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2002年07月30日(火)
2002年7月30日。


「ただマイヨ・ジョーヌのためでなく」(ランス・アームストロング著・安次嶺佳子訳・講談社)より抜粋。

【あるときニコルズ医師(睾丸癌に侵されたランス・アームストロングの主治医、癌の専門医)に、なぜ癌科医の道を選んだのか、と訊いたことがある。困難でひどくつらいことが多い仕事だろうに。「たぶん君と同じ理由からだよ。」彼はある意味では、癌は病気のツール・ド・フランスなのだ、と言った。
 「癌の重荷はあまりにも大きい。けれど他にこれほど挑戦しがいのあるものがあるだろうか。癌が希望を失わせるものであり、悲しむべきものであることは確かだ。それでも、力およばず治すことはできなくても、助けてあげることはできる。最終的に回復には至らなくても、少なくとも病気をコントロールするのを助けることはできる。人とつながっていられるんだ。どんな仕事よりも、癌科医には人間らしい瞬間がある。慣れることは決してないだろうけど、でも、病気と闘う人たちを心から受け入れ、人の強さを心からすばらしいと思えるようになるんだ」】

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 ランス・アームストロング選手、ツール・ド・フランス4連覇おめでとうございます。あまりの強さに、もう人々は彼が末期癌から奇跡の生還を果たした人間だということを忘れてしまいそうですが、きっと、彼自身は、そのことを精神的支柱にしているんでしょうね。
 これは、アームストロング選手の主治医だった医師の述懐なのですが、彼は、医者という仕事は、奉仕という面もあるけれど、自分への、人間への挑戦なんだと言っています。もっとも厳しいことに挑戦することによって、辛いことも多いけれど人間というのを素晴らしいと思えるようになる、と。
 ニコルズ医師は、特別な人間ではありません。でも、彼も医者として、「癌というツール・ド・フランス」を闘っているわけですね。
 ごく普通の人間が力を尽くして生きていく、ということ自体が、ツール・ド・フランスなのかもしれません。それは、新聞やテレビで報道されることはないけれど、偉大な挑戦。大事なのは、人がどう思うかではなくて、自分で自分の生き方をどう考えていくか、ということなんでしょうね。
 それを自覚するために癌になるというのは、あまりにも辛すぎるとは思いますが…