金色の夢を、ずっと見てる

2005年11月17日(木) 恋愛遍歴(大学時代編)

昨日付けの『恋愛遍歴(高校時代編)』の続きです。よろしければそちらからどうぞ。



大学に入り、好きな人ができた。サークルの先輩だった金田さんだ。先輩を好きになったと言うよりは、勧誘されたこの人に一目惚れしてそのサークルに入ったようなもの(苦笑) それでも音楽系のそのサークルは楽しくて、金田さんにもかわいがってもらえた。友達と一緒にではあったけど先輩が1人暮らしするアパートに遊びに行ったりもするようになって、うまくいくかも・・・?と思い始めた矢先に、金田さんに彼女が出来た。

金田さんに片想いするのと同時進行で、私はサークルの同級生の健太郎君と仲良くなっていた。学部も音楽の趣味も違ったけど妙にウマが合って、同じサークルの男子の中では一番仲良しだった。そして今だから言える事だけど、健太郎君は最初から私に好意を持ってくれていた。わかっていた。わかっていて健太郎君と仲良くしてたし、健太郎君も私が金田さんと好きだとわかっていて、それでも金田さんの事も先輩としてとても慕っていた。


後になって健太郎君自身から聞いた話だと、
「ルックスとかだけじゃなくて、同性の俺から見ても金田さんはカッコよかったもん。咲良ちゃんが好きなのもわかるなーと思ったし、金田さんにはかなわないと思ったから」
だそうだ。

でもその金田さんに彼女が出来たと聞いて、当然私は落ち込んだ。落ち込む私に健太郎君が言ったのだ。
「俺と付き合わない?」
「・・・・でも私、金田さんの事好きだよ?」
「いいよ。知ってるよ」
「しばらくは多分好きなままだよ?」
「いいよ。いつか気持ちを変えてみせる自信はあるから」

あまりの自信過剰ぶりに唖然とし、でも私も健太郎君の事は決して嫌いじゃなかった。むしろ、金田さんに出会わずに健太郎君に出会ってたら好きになってたかもしれないとも思えた。

かわいがってくれてると思ってた金田さんがあっさり他に彼女を作った。“ただの後輩”以上の好意を持ってもらえてると思ってたのは私の勘違いだったのかな。そう考えて落ち込んでた私にとって、ストレートに好きだと言ってもらえた事そのものが嬉しかった。



結論から言うと、この健太郎君が私にとって本当の意味での『初めての彼氏』となる。



付き合い始めてみると、健太郎君はとても優しかった。本当に大事にしてくれた。音楽の趣味は全然違ったけど、否定するんじゃなくて
「俺もTM聴いてみようかな」
と歩み寄ってくれて、そのCDを返してくれる時に一緒に自分の好きなCDを入れておいて
「よかったら聴いてみて」
とさりげなく勧めてくれた。お互いの違う部分を拒否するんじゃなくて、理解しよう、歩み寄ろうとしてくれた。そうされると私も自然に理解したい、歩み寄りたいと思えるようになり、付き合い出して1ヶ月ほど経った頃、
「ちゃんと健太郎君が好きだよ」
と告げて私からキスをした。それが私達の初めてのキスだった。

初めてのSEXも、初めての親に嘘をついてのお泊まりも、初めてのタバコも(もっともその1本で気持ち悪くなり、私がスモーカーになる事はなかったけど)、初めてのクリスマスデートも、初めての誕生日デートも、全部健太郎君とした。


一度だけ、生理が遅れた事があった。避妊はしてたけど、それでも遅れたら怖い。2週間ほど1人で悶々と悩み、どうしようどうしようと思っていた時に健太郎君に聞かれた。
「今月、生理遅くない?」
あぁ気付かれた。1人で抱え込んでいた不安が一気に溢れだし、何も言えないまま泣き出してしまった。やっとの思いで
「遅れてるの」
とだけ伝えた私に、健太郎君はさらっと言ったのだ。

「そっか〜・・・・俺、咲良ちゃんの親に殴られに行かなきゃね」

その時の私の気持ちを、どういえば表現できるのだろう。

まだ18歳の、大学1年生の2人だ。結婚して産むなんて選択肢は考えられない。じゃぁ堕ろすしかない?友達に相談して病院を紹介してもらおうか、お金はどうしようか、考えたくもない事をそれでも精一杯考えようとしてた私とは逆に、健太郎君は逃げずに親に話そうと受け止めてくれたのだ。

結果的にはその数日後に生理が始まって、遅れてただけだったんかい!と脱力したわけだが、その時の健太郎君の反応が見れただけでも私にとっては価値ある事だった。この人なら私を守ってくれる。本当に大事にしてくれる。心からそう信じられた出来事だった。


今でも思う。

健太郎君ほど一途に私を想ってくれた人は他にいないだろう。あんなにも『愛される自信』に満たされた事は他にない。きっかけこそいい加減だったかもしれないが、健太郎君と付き合った事は幸せだった。


でもそんな健太郎君との恋愛も、2年で終わってしまった。大学2年の春からバイトを始めた私が徐々に忙しくなり、気がつけばデートは全て私の都合に合わせるようになっていた。私が空いてる日。私が空いてる時間。私の都合で彼を振り回し、いつのまにか気持ちに温度差が生じてしまった。

「無理して会ってくれなくていいよ。最近の咲良ちゃんは“会いたいから”じゃなくて“約束してるから”俺に会いに来てるよね?・・・・少し距離を置こうか」
そう言われたのは、大学2年が終わった春休みに入ってすぐの頃だった。私は泣いて嫌がった。泣いて泣いて、結局
「春休みが終わるまで時間を置こう」
という事になった。健太郎君が言った事は事実だった。そして彼自身も、そんな状況に疲れ、それでも別れたくないと思うほどには私を想っていないかもしれない・・・とう感じ始めていたのだ。

それから2週間後、偶然私の友達が健太郎君に会った。その時に彼女が
「ちょうどよかった。これ咲良に渡してくれない?」
と言って何枚かの写真が入った封筒を託そうとしたら、健太郎君は
「ごめん、別れたから次いつ会うかわかんないから」
と断ったのだそうだ。
「・・・って言ってたけど、本当なの!?」
と友達が驚いて電話をくれて、私は絶望した。彼の中ではもう終わってしまったのか。しばらく時間を置いて、それから話し合えば元に戻れると思ってたのは甘かったのか。いつのまにか、私を想ってくれる彼の気持ちに甘えて、私は彼を大事にしてなかったのかもしれない・・・・

絶望しながらも私は彼に電話をかけた。本当に終わってしまうのなら、きちんと話してからにしたい。そう言って会う約束をした。そして会って・・・・その時は仲直りをした。会ったらやっぱり好きだと思い、
「もうちょっと頑張ってみよう」
と泣きながら話し合い、別れない事にした。



でも結局ダメだった。



それから2ヶ月ぐらい経った頃だったろうか。最初は違う話をしてたのだ。でも何かのはずみで私が
「健太郎君のそういうとこだけは好きになれなかったな」
と言った。
「・・・・・それはもう終りって事?」
と彼が冷静に言った。無意識に、私は過去形で話していたのだ。

そんなつもりはなかったのに、いつのまにか私の中で健太郎君への気持ちが終わってしまってたのだろうか。自分の言葉に驚き、諦めたような健太郎君の言葉を否定する事もできず、そのまま私達は本当に終わってしまった。大学3年になってすぐの春だった。


しばらくはぼーっとしていた。会わずにいるとそれは別に不自然な事ではないようにも思えて、やっぱり別れた事は正解だったのかな・・・と思う日もあれば、なんであんな話になっちゃったんだろうと悔やむ日もあった。でもそれも時間が経つうちに薄れていき、私は“1人”の日々に慣れていった。健太郎君はサークルを辞め、いつのまにかサークル内でも私達が別れた事は知れ渡っていた。

一度、校内で健太郎君をみかけた。少し遠かったけど、目が合ったと思った。・・・・・次の瞬間、強い力で目をそらされて、それは思った以上に私を落ち込ませた。私はそんなに彼を傷つけた?

どうする事も出来ないまま日々は過ぎ、半年ほど経った大学3年の冬、私は偶然ライブハウスで彼に会った。一瞬うろたえたが、自然に挨拶をする事が出来たと思う。健太郎君も、自然に答えてくれた。

その後、街で健太郎君をみかけた。彼女と一緒だった。私には気付いてなかったようで、楽しそうだった。あぁ良かったと思った。

でもその時ふと思い出したのだ。付き合ってた頃に、健太郎君に手編みのマフラーをあげた事があった。あれはまだ彼の手元にあるんじゃないか?だとしたら、それは彼女にとって決して気持ちのいいものではないだろう。そう思った私は、彼のアパートを訪ねていったのだ。マフラーを返してもらいに。


急にアパートを訪れた私を見て、当然健太郎君は驚いた。訪ねてきた理由を話すと、
「律儀だね」
と苦笑しながらマフラーを返してくれた。その時に、別れて以来初めてちゃんと話をする事が出来た。そしてそれ以来、私達はまた時々連絡をとるようになった。

もちろん、彼女がいるんだからそこからどうこうなるわけではない。ただ、時々電話したり会って食事をしたり。でも『別れた人と友達になる』という私にとって初めての経験は、少し私を浮かれさせた。

卒業を間近に控えた大学4年の冬、私はどうしても困った事があり、健太郎君を呼び出した。

その困った事とは、返してもらったマフラーの処分。返してもらったはいいが、私はそれを捨てきれずにいたのだ。悩んだ挙句、その頃にはすでに彼女とは別れていた健太郎君にもう1度それを渡そうと考えた。


でも、今になって思えば、それは口実だったような気がする。その頃の私は弱っていた。バイト先の学習塾で、新しく代わった上司と合わなかったのだ。バイト生の中では中では最古参だった私と、中途採用されてすぐ配属された同性の上司。向こうから見たら、自分より年下のバイトのくせに他のバイト生に妙に慕われ、生徒の父兄にも進路相談をされるぐらい信用されていた私が鬱陶しかったのかもしれない。バイトのシフトを減らされ、新人バイトの歓迎会に私だけ誘われなかった事もあった。なんで私がこんな目にあわなきゃいけないのよ・・・と理不尽な状況にイライラしてる中、私が受け持っていた生徒が相次いで2人塾を辞めたのだ。

冷静に考えたらその2人が辞めた事は私の責任ではないのだけど、ただでさえ落ち込んでいた私には充分な駄目押しだった。私はそんなにダメなの?そんなに私は役に立ってない?私は必要ない?そんな思いに捕らわれ、自分の就職が決まってない事もあいまってとても不安定になっていた時期だった。


会って、食事をした。


そして私達は結局ホテルに行った。そうせずにはいられなかった。理由は話さないまま泣く私を健太郎君は黙って泣かせてくれて、私達は約2年ぶりに抱き合った。

別れ際、私は例のマフラーを彼に渡した。自分では捨てられなかったから、良かったらもらってほしい。使わないならあなたに捨てて欲しい・・・・そう言った私の手からマフラーを受け取り
「じゃぁ次に彼女ができるまで使わせてもらうね」
と言ってくれた。

家に帰ってまた泣いた。いい人と恋をしたな、という思いと、そういう人となぜダメになってしまったのだろう、という思いで。結局、私は大学にいる間は健太郎君以外の『彼氏』はできなかった。彼が、私の大学時代の恋のすべてだった。


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咲良 [MAIL]

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