| 2005年11月25日(金) |
恋愛遍歴(社会人編・2) |
11月16日『恋愛遍歴(高校時代編)』 11月17日『恋愛遍歴(大学時代編)』 11月21日『恋愛遍歴(社会人編)』 の続きです。よろしければそちらからお先にどうぞ。
※文中の男性は仮名です。
最初の職場でいろいろあった結果、私は1年と経たずにそこを辞めて転職した。最初の職場よりも私の希望に近かったし、やたら院長の個人的な雑用を頼まれる事を除けばやり甲斐もあった。私はそれなりに楽しく働いていた。
村木さんと出合ったのは、そこに就職してそう経たない頃だったと思う。
きっかけは友人の一言だった。 「ねぇ咲良ちゃん、コンパしない?」 相手はその友人がその時通っていた病院の職員だった。ちょっと前に車で衝突事故を起こし、むち打ちのリハビリのために通院してた病院で、リハビリ室の職員と仲良くなったのだと言う。メンバーはリハビリ室の先生、いわゆる理学療法士の人と、その助手、そしてその助手さんの友達だという出入りしてる製薬会社の営業マン。
しかしよく聞いてみると、その理学療法士の先生は既婚で、独身なのは後の2人だけ。 「ん〜だからまぁコンパって言うよりおごってもらって楽しく飲もう、みたいな感じなんだけど」 と笑う友人。日頃からそのリハビリ室での楽しかった話などを聞いてた私は、特に出会いに期待するわけではなくただ楽しそうだから、と参加を承諾。もう1人友人を誘って、3対3での飲み会が実現した。その『理学療法士の先生』が村木さんだった。
初めて行った居酒屋だった。村木さんのお気に入りだというこじんまりした店。料理もおいしくて話も楽しくて、本当に楽しい飲み会だった。
その帰り。
車で来てた私は、友人2人を送って帰る予定だった。すると最初に話を持ちかけた友人が言った。 「村木先生も近所だよね?」 聞けば、友人2人の家も近いのだけど、村木さんの家も2人のすぐ近所なのだそうだ。当然、 「じゃぁ一緒に送りましょうか?」 という話になった。おごってもらったし、そのお礼に・・・という軽い感じ。
まず友人を1人おろす。次にもう1人。最後に村木さんが残り、 「じゃぁ俺ナビするから」 と助手席に移動してきた。言われるままに車を走らせる事5分、突然村木さんが言った。 「そのちょっと行った先に道の脇に駐車スペースあるから、そこで1回停まって」 ・・・・なんで?と思いながらも車を停める。 「ちょっと休憩させて・・・久々に飲みすぎちゃった。この状態で帰るのはキツイわ」 と言ってシートを倒す村木さん。確かに相当飲んでる感じだったから 「そのまま帰ったら奥さんに怒られますね」 なんて笑って、そのまま10分ほどたわいない話をしながら時間をつぶした。
「咲良ちゃん・・・」 「はい?」 顔を覗き込んだ。
ひょいっと抱き寄せられ、キスをされた。
そのまま助手席に引き寄せるように抱きしめられ 「今日は咲良ちゃんに会えたから行って良かった」 と言われた。
もちろん、本気になんかしなかった。酔っ払いはすぐ調子のいい事を言うから、と苦笑するような気持ちで 「はいはい」 と言って抱きしめてあげた。
家まで送った。別れ際に 「今度連絡していい?」 と言われた。どうせ覚えちゃいないだろうと思い 「いいですよ」 と答えた。
本当に連絡が来たのは翌日だった。
電話が来れば話す。1週間ほどそんなやり取りが続いただろうか。ある日の夜、電話がかかってきた。 「今日、仕事関係で飲み会なんだ。終わってから会わない?」 「それ、迎えに来てって事ですか?」 と笑う。 「そう、迎えに来て欲しいの(笑)・・・・ついでにデートしようよ」
既婚者だ、という事はもちろん判っていた。でも、好奇心が勝った。
本当は、最初の飲み会で会った時から好みだと思っていたから。
もちろん、自分から誘うつもりはなかった。でも向こうから誘ってきたんだし・・・と考える。1回ぐらい、そういう事があったっていいんじゃない?
出たとこ勝負だ、みたいな気持ちで指定された場所に行く。村木さんの言うままに車を走らせると、やがて住宅街にある小さなホテルに着いた。初めて行く場所だった。 「こんな所にホテルがあったんだ・・・誰と来たの?(笑)」 「専門学校時代にここの前通って通学してたんだよ。まぁ昔の彼女とも来た事あるけど(笑)」
罪悪感、とか後ろめたい、という気持ちは不思議とまったくなかった。そして、そんな自分に少し驚いていた。
部屋もこじんまりしたホテルだった。ゆっくりくつろぐというよりはまさに隠れ家。特におしゃれでもないし、豪華でもない。いつも村木さんがお金を払っていたので、部屋代がいくらぐらいなのかは全然判らなかったが、そう高くはなかっただろう。
初めて関係を持ってしまった翌日、電話をくれた。いつものようにたわいもない話をして、切る時に 「また会える?」 と聞かれた。それが始まりだった。
何度か思った。1回だけで終わってたら、あれは『浮気』と呼ばれるものだったんだろう。でも何度も続いてしまったら・・・・今自分がしてる事は『不倫』なんだ。それでも、不思議と罪悪感はなかった。私、貞操観念がおかしいのかもしれないなぁ、と思った。
会うのはせいぜい月に1回程度だった。多くても2回。ほとんどの場合、村木さんが何かしらの飲み会の帰りに電話をしてきて、迎えに行ってそのままホテルへ行く。テレビを見たりちょっと眠ったりしながら2回SEXをして、村木さんを職場の駐車場まで送る。
なんかていのいい足代わり+SEXのオマケ付き、って感じだなぁと思いつつ、でも村木さんは嫌いじゃなかった。村木さんは、私を抱く時いつも丁寧だった。避妊もキチンとしてくれたし、前戯も手を抜かない。無茶な要求もしないし、たまに眠り込んでしまう時も肩を抱く手が離れることはなく、絶対に背中を向けなかった。
回を重ねれば情も沸く。いつしか私は村木さんからの電話を心待ちにするようになった。でも私から電話をする事は滅多になかった。『それはしちゃいけない』という自分なりのルールのつもり。奪いたいとか独占したいとかそういう気持ちはない。もし奥さんにばれるような事があったら、即土下座して関係は終わりにする。そんな覚悟はしていた。
「咲良ちゃんの誕生日にはどこかでご飯食べようか」 と言われた。嬉しかった。2人で食事なんてできないと思ってたから。
でも、それは結局実現はしなかった。約束なんてなかったかのように、誕生日は通り過ぎて行った。
きっかけを作った友人にも話してなかった。だから彼女は無邪気にリハビリ室での村木さんの様子を話す。自分が持ってた缶コーヒーを取られた事。助手さんと2人して『早く彼氏作れ』といじめられる事。こないだどこかで講演したんだって、という事。
そんな何気ない会話の中で聞いた。
村木さんが家を建てた、と。
「すごいよね、31歳で一戸建てって割りと早いよね?PT(理学療法士の略称)って給料いいもんね〜。子供もついこないだ1歳になったばっかりって言ってたし、奥さん幸せいっぱいだろうね」
産まれたばかりの子供がいることはちゃんと知っていた。でも、改めて聞いたらなんかショックだった。なんで私はショックを受けてるんだろう?と思った。私は、自分で思ってる以上に村木さんにのめりこんでいたみたいだ。
私は、2つ目の職場も1年ぐらいで辞めた。事務長と徹底的にそりが合わず、私を疎ましく思った事務長が院長や専務(院長婦人)にある事ない事吹き込んだせいで居辛くなったのだ。話もまともに聞いてはもらえず、最後には 「解雇扱いにしますから。それなら失業保険がすぐ出るからいいでしょう」 と切り捨てるように宣告された。
仕事を辞めた後、友達の紹介で2ヶ月だけの短期のバイトをした。村木さんとは続いていた。そして春先、どんな流れだったのかは覚えてないが、村木さんと助手さんと助手さんの彼女さんと4人で、助手さんカップルが同棲してる部屋で一緒にご飯を食べる事になった。
彼女さんのおいしい手作り料理をご馳走になり、村木さんと2人でマンションを出た。帰る途中で、川沿いの桜がキレイな場所を通った。 「ちょっと花見していこうか」 と言われ車を停め、公園になってる川原の桜の下を散歩した。ベンチに並んで座り、ぼーっと桜を見上げて 「キレイだねぇ」 と話した。
なんとなく別れがたくてそのままホテルへ行った。
そして、それが最後になった。
| 2005年11月21日(月) |
恋愛遍歴(社会人編) |
『恋愛遍歴』(高校時代編) 『恋愛遍歴』(大学時代編) の続きです。よろしければそちらからどうぞ。
※文中の男性はすべて仮名です。
結局、就職が決まらないまま卒業した私はいわゆるプータローになった。決まりさえすればすぐにでも就職したいという気持ちがあったのであえて長期のバイトは探さず、短期や単発のバイトをいくつもやった。
私が就きたかった仕事は若干特殊で採用枠が狭い上に、その仕事する上で持っていた方が良いとされる資格を私は持っていなかった。どうすればいいのかわからないままとりあえず目先のお金を稼ぐために行っていたバイト先で、谷中さんに出会った。
友達の親戚がやっている食料品店。週に1回土曜日だけの出勤で1日1万円。朝は早かったし仕事も立ちっぱなしできつかったけど『自分の生活費で親に迷惑はかけない』という条件で就職浪人を親に認めてもらっていた私には、その金額は魅力だったのだ。
谷中さんはその店には珍しく20代だった。見た目もどちらかというと小柄で華奢な感じで、食料品店のおじさんと言うよりは飲食店のウェイターなんかが似合いそうなタイプ。最初からなんとなく気になってはいたがバイト中にプライベートな会話をするような余裕はなく、谷中さんが勤め始めてから1ヶ月近く、挨拶程度にしか言葉を交わした事はなかった。
仕入先から店に向かう車の中で初めてまともにしゃべった。仕事きついよね〜なんて話しから、極めて自然に 「彼氏いるの?」 なんて聞かれる。いませんよ、谷中さんは?と聞いたら 「一応いるけど・・・・なんかもう自然消滅っぽい状態」 そこからどんな流れで話しが進んだのかは覚えていない。いつのまにか“コンパしようよ”という事になり、そこで携帯の番号を交換した。
その日の夜だっただろうか。それとも次の週末の夜だっただろうか。土曜日の夜だった。たまたま私はその時街にいた。友達と遊んでたのか何かの飲み会だったのか覚えていない。谷中さんから電話がかかってきた。 「街にいるんだけど、ヒマだったら出てこない?」 「え、私も街にいるよ。じゃぁ今から行くよ。どこ?」 場所を聞いて、馴染みの店だというスナックで合流した。常連仲間だというカップル1組が一緒だった。お店のママさんの 「谷中君がここに女の子呼んだの初めてねぇ」 という言葉にちょっと嬉しくなった。
しばらくそこで飲んで、じゃぁ帰ろうか・・・と歩き出した。話しが楽しくて、もうちょっとしゃべろうよ、とちょっと裏道に入った小さな公園の中に座った。肩が触れるほど近くに座って、小さな声でおしゃべりをする。しばらく話しが途切れた時に、さらりとキスされた。
ビックリした。
でも拒まなかった。
もう1度キスをした。
「・・・・・付き合おうか」 「・・・・・でも彼女いるんでしょ?」 「もう何ヶ月もちゃんと会ってないよ。っていうか俺の中ではもう終わってるし」 「・・・・・本当?」 「うん」 「・・・・・・・・・・じゃぁいいよ」
その日はそれだけだった。私が自転車を置いてた所まで送ってくれて、別れ際に私が 「ねぇ、でもやっぱり気になるから、ちゃんと彼女と別れて?付き合うならそれからにしたい」 と言ったら 「本当に俺はもう終わってるつもりなんだけどな」 と苦笑しながらも 「わかったよ。次会うまでにはちゃんとしとく」 と言ってくれた。4月の下旬だった。
最初の内は楽しかった。大学の仲間で飲み会をした後に迎えに来てくれたりする『彼氏』は今までで初めてだったから。でも、思えば付き合い始めてすぐのGWが始まる頃にはもうおかしいなと思う点が出てきていたのだ。
「連休中は会えるかわかんないんだ」 と言われた。初めてホテルに行った帰りの別れ際だった。連休になったら一緒にドライブに行きたい、お泊まりデートもできるかな?なんて1人で思い描いていた私は 「なんで?」 と聞いた。 「今の店、辞めようかと思ってて。正直あの仕事を毎日はきついし、同じ仕事でももっと楽な条件の店はあると思うんだ。次の店のアタリをつけてから社長には言いたいから、連休中は就職先探しに使いたいから」 店がキツイのはよくわかる。私は週1だからいいけど、確かにあの勤務条件で毎日はキツイだろう。でもだからって連休全部つぶれるわけじゃないんだったら、1日ぐらい私と会うために空けてくれたっていいんじゃない?・・・・と思いながらも、でも社会人なんだからそんなもんなのかもしれない、と自分に言い聞かせながら 「わかった。じゃぁ時間が取れそうだったら電話して?」 と言うのが精一杯だった。
でも結局、GW中は一度も会えなかった。電話もなかった。『電話して』と言った手前、私からはかけられないと意地になってる間に連休は終わってしまった。
連休が終わって数日後、友達と福岡にコンサートに行った。福岡にいる友達とライブの後食事の約束をしてたのだけどそれが急にダメになり、私達は予定外に早いJRで熊本に帰る事になった。その帰り道、谷中さんから電話がきた。 「急にヒマが出来たから・・・会うかなと思って」 電話がきた事に安心して泣きそうになった。
付き合い出して10日と経たないうちに寝てしまった事が、実は私の中でひっかかっていたのだ。谷中さんは、私にとって健太郎君以外で初めて寝た男の人だった。付き合ってすぐに体を許してしまった事で軽いと思われたのかもしれない、それとも1回やれたらもう飽きられたのかもしれない・・・なんて1人でぐるぐる考え込んでいた。そんな時にふいにかかってきた電話。私は今福岡にいること、でも今からJRで帰るから1時間半もあれば熊本に着く事、それからでいいなら会いたいと伝え、JRが着く時間に駅まで迎えに来てくれる事になった。
一緒にいた友達も、駅まで彼氏が迎えに来ていた。私も知ってる彼氏だった。 「咲良に彼氏って久々じゃない!?今度ゆっくり紹介してよ」 とニヤリと笑う彼女に笑顔で手を振り、1週間ぶりの谷中さんの車に乗った。
すでにそれなりに遅い時間だった。 「泊まりでいい?」 と聞かれ、ちょっと戸惑った。泊まるのは構わない。福岡の友達と食事してくる事は親にも伝えてあったから、話が弾んで遅くなったから泊めてもらったと言えばいいやと、言い訳はもう考えてあった。ただ・・・・・ 「大丈夫だけど・・・・・・・・」 「ん?」 「えーとね・・・・・・・生理なの・・・」 なんてタイミングが悪いんだろう。1週間ぶりに電話をくれたのに。もしこれで 「じゃぁいいや。帰ろう」 なんて言われたら立ち直れない。バカバカしいまでの決死の覚悟で打ち明けた私に、谷中さんはアッサリと 「ん〜・・・俺は気にしないけど?」 と言った。
・・・・え?生理でも平気って事?それともHナシで泊まるのでもいいよって事?どっちなのかはわからないけど、機嫌を損ねたわけではないらしい。 「あ・・・じゃぁいいよ」 となんだか拍子抜けな気持ちで答え、そのまま車は1軒のホテルに入った。
ちょっと不思議な部屋だった。入った時の感じは間違いなくラブホテルだったんだけど、部屋に入ったらシングルベッドが2つあったのだ。
え、ベッドが2つ?ラブホなのに?
不思議に思いながらも、シャワーを浴びて、結局SEXした。でもなぜか、谷中さんは途中でやめた。 「やっぱやめとこう」 「え?なんで?・・・・ごめん、やっぱり気持ち悪い?」 「いや、そうじゃないけど・・・なんか体に悪そうだよ。無理してしなくてもいいじゃん」
言葉だけ見れば優しさのようにも思える。でも、実際に言われた私はとてもそうは感じなかった。『体に悪い』というのが、私の体にとってではなく彼の体にとって悪いと言うような響きで私の耳には届いた。
やっぱり付き合って2度目のHが生理中ってのはマズかったかな・・・断った方が良かったのかな・・・・
バカな事を考えて逡巡してる間に、谷中さんはさっさと隣のベッドに移ってしまった。 「一緒に寝ないの?」 「隣に人がいると眠れないんだ」 さらっとそう言って隣のベッドに潜り込む。 「おやすみ」 それだけだった。
眠れなかった。『隣に人がいると眠れない』・・・・・だからこのホテルなの?ここならHした後でも別々のベッドで眠れるから?今までにも何度も来てるホテルなの?今までの彼女とも来たの?
結局私は聞けてない。自然消滅状態だったという彼女とその後ちゃんと別れたのかどうか。
ほとんど眠れないまま朝になり、午前から用があるという谷中さんと8時前に別れて、私は1人で放り出された。家に帰るには早すぎて、駅にあるドーナツショップで朝食がてら時間を潰した。
なんだかとても惨めな気持ちだった。
それからも、何度か会った。ドライブもしたし、食事にも行った。でも会うのは全て夜だった。休みが不規則で、そのたまの休みも新しい就職先探しに使ってしまうという谷中さん。たまには昼間に会いたいと言う私。電話も、何時ならかけていいのかわからない。かかってくるのを待つだけ。
・・・・・・・この人、本当に私の事好きなんだろうか?
不安にかられてどんどん鬱屈していく。ほんの小さな『好かれてるよね』と思える出来事のカケラにすがるようにして自分をなだめる。そんな日々が2週間ほども続いたある日、決定的な事が起こった。
その日も夜会っていた。レイトショーの映画を見に行って、ドライブをした。港の近くで車を停めて、しばらくぎこちないお喋りが続く。やがて話しが途切れた時、運転席から手を伸ばされた。
・・・・え?ここで?
そりゃ確かに暗くて外からは見えないけど、少し離れた所には他に車も停まってるし、釣りをしてる人だっているのに?
緊張で体をこわばらせながらも、ここで拒んだら本当に嫌われてしまうかも・・・という恐怖で断れない。初めてのカーセックスだった。なのに、谷中さんはその最中にとんでもない事を言ったのだ。
「今働いてないから厳しいんだよね・・・・5千円でいいから貸してくれない?」
下世話な話で申し訳ないが、それは、前戯や後戯の途中ではなかった。まさに『最中』。耳を疑った。それはSEXをしながら言う事?
結論から言うと、貸さなかった。ちょうど財布の中に1万円札と千円札しかなくて“5千円”という金額を出せなかったというのもあるし、本能的に 「ここで貸しちゃったらダメだ!」 と危機感が働いたというのもある。ここで貸しちゃったら、もうそのまま私達のパワーバランスが決まってしまう。マイペースという言葉を隠れ蓑にするただの身勝手な男。嫌われたくなくて言いなりになってしまう私。そんなのは違う!
別れ際、かなり気まずい空気の中、それでも私は言ってみた。 「本当に私の事好きで付き合ってる?」 「・・・・・・」 「私、全然好かれてるって実感ないよ。谷中さんの気持ちがわからないよ」 「・・・・でも、俺はいつも本当にこんな感じだよ。今までの彼女にもそうだったし・・・・だから続かないのかもしれないけど。咲良ちゃんは大丈夫かと思ったんだけどな」 「・・・・・・ちゃんと好きだって言ってもらった事ないよね」 「・・・・・・・・・」 「・・・・・・帰るね」 沈黙に耐えられなくて、逃げるように車を降りた。
数日後、電話で話した。先に切り出したのは谷中さんだった。 「もう会うのやめようか」 「・・・・なんで?」 「なんでってなんで?」 「・・・・・・・」 「もう疲れたよ。会いたい会いたいっていっつも言うし」 「何それ!?だっていつ会えるかわからないっていつも言うじゃない。だったら会いたいと思ったら言わないとしょうがないでしょ!?会いたくなっても、谷中さんから電話がくるまでただおとなしく待ってなきゃいけないの?私から会いたいって言うだけでもいけないの!?」 「・・・・もういいよ!」 ウンザリしたような声が最後だった。そして電話は切れた。
呆然とした。これで終り?こんなもんで終り?もういいよ、って言ってやりたいのは私の方だ。私の事を好きじゃないんならもういいよ。あんたみたいな男いらない。そう言ってやりたいのは私の方だ。なんで私が振られなきゃいけない?
電話の前で座りこんだまま、動けなかった。付き合い出して1ヶ月も経っていなかった。
半月ほども引きずっただろうか。でもやがて、いつまでもふっきれない自分がイヤになり、悔しいから絶対忘れてやる!なんて妙にムキになった。1ヶ月ほどの間に2人の男の子と寝た。でも別にヤケになってたわけではなくて、ただ単にそうなってもいいなぁと思っていた人と偶然立て続けにそうなる機会があったというだけの事だ。
1人は、大学の同期の子だった。もう1人は2コ下の男の子。
大学の同期だった彼とは、その後も何度かそうなる機会があった。2コ下の彼とはその1回きりだった。そうやってなんとなく2人の人とSEXをして、思ったのだ。
SEXする事も付き合う事も、そんなに深刻な事じゃないんだ。
チャンスさえあれば付き合ってるわけじゃない人とSEXする事は意外と簡単で、したから付き合わなきゃいけないわけでもないし、そこから何も始まらなくてもいいんだ。自分が後悔さえしなければ。
その考え方は、意外にも私をラクにした。もちろん、SEXはちゃんと好きな人とするのが一番いい。付き合う事も、ちゃんと好きな人と付き合うのが一番いい。でも別に恋愛感情で真剣な『好き』という想いがそこになくても、『付き合ってる』という前提がなくても、自分がその関係で傷つかなければそういうのもアリなんだ。そう思うと、なんだか呼吸がラクになったような気がした。
ちなみにこの件には後日談がある。
最悪なあの別れから4ヶ月ほどたったある日の夜。突然谷中さんから電話がかかってきた。
「久しぶり」 「うん久しぶり。どうしたの?」 努めて軽く返事をする。どうしたの?何か用?用もないのに電話してくるような仲じゃないよね?言外にそんな思いをにじませながら。 「いや、元気かな〜と思って」 「元気だよ。どうしたの急に」 「うん・・・・また会わない?」 「は?なんで?」 「ん、いや・・・今度はちゃんと昼間に遊んであげるからさ」
・・・・・・・・・・・・・わけわかんない。私は別に昼間会えない事だけが不満で別れたわけじゃないんだけど。
なんか変な感じだった。でもよくわからないけど、谷中さんが私に会いたがってる。私が会いたいと言っても鬱陶しそうにしてたあの男が、今になって私に会いたいと言う。その事実はほんの少し私に優越感を抱かせた。
おおかた、今は特定の彼女がいなくてつまらないんだろう。私ならヨリを戻せるとでも思ったのだろうか?それならそれでいい。気付かないフリをしてしらっとした態度で会って、とっくに吹っ切れて元気にやってる私の姿を見せてやろう。
そんな意地の悪い気持ちで、 「じゃぁ都合のいい時電話して?大丈夫だったら会えるし」 と答えた。その数日後、本当に電話がかかってきて、私のバイト(これは例の食料品店とはまた違う店)が終わった後に会う事になった。
夕方だった。私はバイトの後でお腹が空いてたのに、車に乗って 「ご飯でも行く?」 と聞いた私に 「ん〜でも俺ついさっきカップ麺食べたばっかりであんまり腹減ってないんだよね」 と相変わらず身勝手な答えをよこし、谷中さんは車を出した。
元気そうだね、今何してるの?なんて適当な会話を交わしながら車はどんどん郊外へ向かう。1時間ちょっと走って、市内からはずいぶん離れた山の中腹の道沿いで車は停まった。夜景がキレイな場所だった。
正直、隣にいる男の事なんてもうどうでも良かった。久しぶりに会って話しても別に楽しくもない。会ったらやっぱりいい感じ・・・なんて欠片も思わない。むしろ、なんであの頃私はこの人にあんなに執着したんだろう?とすら思える。今から一緒に食事をしても特に楽しい事もないだろう。キレイな夜景を見て満足して、おごってくれるのなら付き合ってあげるからさっさと食べに行こうよ。そんな気分だった。
すっ、と隣から手が伸びてきた。え?と思う間もなくキスされそうになってとっさに止めた。構わずに抱き寄せられ、胸に手を伸ばされた。
「え、ちょっと待って。なんで?」 「なんでって・・・何が?」 「なんでそういう事するの?」 「ダメなの?」 「当たり前じゃん」 「なんで?」
・・・・この人、本気で言ってるのか?
理解しがたい彼の言葉に半ば呆れていたら 「・・・でもいいじゃん」 とか言いながらまた手を伸ばそうとする。さすがに切れた。
「やめてよ。やめないんだったら私ここで降りる」 そう言って本当に車のドアに手をかけた。ガチャリ、と開く音がして、ようやく彼は慌てて手を止めた。
「・・・・なんか、前より堅くなったね」 「は?なんで?だってもう付き合ってないじゃん。私達、もう別れたよね?」 別に付き合ってなくてもSEXなんてできるけど。私はもうそれを知ってるけど。でも少なくともいまさらこの人としたいとは思わない。 「・・・・そういう事なんだ」 “そういう事”って何?あぁそういえば、この人とは付き合いだす前にキスをしたんだっけ。だから?たったそれだけの事で、別れた男とでも簡単に寝ると思われたんだろうか?それともまさかとは思うけど、この人の中ではちょっと長いケンカをしてただけで、別れたつもりはなかったとか言うのか?
憮然としたまま 「帰ろうよ。送って」 とだけ言った。谷中さんは黙って車を出した。
結局そのままどこにも寄らずに最初に待ち合わせた場所に戻った。まだ何か言いたげな谷中さんの顔を見ずにするっと車を降りた。 「それじゃ」 「あ・・・うん、じゃぁ、また」 歯切れの悪い男に、わざとらしいぐらいの余裕の笑顔で 「じゃ」 とだけ言ってさっさと車を離れる。・・・・またね、なんて口が裂けても言うもんか。
基本的に、自分が付き合った人を悪く言うのは苦手だ。1度は好きだった人をけなすという事は、その人を好きだった自分の事も貶めるようでイヤなのだ。
でもこの谷中さんという人に関してだけは、いまだに 「つまんない男に引っかかっちゃたな〜」 と本気で思う。今こうして思い返してみると、自分が本当に彼を好きだったのかどうかも怪しい。ただ単に、久しぶりに『彼氏』が出来たから浮かれて自分を見失ってたんじゃないだろうか。(そう、腹の立つことに、健太郎君以来の『彼氏』がこの男だったのだ)
これからしばらくして、大学を卒業して1年が経とうとしていた早春、とある職場に私は就職する。希望の職種ではなかったけど、大学で学んだ事を活かせると思って決めた仕事だった。でもいろいろあった末、1年を待たずにそこを退職。大学の就職課の紹介で同じような職種の違う職場に転職。
次の出会いはそこにあった。
| 2005年11月17日(木) |
恋愛遍歴(大学時代編) |
昨日付けの『恋愛遍歴(高校時代編)』の続きです。よろしければそちらからどうぞ。
大学に入り、好きな人ができた。サークルの先輩だった金田さんだ。先輩を好きになったと言うよりは、勧誘されたこの人に一目惚れしてそのサークルに入ったようなもの(苦笑) それでも音楽系のそのサークルは楽しくて、金田さんにもかわいがってもらえた。友達と一緒にではあったけど先輩が1人暮らしするアパートに遊びに行ったりもするようになって、うまくいくかも・・・?と思い始めた矢先に、金田さんに彼女が出来た。
金田さんに片想いするのと同時進行で、私はサークルの同級生の健太郎君と仲良くなっていた。学部も音楽の趣味も違ったけど妙にウマが合って、同じサークルの男子の中では一番仲良しだった。そして今だから言える事だけど、健太郎君は最初から私に好意を持ってくれていた。わかっていた。わかっていて健太郎君と仲良くしてたし、健太郎君も私が金田さんと好きだとわかっていて、それでも金田さんの事も先輩としてとても慕っていた。
後になって健太郎君自身から聞いた話だと、 「ルックスとかだけじゃなくて、同性の俺から見ても金田さんはカッコよかったもん。咲良ちゃんが好きなのもわかるなーと思ったし、金田さんにはかなわないと思ったから」 だそうだ。
でもその金田さんに彼女が出来たと聞いて、当然私は落ち込んだ。落ち込む私に健太郎君が言ったのだ。 「俺と付き合わない?」 「・・・・でも私、金田さんの事好きだよ?」 「いいよ。知ってるよ」 「しばらくは多分好きなままだよ?」 「いいよ。いつか気持ちを変えてみせる自信はあるから」
あまりの自信過剰ぶりに唖然とし、でも私も健太郎君の事は決して嫌いじゃなかった。むしろ、金田さんに出会わずに健太郎君に出会ってたら好きになってたかもしれないとも思えた。
かわいがってくれてると思ってた金田さんがあっさり他に彼女を作った。“ただの後輩”以上の好意を持ってもらえてると思ってたのは私の勘違いだったのかな。そう考えて落ち込んでた私にとって、ストレートに好きだと言ってもらえた事そのものが嬉しかった。
結論から言うと、この健太郎君が私にとって本当の意味での『初めての彼氏』となる。
付き合い始めてみると、健太郎君はとても優しかった。本当に大事にしてくれた。音楽の趣味は全然違ったけど、否定するんじゃなくて 「俺もTM聴いてみようかな」 と歩み寄ってくれて、そのCDを返してくれる時に一緒に自分の好きなCDを入れておいて 「よかったら聴いてみて」 とさりげなく勧めてくれた。お互いの違う部分を拒否するんじゃなくて、理解しよう、歩み寄ろうとしてくれた。そうされると私も自然に理解したい、歩み寄りたいと思えるようになり、付き合い出して1ヶ月ほど経った頃、 「ちゃんと健太郎君が好きだよ」 と告げて私からキスをした。それが私達の初めてのキスだった。
初めてのSEXも、初めての親に嘘をついてのお泊まりも、初めてのタバコも(もっともその1本で気持ち悪くなり、私がスモーカーになる事はなかったけど)、初めてのクリスマスデートも、初めての誕生日デートも、全部健太郎君とした。
一度だけ、生理が遅れた事があった。避妊はしてたけど、それでも遅れたら怖い。2週間ほど1人で悶々と悩み、どうしようどうしようと思っていた時に健太郎君に聞かれた。 「今月、生理遅くない?」 あぁ気付かれた。1人で抱え込んでいた不安が一気に溢れだし、何も言えないまま泣き出してしまった。やっとの思いで 「遅れてるの」 とだけ伝えた私に、健太郎君はさらっと言ったのだ。
「そっか〜・・・・俺、咲良ちゃんの親に殴られに行かなきゃね」
その時の私の気持ちを、どういえば表現できるのだろう。
まだ18歳の、大学1年生の2人だ。結婚して産むなんて選択肢は考えられない。じゃぁ堕ろすしかない?友達に相談して病院を紹介してもらおうか、お金はどうしようか、考えたくもない事をそれでも精一杯考えようとしてた私とは逆に、健太郎君は逃げずに親に話そうと受け止めてくれたのだ。
結果的にはその数日後に生理が始まって、遅れてただけだったんかい!と脱力したわけだが、その時の健太郎君の反応が見れただけでも私にとっては価値ある事だった。この人なら私を守ってくれる。本当に大事にしてくれる。心からそう信じられた出来事だった。
今でも思う。
健太郎君ほど一途に私を想ってくれた人は他にいないだろう。あんなにも『愛される自信』に満たされた事は他にない。きっかけこそいい加減だったかもしれないが、健太郎君と付き合った事は幸せだった。
でもそんな健太郎君との恋愛も、2年で終わってしまった。大学2年の春からバイトを始めた私が徐々に忙しくなり、気がつけばデートは全て私の都合に合わせるようになっていた。私が空いてる日。私が空いてる時間。私の都合で彼を振り回し、いつのまにか気持ちに温度差が生じてしまった。
「無理して会ってくれなくていいよ。最近の咲良ちゃんは“会いたいから”じゃなくて“約束してるから”俺に会いに来てるよね?・・・・少し距離を置こうか」 そう言われたのは、大学2年が終わった春休みに入ってすぐの頃だった。私は泣いて嫌がった。泣いて泣いて、結局 「春休みが終わるまで時間を置こう」 という事になった。健太郎君が言った事は事実だった。そして彼自身も、そんな状況に疲れ、それでも別れたくないと思うほどには私を想っていないかもしれない・・・とう感じ始めていたのだ。
それから2週間後、偶然私の友達が健太郎君に会った。その時に彼女が 「ちょうどよかった。これ咲良に渡してくれない?」 と言って何枚かの写真が入った封筒を託そうとしたら、健太郎君は 「ごめん、別れたから次いつ会うかわかんないから」 と断ったのだそうだ。 「・・・って言ってたけど、本当なの!?」 と友達が驚いて電話をくれて、私は絶望した。彼の中ではもう終わってしまったのか。しばらく時間を置いて、それから話し合えば元に戻れると思ってたのは甘かったのか。いつのまにか、私を想ってくれる彼の気持ちに甘えて、私は彼を大事にしてなかったのかもしれない・・・・
絶望しながらも私は彼に電話をかけた。本当に終わってしまうのなら、きちんと話してからにしたい。そう言って会う約束をした。そして会って・・・・その時は仲直りをした。会ったらやっぱり好きだと思い、 「もうちょっと頑張ってみよう」 と泣きながら話し合い、別れない事にした。
でも結局ダメだった。
それから2ヶ月ぐらい経った頃だったろうか。最初は違う話をしてたのだ。でも何かのはずみで私が 「健太郎君のそういうとこだけは好きになれなかったな」 と言った。 「・・・・・それはもう終りって事?」 と彼が冷静に言った。無意識に、私は過去形で話していたのだ。
そんなつもりはなかったのに、いつのまにか私の中で健太郎君への気持ちが終わってしまってたのだろうか。自分の言葉に驚き、諦めたような健太郎君の言葉を否定する事もできず、そのまま私達は本当に終わってしまった。大学3年になってすぐの春だった。
しばらくはぼーっとしていた。会わずにいるとそれは別に不自然な事ではないようにも思えて、やっぱり別れた事は正解だったのかな・・・と思う日もあれば、なんであんな話になっちゃったんだろうと悔やむ日もあった。でもそれも時間が経つうちに薄れていき、私は“1人”の日々に慣れていった。健太郎君はサークルを辞め、いつのまにかサークル内でも私達が別れた事は知れ渡っていた。
一度、校内で健太郎君をみかけた。少し遠かったけど、目が合ったと思った。・・・・・次の瞬間、強い力で目をそらされて、それは思った以上に私を落ち込ませた。私はそんなに彼を傷つけた?
どうする事も出来ないまま日々は過ぎ、半年ほど経った大学3年の冬、私は偶然ライブハウスで彼に会った。一瞬うろたえたが、自然に挨拶をする事が出来たと思う。健太郎君も、自然に答えてくれた。
その後、街で健太郎君をみかけた。彼女と一緒だった。私には気付いてなかったようで、楽しそうだった。あぁ良かったと思った。
でもその時ふと思い出したのだ。付き合ってた頃に、健太郎君に手編みのマフラーをあげた事があった。あれはまだ彼の手元にあるんじゃないか?だとしたら、それは彼女にとって決して気持ちのいいものではないだろう。そう思った私は、彼のアパートを訪ねていったのだ。マフラーを返してもらいに。
急にアパートを訪れた私を見て、当然健太郎君は驚いた。訪ねてきた理由を話すと、 「律儀だね」 と苦笑しながらマフラーを返してくれた。その時に、別れて以来初めてちゃんと話をする事が出来た。そしてそれ以来、私達はまた時々連絡をとるようになった。
もちろん、彼女がいるんだからそこからどうこうなるわけではない。ただ、時々電話したり会って食事をしたり。でも『別れた人と友達になる』という私にとって初めての経験は、少し私を浮かれさせた。
卒業を間近に控えた大学4年の冬、私はどうしても困った事があり、健太郎君を呼び出した。
その困った事とは、返してもらったマフラーの処分。返してもらったはいいが、私はそれを捨てきれずにいたのだ。悩んだ挙句、その頃にはすでに彼女とは別れていた健太郎君にもう1度それを渡そうと考えた。
でも、今になって思えば、それは口実だったような気がする。その頃の私は弱っていた。バイト先の学習塾で、新しく代わった上司と合わなかったのだ。バイト生の中では中では最古参だった私と、中途採用されてすぐ配属された同性の上司。向こうから見たら、自分より年下のバイトのくせに他のバイト生に妙に慕われ、生徒の父兄にも進路相談をされるぐらい信用されていた私が鬱陶しかったのかもしれない。バイトのシフトを減らされ、新人バイトの歓迎会に私だけ誘われなかった事もあった。なんで私がこんな目にあわなきゃいけないのよ・・・と理不尽な状況にイライラしてる中、私が受け持っていた生徒が相次いで2人塾を辞めたのだ。
冷静に考えたらその2人が辞めた事は私の責任ではないのだけど、ただでさえ落ち込んでいた私には充分な駄目押しだった。私はそんなにダメなの?そんなに私は役に立ってない?私は必要ない?そんな思いに捕らわれ、自分の就職が決まってない事もあいまってとても不安定になっていた時期だった。
会って、食事をした。
そして私達は結局ホテルに行った。そうせずにはいられなかった。理由は話さないまま泣く私を健太郎君は黙って泣かせてくれて、私達は約2年ぶりに抱き合った。
別れ際、私は例のマフラーを彼に渡した。自分では捨てられなかったから、良かったらもらってほしい。使わないならあなたに捨てて欲しい・・・・そう言った私の手からマフラーを受け取り 「じゃぁ次に彼女ができるまで使わせてもらうね」 と言ってくれた。
家に帰ってまた泣いた。いい人と恋をしたな、という思いと、そういう人となぜダメになってしまったのだろう、という思いで。結局、私は大学にいる間は健太郎君以外の『彼氏』はできなかった。彼が、私の大学時代の恋のすべてだった。
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