなく死亡したが、顔や腹部など数か所にあざがあったことから病院が杉戸署に通報。署員が自宅にいた長男の会社員松本昭則容疑者(29)から事情を聴いたところ、千恵子さんに暴行したことを認めたため、傷害致死の疑いで緊急逮捕した。

 調べによると、松本容疑者は28日午後9時40分ごろ、自宅の台所で、痴呆症の千恵子さんが近所の悪口を言ったことなどから腹を立て、口論となり、複数回にわたり殴るけるの暴行を加え、死亡させた疑い。】

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 年の瀬だというのに、暗い話題。こういう話を聞くと、「なんてひどい息子なのだろう」と思ってしまいます。でも、この息子は僕と同世代ですから、彼の気持ちもわからなくはないのです。
 僕も仕事柄、痴呆のお年寄りに接する機会は多いですし、自分の親も亡くなる前に病気の影響で痴呆状態になったことがあります。
 それはもう、子供としてはもどかしいこと甚だしい。
 周りの人に対して攻撃的になって悪口を言ってみたり、被害妄想的になってみたり。
 赤の他人であれば「こういう病気なのだ」と受け入れられることでも、自分の身内となると、ただただ、哀しいことばかり。
 もちろん、殴る蹴るはしませんでしたが、そういう気持ちになったことがないとはいえません。
 30歳くらいというのは、自分の親に対して、きっとまだ理想を捨てきれていないくらいの時代なんでしょうね。
 
 こういう事件を聞くたびに思うのは、「痴呆は病気である」という概念が、いかに世間に対して認知されていないか、ということだと思うのです。
 どんな悪口でも、「病気が言わせている」という認識ができていれば、少なくともこの息子のように暴行には至らなかったのではないでしょうか。
 今の世の中、高齢化社会で痴呆の人が増えているにもかかわらず、それに対する世間の認識は追いついていないんですよね。
 これからも、痴呆の人は増えていくばかりで、けっして減ることはないでしょう。
 むしろ、「痴呆は恥」として隠蔽してしまうよりは、そういう症状が出る病気なのだ、という認識のもとに痴呆の人や家族をサポートしていくことが必要なのでは。
 学生時代などに、施設でのボランティアなどを取り入れていくことも大切でしょう。
 みんなそうなのだ、ということを知っていれば、そんなにギャップに悩むこともないはずですし。

 こういう事件は、哀しすぎます。お母さんも息子も、望んだ結果ではないはずなのに。

※今年の「活字中毒。」は、今日で更新終了です。
 一年間、御愛読ありがとうございました。
 皆様、よいお年をお迎えください。

 また来年、お会いしましょう!