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2002年08月07日(水)
2002年8月7日。


「エキゾティカ」(中島らも著・双葉文庫)より抜粋。

【道で待っていると黄色いタクシーがやってきて止まった。くみこはすぐには乗り込まない。運転手と交渉する。

「60ルピーズ」「ノー、ノー、20ルピーズ」

(中略)

 結局のところ、40ルピーあたりに落ち着くのだが、こういった交渉はインドにいる間ことあるごとに起こった。わたしはタクシーに揺られている間、くみこに尋ねてみた。
「60ルピーっていったら180円じゃないか。それをどうしてあんなに必死で値切るの?」
「それは、ひとつにはくやしいからです。インド人は、こっちが日本人だと見るとふっかけてきます。それをいいなりに払うのがくやしいんです。それと、われわれが言い値で払っていると、後からインドにやってくる旅行者に迷惑をかけることになります。日本人は言い値を払うという認識がインド人の側にできてしまいますから。だから値切るのはひとつのエチケットなんです」
 なるほど、とわたしは思った。そしてその値切る癖は、すぐにわたしの身についてしまった。】

〜〜〜〜〜〜〜

 値切るのって、得意ですか?
 ひと昔前、秋葉原の電気街は「値段は店員との交渉しだい」なんて言われて、買い物好きのマニアたちは腕まくりして出かけたものなんですが、僕はどうも苦手でした。「値切る」という行為自体がなんだか恥ずかしいような気もしましたし、「どんなに値切っても、店が儲かるようになっているんだから、めんどくさい駆け引きなんかせずに、最低の価格設定を出してくれりゃいいのに」と思ってました。
 よく「値切らなきゃ損」とはいいますけれど、今でも女の子と一緒のときでもなければ、その何百円単位のところはどうにかして、というくらいです。せいぜい。
 でも、海外旅行では、日本人観光客はふっかけられると言いますよね。実際そうなんでしょうけど。でも、この文章のような場合、僕だったら60円のために、めんどくさい駆け引きをするかなあ、と考えてしまいました。
1万円のタクシー代を1万五千円といわれたらかなわないけど、120円が180円になったって、たいして変わらないから、いいよ、言い値で、と思ってしまいそう。現地の人にとっては、えらい違いなんでしょうけれど。
 確かに、むこうに「バカな観光客」と思われるのは悔しいし、後で来る人たちもふっかけられるのは腹が立つけれど、正直、お金で解決できる面倒くささなら、あとはプライドの問題なんでしょうね。
 しかし、日本人は観光客にふっかけない、数少ない民族のような気がします。まあ、この物価の高い国でふっかけられたら、観光客も何も買えなくなるという事情があるとしても。