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2002年09月21日(土)
2002年9月21日。


「九州ウォーカー」2002.No.20の映画「es(エス)」の紹介記事より。

【被験者を募集していた高収入の実験に参加したタレク。それは、擬似刑務所内で看守役と囚人役に分かれて2週間過ごす実験だった。参加した男たちは時間の経過とともに驚くべき豹変ぶりを見せ、看守役が囚人役を虐待しはじめる。】

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 映画「es」といえば、えっ?あのミスターチルドレンの?と一瞬思ってしまいが、それとはまったく別。
この映画、1971年のスタンフォード大学心理学部の実験をモチーフにしているのです。この実験というのは、参加した男たちを囚人役と看守役とにランダムに分け、「囚人は番号で呼ばれる」「看守に対しては、『看守さん』と呼ぶ」「食事を残してはならない」などの簡単なルールに基づいて擬似刑務所生活をおくらせるというもの。
結局、その実験は、途中で中止されてしまいました。なぜかというと、看守役たちは、どんどん囚人たちを「虐待」するようになり、囚人たちは、どんどん精神的に卑屈になって、追い詰められていったから。この実験に参加するまでは、看守役も囚人役もごく一般的な市民だったのに。
あまりの異常な状況に、研究者たちは、実験を途中で打ち切ったそうです。
 ちなみに、「アイヒマン実験」という有名な実験もあり、こちらは、研究者に「正義のため」と命令されると、他人がひどい苦痛を感じるような電気ショックのスイッチを被験者は、嬉々として押すようになってしまうようになる場合が多い、というものです。

 なんでこの実験のことを書いたかというと、昨日解剖をやっていて、「これって、死体損傷」だよなあ、という思いが湧いてきたからなのでした。たとえば、警察が犯人を捕まえるために拳銃を撃つこととかもそうなのですが、世間には「これが正義なんだ」という裏づけがなければ、できないことってけっこうあるような気がするのです。
 「医学のため」「治安のため」に必要なことだと思ってやっていることだし、それはたぶん当たっているのだろうけれど、ひょっとして、僕たちは「世界のため」「人類のため」と信じこまされて、とんでもないことをやらされることがあるかもしれません。
 正しいと思い込まされてしまえば、どんなことでもやるようになる人がほとんどだと思うのです。残酷なことでも、喜んで。
 僕が北朝鮮に生まれて、「正義のために日本人をさらってこい」と言われれば、その通りにしたかもしれないですし。
 異常な国家の異常な行動。そういってしまうのは簡単なことだけれど、少なくとも国民すべてが生まれつき異常ではないでしょうし、悪いことだと知りつつ悪事をはたらく人は、世の中そんなに多くはないような気がします。
 人間って、悲しいほど何かに染まりやすい存在。