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2012年11月24日(土)
ザ・ファクトリー2『話してくれ、雨のように…』『財産没収』『火刑』『ロング・グッドバイ』

ザ・ファクトリー2 さいたまネクスト・シアター『話してくれ、雨のように…』『財産没収』『火刑』『ロング・グッドバイ』@彩の国 さいたま芸術劇場

“ザ・ファクトリー”シリーズその2、今回はネクスト・シアターによるテネシー・ウィリアムズ一幕劇集連続上演。ちなみに1はこちら→・ザ・ファクトリー1 さいたまゴールド・シアター『白鳥の歌』『楽屋』

以下の順で上演されました。配役・演出はこちら。上演時間は一作品30分前後で計約二時間半、二本目と三本目の間に10分の休憩時間がありました。作品毎に上演場所が変わり、観客はその都度移動します。スペースの画像があるものには、さい芸の公式にリンクを張ってみました、観てない方にもちょっとはイメージがわくかなー。twitterに上演前の画像あげてるひともいるので、興味ある方は探してみてください。
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『話してくれ、雨のように…』@小ホール奥工房
『財産没収』@ガレリア
『火刑』@小ホールステージ上手袖階段
『ロング・グッドバイ』@小ホール搬入口
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(追記:『埼玉アーツシアター通信 No.43』に舞台写真が載りました→PDF版P9

まずは小ホールに集合。スタッフの説明を聞き、指示を待ちます。作品が上演されない劇場で、ただ待つためだけに席に着く機会はなかなかない。もうこの時点で楽しくなっている。開演時間になると、舞台裏に通される。通路途中には照明器具や脚立と言った舞台素材が雑然と置かれており、ホワイトボードには「道具を勝手に持ち出さないでください」「本日蜷川さんより弁当の差し入れがあります」等の伝言が書かれている。あーもー楽しー。やがて倉庫のようなスペースに通される。キャパは50くらいかな、ベニサン・ピットのような椅子の配置と傾斜。暗転すると本当の真っ暗。

いちばん最初と最後の作品が上演された小ホール舞台裏は、小さな劇場らしいスペースに拵えてあり、部屋の調度品としての装置もしっかり置かれていた。ガレリアはその長い通路を活かし、フロアに線路を敷き、その両側に添って客席が一列ずつ延びている。照明はガラス屋根から入る陽光のみ。ソワレや雨の日の回に観たらまた印象違っただろうな。小ホールステージ袖の階段は三階分程あるのだが、演者はそこを何度も上がったり降りたり、踊り場に座り込んだりと上下の移動で変化を付ける。これは舞台設定にぴったりで、置かれているセットは母親の座る揺り椅子のみなのに、彼らの住居―アパートが目に浮かぶようだった。

テネシー・ウィリアムズのテキストは翻訳ものであり、時代設定も今や現代から少し遡ったものだ。演じる役者とは遠くかけ離れた年齢の役もある。『ロング・グッドバイ』の登場人物は9人、それ以外は男女のふたり芝居。恐らく恋人同士であったり、ボーイ・ミーツ・ガールであったり、母子であったり。使い慣れない言葉と考証の必要がある登場人物の背景。これらと若い役者たちは格闘したのだろう、相当な熱量を感じた。1m足らずの至近距離で観客の視線に晒され、皆が死にものぐるいで、まっすぐな姿を見せる。演出家たちは、彼らに真っ向から対峙する。濃密な空間がそこにはあった。

ザ・ファクトリー1のときにも感じたが、蜷川カンパニーには、長く活動してきたベニサン・スタジオの機構がベースにあるように思う。ファクトリーと言う名称も。ウォーホルに代表されるアトリエとしてのファクトリーの意もあろうが、ベニサン・ピットは紅三の工場跡を利用して作られた劇場だった。ベニサン・ピットはスタジオとともに2009年1月に閉鎖、紅三は今年6月に事業を停止した。劇団がアトリエを持てることは非常に貴重で恵まれている。そしてさい芸は公共施設だ。リーフレットに書かれた蜷川さんの言葉「公共の劇場で演劇公演をする責任感」を思い返す。劇団員のクレジットには新しい名前が並び、その分幾人かの名前が消えていた。しかしこれ迄の公演で「おっ」と思いキャスト表を確かめた名前は残っているなあ。深谷美歩さんの名前がなくなっていたが、彼女の場合はベクトルが逆かも知れない。新国立劇場の『るつぼ』に出演後(彼女は新国立劇場の演劇研修所出身だ)、蜷川版『祈りと怪物』への出演が決まっている(追記:降板されたとのこと。どうしたんだろう、残念)。

個人的には、ゴールド・シアターとネクスト・シアターの公演は、蜷川さんが手掛ける仕事でいちばんエキサイティングだと思っている。劇場に行くのが毎回楽しみで仕方がない。ベニサン・ピットでの公演もそうだった、毎回刺激的だった。この日は大石継太さんがいらしていた。大石さんの実力を思い知らされたのも、ベニサンでの『待つ』シリーズだったなと思い返す。どんな気持ちで観ていたのかな。

戯曲でしか知らなかったテネシー・ウィリアムズの一幕劇を一気に四本観ることが出来て嬉しかったしすごく面白かったです。「話してくれ、雨のように…」と言う台詞を、実際に役者の発声で聴けたときの嬉しさったらなかったですよ。実生活で絶対使わないであろう(使わ…ないよね……)こういう台詞こそ役者の力量が問われる訳で、ここの堀くんのさらりとした、それでいて焦燥感と倦怠感溢れる言いまわしは素晴らしかったよー。そして一気に観るとますますなんと言うか、「テネシーよう…ブランチよう……」と思うね……。性的抑圧、蹂躙される繊細な魂、家族との別れ、死者との戯れ。登場人物のそこかしこにテネシーの、ローラの、そしてブランチの影が潜んでいる。『財産没収』で内気なトムを演じた内田くん、『火刑』で癇の強いエルワを演じた小久保くん、そして『ロング・グッドバイ』の主人公、小説家のジョーを演じた川口くんは、テネシーの孤独な魂を見事に表現していました。松田くんの受けの芝居も巧い。女優陣もよかったなあ。『火刑』でデュブネ夫人を演じた周本さんはすごかった。あれは辛抱のいる役だよね……。女性の大きさを魅せた土井さん、狂気と陽気と悲しみに溢れた白川さん、追憶の中で生きる長内さん、茂手木さんも素晴らしかったです。

「Ev'ry Time We Say Goodbye」を聴きたくなった帰り道でした。

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・毎度カフェペペロネ。本日は三食パスタのきのこクリームをいただきました。親の敵かってくらいきのこが入っていた。おいしかったー
・そしてビストロやまのマルシェで鰊の燻製を買って帰る。遠足コ〜ス



2012年11月22日(木)
LÄ-PPISCH『25th Anniversary Tour 〜六人の侍〜』

LÄ-PPISCH『25th Anniversary Tour 〜六人の侍〜』@SHIBUA-AX

あれから四日経つけどまだ言葉が見付からない。ずっと見付からないかも知れないな。あるのは感謝、感謝ばかり。

・セットリストとライヴショット

・マグミ(twitter)
・マグミ(blog)

・恭一(diary: 2012.11.24)

・矢野さん(blog)
・矢野さん(twitter)

・奥野さん(twitter)

「生涯1バンドでいいとおもっていた」、とマグミがtwitterに書いていた。来春リリースのDVDにはどこ迄収録されるのか、あの曲は入るのか、あの場面は入るのか。あのマグミの言葉は入るのか、あの恭一の、tatsuの表情は撮れているのか。

最後に皆が手を繋いでバンザーイと挨拶したあのポーズ、二十周年のときと同じだった。今も公式サイトのトップにあるあの画像。現ちゃんもいた。雪好もきっといる。テーラーもね。

大切なバンド。本当に有難う、有難う。



2012年11月20日(火)
『The Library of Life まとめ*図書館的人生紂

イキウメ『The Library of Life まとめ*図書館的人生紂戞東京芸術劇場 シアターイースト

いやーっ面白かった。暗転と同時に唸りましたわ。終演後心身がじわじわと満たされていく感覚、高揚して劇場を出る感覚、コレだ!と言う舞台を観た感覚。たまりません。

出来の良し悪しに関係なく、頭の隅に「今何分経ったかな」「あとどのくらいで終わりに持って行くかな」と言う意識が必ずあるのですが、今回それをぐっちゃぐちゃに土足で踏み荒らされた感じです。快感!(笑)構成の妙ですね。体感時間を奪われる心地よさがありました。

過去上演された『図書館的人生』シリーズからセレクトしたオムニバス作品とのことですが、初演時の構成はどうなっていたのだろう?今回上演されたのは6作品。6エピソードと言った方がいいかな。アカシックレコードが想起される“図書館”に訪れたひとたちが、そこに収められている本を読む。一冊の本にひとつの魂の遍歴が記されている。本を開く。その魂の履歴が現れる。勿論、その利用者たちの魂の履歴もこの図書館のどこかにある。各々のエピソードが順番に上演されるのではなく、とある状況、とある小道具、とある関係性の共通点によって瞬時に時間軸がジャンプする。この構成は見事だったなー。その各々の時間に生きる、違う人物の役にスイスイ対応していく演者たちの身体の在りようも素晴らしかった。衣裳は変えない、ヘアメイクも変えない。なのに違うものに姿を変える。しかも切り替えのカンマがなく、滑らかに行き来が行われる。切り替えが始まった序盤は、状況から置いていかれた登場人物たちと同じように目を白黒させました(笑)。きつねにつままれる楽しさ。

複数のテキストをさまざまな位置に組み込む、こういった脚本・演出と演者のセッション的な劇作法は、劇団が外部の演出家との公演を経たのち前川さんが改めて演出を手掛けたことも大きいのかな。統制に気を配り、細部迄コントロールを行き渡らせた上で数々のノイズを仕込んで行く。お互いの手の内を知っているからこその、実に丁寧な劇団の仕事を観た印象がありました。

劇団らしいと言えば、これはイキウメのカラーでもありますが、ともすればスピリチュアルな世界に傾きがちな世界をあくまでロジカルに捉えようとする姿勢、そしてそのロジカルなポリシーに対し、自らその鼻をへし折るパンクな姿勢が痛快で苦くもあります。『太陽』『ミッション』で、その“鼻をへし折られる”役割を担っていた安井さんが今回もこてんぱんにヤラれるエピソードがありました。自分の“美学”をぺしゃんこに否定される。しかし彼の(役の)魂は、他のエピソード―次の人生かも知れない、前の人生かも知れない、違う時間の人生で、自らその状況を打開するのです。そしてその打開は、他者の拘束に繋がる。この連続性のどこにピンを刺すか、毎回興味を持って観ています。

いんやそれにしても『賽の河原で踊りまくる「亡霊」』の濃密さよ。笑いも含めて。あのーネタバレしますが、鬼が引き出しから金棒出してきたときの衝撃!なんてえの、出てきた途端「あああ、了解です!」てなるマイティさ。自称鬼が金棒を手にすることで、有無を言わせず公称鬼になるんですよ…あのほら、ソーさんにおけるムニョムニョみたいな(アベンジャーズ脳)。脳内で電気グルーヴの「Cafe de 鬼」が鳴ったのは内緒です。この画とともにな。



…いや、集中してない訳じゃなくて、人間ってのは同時にそういうことって考えられるものでしょう!そうでしょう!

髪型的には盛さんが鬼っぽかったなそう言えば…そして髪型と言えば加茂さんがパーマをあてててマー大人っぽくなってたワ!(オバチャン口調)あと森下さん見てると何故かヨタロウさんを思い出します。あーヨタロウさんと言えば、あのーこれはホント個人的な印象ですけどイキウメって、ある時期のザズゥシアターが大好きだったひとにはズッパまる空気があると思います。似てるって訳ではないのですが。とどんどん話が逸れていく。

次回作『The Library of Life まとめ*図書館的人生 下』は池田成志さんの客演が発表になっていますが、いやーこれ、まさに鬼が来た!て感じですよ…積んだ石を片っ端から釘バットではっ倒すよきっと!もはや爆弾(笑)どんなノイズが生まれるか、今から楽しみであります。

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ちなみに『ゴッド・セーブ・ザ・クイーン』は昨年震災の影響で中止になった『PLAY PARK 2011』で上演される予定だった作品でもありました。YouTubeに映像がアップされています。








2012年11月10日(土)
『霊感少女ヒドミ』

ハイバイ『霊感少女ヒドミ』@アトリエ春風舎

この日はなんと三ステージでなんなんだジャニーズかと思いましたが(笑)、もともとは2005年初演の『ポンポン お前の自意識に小刻みに振りたくなるんだ ポンポン』のなかの一編だったそうで、上演時間は一時間。映像のみのシーンも多いので、役者さんが出ているのは実質45分くらいかな。13時開演の回を観ました。

白い部屋をスクリーンに見立て、そこに映像をシンクロさせて壁紙や家具を浮かび上がらせる。岩井さん曰く、初演は「ミシェル・ゴンドリーや劇団地点、当時テレビでやってたセリエAダイジェストなどから多大な影響を受け」、自ら映像編集+オペを手掛けたとのこと。今回映像作家ムーチョ村松さんとの出会いにより、その部分をよりソリッドにしたいと言う狙いもあったようです。トリッキーな仕掛けがかわいらしく効果を上げていました。

おお!と思ったのは、夜のシーンの部屋はちゃんと夜の部屋の映像になってるんですよ。て書くと意味不明か…えーと、もともとセットがあって、それに照明をあてて昼だったり夜だったりのシーンにする場合、セット自体の色は変わりませんよね。あてる光の色で変わってるように見せるんですよね。今回の場合、映像の方に色が付いている訳ですよ。昼の壁紙はサイケなピンクでも、夜の壁紙はほんのり月明かりが滲んだ蒼色になってるんですよ。あたりまえっちゃああたりまえなんですが、こういうちょっとしたところがちゃんとしてる、ってところが大好きでした。

映像の引き出しから出しているように見せかけて、壁の隙間からパンティを引っ張り出す等の笑えるシーンもよかった。いやあこのシーン、平原テツさんの名(迷)演もあり、笑った反面震撼しましたけども。パンツって奥深いよね……。『ある女』でもそうだったけど、平原さんの女の手玉のとり方すごい怖い…そのままふら〜っと言いなりになっちゃう女沢山いそう……いや役がですよ、役が。

そして勿論、わあ映像面白ーい、シンクロしててすごーいだけでは終わらない。テキストがすごくよかった。言葉はいつも思いに足りないと言うけれど、実際思いを全て言葉で伝えられたら、これ程苦しいことはない。そしてその、伝えきれない思いを言葉にし、口にする役者たちの声色、表情ひとつひとつがとても美しい。全てを伝えようと必死に、不器用に、全身を駆使して表現する。それは大きな声で叫べば叫ぶ程相手には伝わらず、目を合わせずにぽつりと漏らしたものがすっと胸に入ってきたりする。

この辺りのシーン、上田遥さんも町田水城さんも全然顔が違って見えたもんね…三郎あんなにストーカーちっくで怖かったのに、ヒドミなんてアイラインをクマっぽく下だけ強めにひいててキモかわいめなメイクだったのに、恋人と穏やかに話している(演技で、実際には声を出していない)ときのふたりの表情はとても綺麗だった。

そしてそのぽつりと漏らした言葉が、音声ではなく映像で、字幕として姿を現す演出にもグッときた。しかもここで流れているのはキリンジの「エイリアンズ」。まるまる一曲使った。このシーンのせつないことと言ったら……。前半どうしてJ-POPなの、洋楽じゃないの、Blurとか、って笑える台詞を置いていて、この前振りは照れ隠しだったのかと気付かされると同時に、所謂肌に合う、を見せつけられたと言うか。公団で、僻地で、バイパスで。この国に住んでいる、この国で生きているひとたちの恋愛模様。

生きている人間と死んでいる霊の三角関係(、にすらなっていないか。それもせつない)を軸に、霊が死ぬ前に恋していた人物と、生きつつも自分のドッペルゲンガーの存在を感じている人物の思いのすれ違いをも描く。その間に虹郎と言う登場人物(霊)を存在させるところもよかった(演じる奥田洋平さんがまたよくて!)。思いが伝わらないもどかしさ、思いがなんとか伝わったときの小さな幸福感、しかしそれらは所詮自分の思い込みに過ぎないのではないか?と気付いてしまっている寂しさ。そしてそれら全てに関わりを持てないと感じている痛い程の自覚。愛情も恋心も、澄んだ混沌のなかに溶けていく。胸を締め付けられることこの上なし。

字幕と言えば月を映像で見せたり、「月」と言う漢字で見せたりと言う演出もよかったな。それがだんだん心地よくすら感じてくる、記号の交差。これも混沌。岩井さんの作品は混沌としていて、寂しさが募る。その寂しさは、決してイヤなものじゃない。ふとした拍子に、安らぎを得られるものでもある。

ちなみに三重公演をご覧になったぴーとさんが「ちゃんと小ホールの映像で作ってる」と書かれていて、そういう細かい部分もちゃんと変えてあるところにも好感。こちらは春風舍+その周辺の映像で作られておりました。

キリンジ以外の音楽もとてもよかったです。岩井さんと音響の方、どちらが選曲されているのかな。『ある女』でも使われていたオープニングの曲、骨折したかのようなアクセントのナレーションとともにとても印象的でした。



2012年11月01日(木)
『アルゴ』

『アルゴ』@新宿ピカデリー スクリーン3

ベン・アフレック監督の前作『ザ・タウン』は昨年映画館で観るのを逃して後悔した第一位でした。そもそもはジェレミー・レナー目当てでDVDを観たのですが、よく練られた構成と演出の手際のよさに瞠目。慌ててBlu-rayの通常版+エクステンデッド版を購入、監督コメンタリを聴き、彼の映画製作への献身っぷりにすっかり惚れ込んでしまいました。その後web上で見付けたスクリプト複数稿と原作(『強盗こそ、われらが宿命』)を読み、刈り込みと脚色(アフレック、ピーター・クレイグ、アーロン・ストッカードの共同脚本)の巧さに再び唸らされました。

思えばこのひと『グッド・ウィル・ハンティング』の脚本でオスカーとっていましたね。その後のボンクラっぷり(ひどい)が強く印象に残っていたので忘れがちだった…ごめんよー。ダグの最後の台詞(ここ参照→・The Town Quotes: Solid and Gripping)をベンアフ本人が言っているってとこも感慨深いものがあったよ!

勿論ジェレミーも素晴らしかった!このひとこういう危うい役やらせるとむちゃくちゃ光りますね。最後の台詞と行動が裏腹で、その行動が破滅以外にないと判ってるとことかさ……!(涙)ブサイクイケメンDQN顔(…)が輝いてました。ジェレミー出演作品まだ網羅出来てないけど、今のところ『ザ・タウン』のジェムは『Neo Ned』のネッドと1〜2位を争うくらい好きな役です(…って、どっちの役も相当アレですけどね……)。

はあはあはあ、『ザ・タウン』の感想迄書き始めてしまいそうだ…前置きが長い(いつもじゃ)。と言う訳で観る前からすんごく盛り上がって+期待値がすんごく高くなっていたため、楽しみにしていた分つまんなかったらどうしよう、がっかりさせられちゃったらどうしようなんて身勝手もいいとこな思いをパンパンに膨らませて映画館に出掛けて行きました。が……どうだコノヤロー!どうだバカヤロー!(誰に言ってる)むたむた面白かったがなーーー!!!以下ネタバレあります、アルゴファッキュアセルフ!(合い言葉)

70年代のワーナーのロゴ、最近ではあまり目にすることのない映像のノイズ(フィルムに付着したゴミが写り込むエフェクトを加えていると思われる)に導かれ、あっと言う間に観客は1979年の世界へ。絵コンテから始まるオープニングにもにっこり。さあ、映画が始まるよ。いろんなところからやってきた、知らない同士が同じ場所でハラハラドキドキ。スクリーンに注がれるいくつもの瞳。観客の心をひとつにする映画が始まる。

今回アフレックはタッチしていませんが、脚本(クリス・テリオ)がすごくしっかりしてる。実際に起こった出来事を映画化するために施したであろう脚色も絶妙で、その部分が例え創作であったとしても観客を鼻白ませることがない。「いくらなんでもここはないわー」と言いつつ笑顔にさせられてしまうような愛嬌があります。アメリカとイラン両国の問題も簡潔に紹介しつつ、ニュートラルに徹していたところもいい。

そして説明台詞に頼らず、状況や登場人物の心境を描き出す細やかなカットがとても効果的。コミカルとシリアスを行き来する演出も緩急自在。すごい深刻な話し合いなのに自転車脱出作戦にずっと固執してるひととかさ…(笑)でもトニーの案も自転車と同じくらい何言ってんのって作戦だった訳で。終盤大慌てで作戦中止を撤回する上司も、トニーたちをなんとしても助けねばと言う気持ちは勿論あっただろうけど、この作戦が失敗して公になったらCIAの面目丸潰れ!そんなのイヤーッ!って言う必死さもちょっとあったと思うのね…(笑)。すっごい切羽詰まってるときにクスリとしたりポカーンとしたりする台詞なりシーンなりを絶妙のタイミングで投げ込む。このテンポのよさはもはや職人技。

映画ならではのスリル満点な編集術も素晴らしかった。カナダ大使私邸内での静かな緊迫感を丁寧に描写、トニーが作戦を続行すると宣言してからのギアチェンジが鮮やか。ここからぐんぐんスピード感が増す。嘘ついてでも(この嘘がまたいい・微笑)大統領補佐官に連絡つける上司、間一髪で変更が反映される搭乗手続き。ペルシャ語の会話に字幕を出さない(登場人物で会話の内容を完全に理解出来ているのはペルシャ語が堪能なジョーのみ)、事務所の電話になかなか出ない、シュレッダーにかけられた顔写真の復元が完成する、バスのエンジンがなかなかかからない、離陸してから一瞬映る飛行機内の電話(管制から指示が来て強制着陸させられるかも)。それぞれのシチュエーションを短いカットでたたみかけ、実際には多少ずれているかも知れないそれぞれの時間軸を凝縮し、緊張感をギリギリと高めていく。最後は皆助かるって知ってるのにすごいドキドキしたもんね……。そもそも「映画ならではのスリル」と言うのは観終わった後気付くもので、観ている最中は入り込んでしまってそんなこと思ってる余裕がないものです。

そしてついに「イラン領空を出ましたのでアルコールを提供します」ってアナウンス、涙ダー。こことか、トニーが一枚だけ当局に提出しなかった絵コンテの行方とか、伏線の回収も丁寧なんですよね。カナダ大使邸のお手伝いさんが虚偽の証言をする根拠のひとつとなったであろうシーンもそう。冗長な説明はせず、ちいさな根拠をちょっとずつ。これら「ちょっとずつ」がトニーたちの助けになっていく。いちばんぶつくさ言っていたジョーが大芝居を打つシーンには思わず笑みがこぼれました。

エンドロールでは、当時の画像とともに主要人物のその後が紹介されます。彼ら以外の、人知れず自分の仕事を全うした人物たちはどうなっただろう?「新作は?」「ポシャった」。やっぱもうじいさんで時代の流れを読めないプロデューサーになっちまったな、とレスターは笑われたかも知れない。イラクに渡ったお手伝いさんはイランイラク戦争に巻き込まれていくことになる。絵コンテをもらってちょっとはしゃいでいた革命防衛軍の兵士たちは……登場人物たちへの優しい視線と、ほろ苦い余韻を残して映画は終わります。これを二時間にまとめている手腕も見事だよアフレック…ヘンな例えだが腕のいい植木職人の剪定のようだ。監督作三本目にしてこの熟練っぷり、これからどんな映画を撮っていくのか、とても楽しみ。

“OK, Let's make a movie.” 大の大人が大嘘をつくために全力を尽くす、それって映画作りそのものじゃないか。アフレックの映画への愛が溢れた上質な作品です。“Argo, fuck yourself!”

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その他。

・『アルゴ』アントニオ・メンデス、マット・バグリオ
原作読んでみようー

・映画「アルゴ」特別企画|日本経済新聞 電子版特集
当時の新聞記事が読めます

・思えばリアルタイムでいちばん最初に憶えたアメリカ大統領てカーターだったわー。ホメイニ師も名前がこどもにはなんとなく面白い響き+氏じゃなくて師なんだーってので印象に残ってた…(世代)どういう人物かってのを知るのはずっと後の話

・パンフのデザインにニヤリ、手にとってみる迄気付かなかったー。シュレッダー怖い!

・タイタス・ウェリバー出てた。ベンアフ監督作品皆勤賞〜

・『ボーン・レガシー』の悪者ふたり(銃乱射のおっちゃん→国務省でゴネるひと、韓国のエージェント→カナダ大使夫人)がこっちにも出ていたので、裏切ったりするんじゃないかと違う意味でヒヤヒヤした……

・『ザ・タウン』でもそうだったけど、ベンアフってときどきえっなんでそこでって言う自分のポカーン顔ショットを入れるけど、あれ結構いいアクセントになりますねー。印象に残るわ

・映写機トラブルで上映開始が遅れ、予告はホビットさんの一本だけ。その後NO MORE 映画泥棒が流れてすぐ本編だったので心の準備が!始まる前からハラハラドキドキですよ

・偽映画『アルゴ』も実はちょっと観たい。完成させてほしかった(笑)

・こういう理由でお蔵入りになった映画って、実は他にも沢山あったりするのかなー