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| 2002年12月27日(金) ■ |
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| 「京都中央信金立てこもり事件」と「NY同時多発テロ」 |
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毎日新聞の記事より。
【京都中央信用金庫本店(布垣豊理事長、地下1階・地上9階建て)6階の応接兼会議室で拳銃らしきものを持った男が職員4人(男性3人、女性1人)を人質にして立てこもった事件は、26日午後4時40分に女性を、同10時半すぎに男性1人を解放した。その後、こう着状態が続いていたが、27日午前2時半すぎに、京都府警の捜査員らが男の身柄を取り押さえ、残る男性2人も解放された。人質は全員無事だった。
調べでは、男は元不動産会社経営、徳田衛一容疑者(60)。府警は「人質による強要行為等の処罰に関する法律」違反容疑で現行犯逮捕した。同容疑者は、同信金から約9億円の融資を受け、返済が滞っていたという。
徳田容疑者は、自分が関連するホームページで、同信金から融資を受ける約束だったのに反故(ほご)にされたと主張。この融資を巡り、京都地裁で争われた訴訟にも言及しており、これらが事件の背景になったとみられる。
徳田容疑者は事前に、今回の事件を予告するビデオを撮っており、同日午後7時過ぎ、徳田容疑者の元部下が会見し、同容疑者が託した行動釈明書を配布。「信金が会社を倒産に追い込んだ」と非難していた。】
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僕がこの事件の犯人の「予告ビデオ」を観て思い出したのは、昨年9月のNYの同時多発テロなのです。 「ナニワ金融道」という街金(あのチラシがベタベタ貼られてる、「電話一本ですぐ10万貸します!」とかいうやつですね)を扱ったマンガを読まれたことがあるでしょうか? あれを読むと、金融機関というのは、公的な性格を持っているはずの銀行も含めて、すべて営利目的の企業であるということがよくわかります。 要するに、お客のためにではなく、自分たちが儲けるために働くというのが、彼らの流儀。扱っているのが「金」という生々しいものだけに、法律を逆手にとって中小企業をくいものにするようなことだって、そんなに珍しいことではないのです。騙されるほうが悪いといわれては、どうしようもないですが。
今回の犯人たちのホームページを僕も見たのですが、たぶん、銀行側の対応にも問題があったのだと思われます。とはいえ、彼らの「正義!」を前面に打ち出したホームページは、徳田容疑者を礼賛している怪しげな宗教みたいで、彼らへの同情というより、「なんだか気持ち悪い…」というのが全体的な印象なのですが。
どうして僕が、同時多発テロのことを思い出したのかというと、この犯人のやり方を見て「バカだなあ」と思うと同時に、「では、彼らが自分の言い分を世間に主張するための、もっといい方法があったのだろうか?」と考えると、どうしても、「もっとマシな方法」というのが現実的に思いつかなかったからなのです。 これだけ主張系のホームページが巷間にあふれている現状では、そんな新興宗教チックですらある彼らの訴えに、わざわざ耳を貸そうとする人はほとんどいないでしょうし。
同時多発テロは、狂信者たちの犯行とされていますし、もちろん僕はテロというやり方を支持するものではありませんが、「では、彼らがアメリカの横暴を訴えるための、より良い方法があるのですか?」と問われたら、僕には現時点では、返す言葉がみつからないのです。 あのテロも「世界貿易センターに突っ込んでいく飛行機」の映像がメディアによって世界中に配信されなければ、ここまで世界中の人々を震撼させることはなかったでしょうし、そのことが「アメリカの覇道」を世界に対して浮き彫りにしたというのは、まぎれもない事実でしょう。 徳田容疑者のやったことは許すべからざる犯罪ですし、被害者が出なくて本当によかったと思います。 でも、彼のような(もしくは、彼とその仲間たちが思い込んでいるような)「銀行に騙された」人は、世間にたくさんいるはず。 彼らは、法にも護られず(もちろん、金融機関は法を熟知して、その隙をついているわけですから)、自ら命を絶ったりするしかなかった人もけっこういたのではないでしょうか。
今回の立てこもり事件と同時多発テロ。 自分の意見を主張するために、自爆テロをやったり、拳銃を持って立てこもったりして他人を犠牲にする人たちはバカだと思う。 でも、そういう愚かな方法でしか、世界に対して効果的に訴えられない、という現実にも、やるせない気持ちになってしまうのです。
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