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2010年08月28日(土)
『珠響〜たまゆら〜』『BLANK MUSEUM LOOKING FOR THE SHEEP day1』

■『珠響〜たまゆら〜』第二回 彩(いろ)@サントリーホール 大ホール
『ジャンルの異なるアーティスト5組がそれぞれの演奏を競い合う、究極のガラ・コンサート』第二回。出演は稲本響(Pf)、村治佳織(G)、藤原道山(尺八)、英哲風雲の会(和太鼓)、三響會(能楽/歌舞伎囃子)。今回は市川亀治郎さんと、ヴォイスパーカッションのMaLさんがゲスト出演。
冒頭、サプライズゲストがあるとHPで発表していましたがダメになりました、ごめんなさいとお詫びのご挨拶。サプライズなら事前告知しないでよかったのに…(苦笑)海外の方とのことでしたが誰だったんでしょうね。
紹介文の通りバラエティに富んだ内容で面白いです。クラシックからオリジナル、ポピュラー曲をそれぞれの楽器でアレンジしたものも親しみやすい。しかし、前回観た時にも思ったが、ちょっと物足りないんですよね…1コーナーの時間が短いような……。これくらいが適度、ってことなのでしょうか。門戸を広く開いていて、敷居が高くない雰囲気はいいのかな。サントリーホールでこれが観られるってのも貴重か。
亀治郎さんは『獅子』を舞ってくれました。かなり持ってってた。

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ささんを付き合わせ(すんません)原美へ移動。

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■『BLANK MUSEUM LOOKING FOR THE SHEEP day1』@原美術館

・webDICE『羊がいざなうカオスな世界、原美術館で開催中のBLANK MUSEUM3日目フォトレポート』

『BLANK MUSEUM』3日目。当日券で入れた、よかった!出演者は発表されているもののタイムテーブルは明かされず、いつ誰がどこで何をやるのか判らない。浅井さんは天井桟敷からキャリアをスタートした方だそうで、そこから市街劇『ノック』を連想した。どんなことが起こるんだろう?誰と遭えるんだろう?ちょっとした怖さと沢山の好奇心を抱えて踏み込んでいく感じ。

と言う訳でいきなり恐怖体験です。入場して最寄りのギャラリーIIを覗いてみると入口真正面を向いた中原昌也が演奏中、ガン見される。ひいー!演奏してるのに手元見ないでガッツリこっちを見てる。恐ろしくて負けました、目を逸らして逃げました。…てか中原さんなんで出てるの……と思ったら、東野祥子さんの音楽担当だったんですね。狼狽したのでカフェスペースへ。庭でアグレッシヴに踊るひとたち。うーんとこれはホナガヨウコ企画?BABY-Qのメンバー?判別つかず。厨房付近できぐるみくまさんがひっそり見物してた。後ろ姿もかわいい、背後に立ってニヤニヤ。そうこうするうちいたいた、のぎすみこさんの羊。ご本人が入っているらしい。ふわふわ。かわいい。さわりたいにゃー。うずうずしていたら庭で踊っていた女の子のひとりがカフェに飛び込んで来た。そのまま二階に駆け上がっていく。後をつけて2Fに移動。

屋上扉の鍵が開いていたので行ってみる。庭が一望出来る。建物の屋根部分に大量の紙が散らかっている…誰かばらまいたんだな。自分たちが入場する迄に何があったんだ…一枚を拾ってみると『Aug 28, 29, 2010 "where is my black sheep?"』と題された原美の見取り図。各ギャラリーに記号と色、テーマが指定されている。当日配布のプログラムによると東野さんの作品名が『Looking for the BLACK SHEEP.』だったから、これは東野さんの仕業だな…そして今同時多発で行われているのは東野さんの作品なんだ。さてどうする、全貌を把握することは出来ないぞ。それこそがこのイヴェントの醍醐味でもあるか。

ギャラリーIIIへ。飴屋法水たちの『馬』が展示されていました。血染めのベッドと馬の首。インスタレーションとパフォーマンスをやる、とのことだったので、まずはこれかと見入る。ギャラリーIVへ移動するとそこは『Looking for the BLACK SHEEP.』の世界。先程の女の子が踊っている。傍らにはアナログレコードをかけて聴き入る紳士。入口から覗き込んでいたら、羊がやってきて同じポーズをとられた。あ、これは遊んでくれそう、と思って思わずなでちゃったらぐるりと振り返られガン見される。と言ってもきぐるみのマスクなので実際はこっちを見ているか判らない。きぐるみ一枚を隔てただけで、コミュニケーションの様相が変化するのは何故だ?と言っていたのは誰だったか…飴屋さんもそういうのテーマにしていたよなあ……等と思う。親しさの垣根を越えさせるものが視覚にある。そしてさわると気持ちがいい毛並み、触覚も安心する。実際に安全かは判らないのに。

ギャラリーIVでは壁面に3の数字をモチーフにしたダイアグラムが映されていたが、ギャラリーVでは4がモチーフ。ここでは男性ダンサーが踊っている。しばらく観ていると羊がやってきてまた相対峙、「おまっ、またいたか!」と言う仕草をされる(笑)。スペースを一巡した羊は私とささんの間にぐいぐい割り込んで、設置されていたカメラに向かって挑発ポースをとって出て行った。このカメラはどこかに中継されているのかな?

で、1Fに戻って気が付いた。The Hallにスクリーンがある。分割して各ギャラリーの様子を中継している。あー、こういうことか!と思った途端にパフォーマンスが終了。くー、やられた。しかしホールにロックオンして全部を観るだけではつまらないよね。断片から見えない全貌を想像するのはむしろ面白かった。

会場をうろうろしていたら山川冬樹さんが庭に出て来た。服を脱いで心臓部分にマイクをセッティング。おお、これからだ、間に合った!飴屋さんたちはもうやっちゃったんだろうか…と思い乍ら芝生に座る。山川さんの心音コントロールからスタート、屋上に伊東篤宏さんがオプトロンを持って現れる。オプトロンの蛍光灯、山川さんの心拍と同期する白熱灯の光がだんだん暗くなって来た野外に映える。そのうちギターを演奏していた山川さんが庭から出て行ってしまった。あ、こりゃ屋上へ行くなと思っていたら来た来た、屋上のヘリギリギリのところに椅子を置いて座り(こ、こわい)、伊東さんと向かい合ってイギルを演奏し、ホーメイを響かせる。いつ聴いてもすごい倍音…拡声器を通しているのでエフェクトがかかっているようにも聴こえて、ひとの身体からこんな音が出るのかと感嘆しきり。

呆然としている間に演奏は終わり、山川さんが片付けに戻って来た(笑)。するとスタッフさんが出てきて「この周辺もパフォーマンスエリアになりますので移動をお願いします」と言う。飴屋さんや立川貴一さんたちが出て来てセットを準備し始める。ああ、今からだ、よかった!しかし観るのにいい場所が見付からない…結局カフェ付近迄下がることに。これがちょっと失敗だった。映像が建物の壁面に映されていたらしいがそれが全く見えず、芝生面に映されていた映像も見えない。パフォーマンスエリアから距離をとったので細かい動きが判らない。この細かい動きがかなり大事だったように思う。そしてセッティング面でもトラブルがあったようで(火がつかないとか音響がカフェ付近迄伝わりづらい等)こちらの取りこぼしも多かった。惜しい。翌日はうまくいったようなのでそちらも観たかったな……。

原美術館と言う場から想起されたと言う「戦後あたりからのいくつかの日本の小説をモチーフにした」作品。テキスト引用と参照は小島信夫の『馬』だったとのこと。燃やせば記憶に残るから、ものを燃やす。最後にはひとも燃やす。燃やせば忘れることはない。きっと馬小屋も馬も燃やされてしまったのだろう。立川さんと村田麗薫さんの声は、飴屋さんの近作では欠かせない存在。目隠しをした大西ようこさんによるテルミン演奏は、遠く迄音も伝わり幕切れに印象的な場面を残してくれた。

そしてこれを観ている途中でふと隣を見ると中原昌也がいてまたビビる。怖い!(泣)

20時も近くなって、そろそろ終わりの時間。最後は誰かな?と思っていると、カフェのフロアで勝井さんがセッティングを始めた。中庭に戻って芝生でゆったり。涼しくなったし、蚊にも刺されることなく、芝の感触が気持ちいい。そして始まったのは勝井さんのエレクトリックヴァイオリンと、美術館の壁面いっぱいに映された迫田悠さんの映像。色彩と透過光の美しさ。綺麗だったなー。そしてこの日は品川のど真ん中でも星が結構見えた。夏が終わる。

出口に誘導されると、そこには首のない馬がいた。首から煙が出ている。あっ、ここに繋がったんだ。燃やされてしまった馬を忘れることはないのだろう。

この手のイヴェントは、もうちょっと観客が少ない方がハプニングも含め機能するだろうなとは思った。しかし当日券で入れた者としては観られてよかったなあと言う思いもあり…難しいなー。充分面白かったのですが。蚊取り線香やムヒが置いてあったり、さりげない気配りの利いた手づくりフェス。スタッフの方たちの尽力も相当なものだったと思います。おつかれさまでした、またこんなイヴェントがあればいいな。



2010年08月27日(金)
『インセプション』『トリック・アートの世界展』『デレク・ジャーマン BLUE NIGHT』

■『インセプション』@新宿ピカデリー スクリーン1
いやー面白かった。しかし今観るにはひじょーに身につまされる話だった。ひとはいかに自分の見たいものしか見ないようにしているかって話ですよ。どんなにそうじゃないよって要素がてんこもりでも、そこには目を耳を塞いでるって言うね…本当は気付いているのに。と言う訳で今考えるにはしんどい。
しかし画ヅラは素晴らしく(映画館で観てこそ!)、登場人物のキャラクターも魅力的で、つーかアーサー役のジョセフ・ゴードン=レヴィットがもう気になって気になって仕方がありません。渡辺謙も格好よかったなあ。時間あればリピートしたいな。
今監督のことも思い出したりしていた。『パプリカ』はしんどいけど素晴らしい作品だった。

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■『トリック・アートの世界展 ―だまされる楽しさ』@損保ジャパン東郷青児美術館
上田薫『なま玉子』が展示されていると言うので慌てて観に行きました。何十年越しだ…やっと観られた……。ちなみに展示されていたのは『なま玉子 J』『玉子にスプーン A』『スプーンにゼリー B』。キャンバスに油彩、アクリル。嬉しかった…そしていつか現美にある筈の『なま玉子 B』も観たい。と言うか、このシリーズを一挙に見せてくれる場ってないものでしょうか。
福田美蘭の作品が5点あったのもラッキー。カタログには掲載されているのに、会場や作品の都合で展示出来なったものが何点かあったようで、それは残念。
常設のゴッホ『ひまわり』も観ることが出来ました。損保ジャパンビルの42階にある美術館は平日でも盛況、新宿上空から東京の景色を眺めてしばし休憩。

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ラフォーレのカール・ハイド展もハシゴする予定だったが流石に時間が足りなかった。品川へ移動。

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■『BLANK MUSEUM デレク・ジャーマン BLUE NIGHT』@原美術館

休館中の原美術館を使ってのイヴェント『BLANK MUSEUM』の2日目、『BLUE NIGHT』。デレク・ジャーマン監督作品『BLUE』の上映、仲西祐介さんによるブルーライティングインスタレーション、渋谷慶一郎さんとやくしまるえつこさんによるライヴ。せっかくなので?青い服を着て行きました。

・webDICE『夏の終わりフェスBLANK MUSEUM BLUE NIGHTレポート、原美術館がブルー一色に染まった夜』

17時過ぎに到着、大石麻央さんによるぬいぐるみが迎えてくれました。これどれがぬいぐるみでどれが(ひとの入っている)きぐるみかパッと見わかんなかったりする。常設展示の森村泰昌『輪舞』の近くにきつねのおんなのことおおかみ?くま?のおんなのこが立っていて、よくみるとくまちゃんはなんだかゆらゆらしている…こ、これは中のひとがいるな。じっと見るが目が合っているかは判らない。暑いよね、気を付けてと思う。上記レポートによると、このくまちゃんには大石さんご本人が入っていた模様。

中庭でライヴがあるので、カフェスペースはテーブルをとっぱらった椅子のみに。MIOさんと合流してしばしまったり。だんだん日が傾き、いい感じの夕暮れがやってくる。猛暑日ではあったが今夜は若干涼しそう。ちょっとだけ秋の気配も。そうこうするうちに上映時間が近付いて来た。4箇所のスペースで同時上映されるのでどこで観ようかとうろうろ、2FのギャラリーVに落ち着く。いきなり頭出しを間違えたか途中から始まる(笑)。隣のギャラリーIVはもう始まってる。防音している訳ではないので、隣室の音も聴こえる。上映スタートがズレたので、隣から聴こえた音が数十秒後にこちらで聴こえる、と行った具合。そんなハプニングも面白い。

『BLUE』を観たのは十数年振り。デレク・ジャーマンの遺作。エイズで亡くなった友人、死の床の友人。彼らの思い出とともに自分も死へと向かっている。作品の制作中にはもう目が見えなくなっていたと言うジャーマンが選んだ色はブルー。淡々としたナレーション、サイモン・フィッシャー・ターナーやブライアン・イーノ、エリック・サティの音楽。友人たちへ、そして自分への鎮魂歌だ。

終始美しいブルーのスクリーンには、日本での上映のため字幕が入る。どうしても字幕を見てしまうので、本国での上映形態で観てみたいと当時思ったんだった。そしてまた今監督の『PERFECT BLUE』や、バロウズの『内なるネコ』を思い出したりしていた。この世に生まれ落ちたからこそ体験出来たさまざまなことは、自分がここから去る時に何も持っていけない。しかしなんらかの思いとしてどこかに残るかも知れない。具体的に形を持つものではなく他人の思い出の中かも知れない。そしてそれは一瞬のことなのだろうが、間違いなく存在したものなのだ。送る側にも送られる側にも、何も残らないなんてことは決してない。そう思わせてくれた。

上映が終わるとすっかり夜。しばしのセッティング時間を挟み、各ギャラリーで『BLUE SCREEN』『BLUE WIND』『BLUE WALL』『BLUE SHADOW』と題されたインスタレーションがスタート。原美術館が青に染まる。ひんやりとしているけれど包まれるような感触で気持ちいい。常設展示も観て中庭に戻る。『BLUE』の音声が流れる中、ふらりと現れた渋谷さんがピアノを弾き始める。途中からやくしまるさんが参加、『BLUE』のテキスト抜粋をリーディング。

ジャーマンの声とやくしまるさんの声が交差する。繊細な音が空に融けていく。昼間から鳴いている蝉に続き、鈴虫?コオロギ?の声も加わって、品川のど真ん中とは思えない緑の中で聴く音楽はまるで真夏の夜の夢のよう。しかし表現の奥にあるものは力強く、地に足の着いたものだった。英語と日本語を交えた言葉たちは、生きることは美しく、残酷で、喜びと悲しみと怒りに満ちていることを伝えていた。

アップリンク代表の浅井隆さんのツイートによると、リーディング用に渡したテキストと違う部分をやくしまるさんが返して来たそうです。そして終演後の選曲についてはこちら。マドンナの次にはデュランデュランの「The Reflex」が流れました。エイズ禍、死への恐怖、自分の死期を悟った上での覚悟の表現には、命ある者のみが享受出来る喜びと快楽が鏡のように映っている。80年代から30年は経つが、作品たちは今でも強固で、ひとびとの心の中に残り続けている。

ふわふわした足取りで夜の道を五反田迄歩く。行ってよかった。やっぱり明日も行こう。おねがい、17時過ぎても当日券ありますように。



2010年08月22日(日)
『流れ姉妹〜たつことかつこ〜』『ウメップ』

■真心一座 身も心も 第一章再演『流れ姉妹〜たつことかつこ〜』@TOKYO FM HALL

初演は5年前。ついこないだだったような、もう随分昔のことのような。今回パンフ読んだらなんでも伝説の舞台になっているそうで、やっぱり5年って重みや感慨があるな。この5年間、自分は何をしていただろうかと振り返りたくもなる。

今回の再演は、来年1月に上演される最終章『流れ姉妹〜たつことかつこ〜ザ・ファイナル』(仮題)を控え、ことの発端を振り返ってみようと言うもの。最終章のゲストには古田新太と池田成志と言うとんでもない面子が決まっており(どちらがラバーでどちらがレイパーかは未発表。どっちがどっちでも相当なことになるよ……)、それに向けての覚悟みたいなものも感じられた舞台でした。

初演は円形。TOKYO FM HALLもフリースペースなのでセットの組み方はほぼ同じ。出入りも四方から出来るようになっていました。そのひとつの出入口近く最後列の席だったんですが、松重さんだけついたてから頭が出てしまうので、出番が判ると言う(笑)ニヤニヤしてしまって困った。いやーもうホント格好いいよね。20年愛ですよ!もうずっとファンでいるよ!ついていきます!

今回観直してみて、じわりふわりと肌に触れるような人情の機微に気付くところも多く、千葉さんの筆致に唸らせられたりもした。そして初演の感想にも書いているが、松重さんはホントもっと恋愛ものをやればいいと思う…ご本人は苦手と言ってますけどね。千葉さんがパンフのインタヴューで話していますが、「風が涼しい」「ほんとだ」と言う伝わりづらいやりとりで、ふたりの距離感と愛情表現を観客に感じさせることは難しい。しかし松重さんはそれが出来る役者さんだと思います。微妙な声と表情の変化で心の動きを表現する。そしてただ黙って座っている、立っている、と言う“何もしない”時の静かな存在感。

そこから、松重さんって小劇場で培ったものを大事に育てて活かしてきたからこそ、映画にもTVにもご活躍の場を拡げることが出来たのかな、と偉そうなことを思ったりもしました。蜷川さんとこがスタートで大劇場での舞台も多かったけど、キャパ数百の劇場で緊迫感あふれる作品を数多く発表していたザズゥシアターに出演していたことは大きいのではないかな…息を詰めて観るような“距離の近い”芝居。観客の視線をカメラに置き換えても通用する力。

とまあそんな真面目なことを、500円ずつ集めてTシャツプレゼント、とか暴れ牛、とかセカンドバッグ、と言うアイテムを観乍ら考えていました。奥深いわー。

はー松重さんのことばかり書いてしまいましたが、ガツンとしたチームワークで本当に観ていて気持ちがよい一座です。座長である村岡さんの懐の深さにも惚れる。座付作家の千葉さんの描く恋模様は他では観られないものだし、座付演出家の河原総代も絶好調(昨年辺りからすごい仕事量なので、体調の方とかちょっと心配ですが)。がや連中もいい仕事してます。ゲストレイパーの粟根さんも、複雑で不器用な男心で魅せてくれました。

さて最終章はどうなる。チケットとれますように!

よだん:パンフがすごく充実してます。かわいい装幀なのに濃いー濃いー。読み応えあった。千葉さんと内田春菊さんの対談で松重さんのあれやこれやが語られていて、このひとの不思議な魅力の謎がちょっとだけ解けたような感じもしたなあ。家庭的なのに恐ろしくひとりで立っている感じなんだよね……。松重さんと粟根さんの対談では、仕事に関してのおふたりの厳しさが伝わる内容で興味深く読みました。徳永京子さんによるたつことかつこの業深さを指摘した鋭いレヴューも面白かった。

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■梅佳代写真展『ウメップ』シャッターチャンス祭り in うめかよひるず@表参道ヒルズ スペース オー

友人の写っているスナップが展示されてると聞いて、その本人を含めた4人で芝居とハシゴ。表参道ヒルズのオシャレスペースが、かわいらしい飾り付けでうめかよひるずに大変身。うめかよさんのイラストが印刷された「おとなけん」なるチケットを受け取り入場。BGMはいつどこで録ったのか、多分ご本人とそのおともだちによるカラオケ。嵐が好きらしい(笑)。文化祭みたいなてづくり感覚を思い出してきゅーんとなる。

写真集『ウメップ』に掲載されている写真をパネルにしたものと、うめかよさんが撮ったスナップで構成。スナップは会期中撮られたものをどんどん追加していったそうで、最終日に観られたのはよかったな。ギャラリーつきあたりの壁一面がそのスナップ展示スペースだったんだけど、張り切らなくて他のスペースを浸食していました。日々変わる、日々増える写真たち。長蛇の列に並びゆっくり観ていく。うめかよさんの実家、おじいちゃん、おばちゃん、わんぱく小僧、いぬ、ねこ、取材で会ったひとたち。ちょっと抜けていたり、くすっと笑ってしまうような瞬間が並んでる。皆いい顔。あっ、誰々だ、こっちには誰々がいるよ!と話し乍ら進む。そうこうするうちいたいた、友人が明るい表情で写っているスナップ。いい瞬間。

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その後青山でごはん→お茶しつつ延々女子トーク。楽しかったにゃー。



2010年08月21日(土)
『黙阿彌オペラ』

こまつ座『黙阿彌オペラ』@紀伊國屋サザンシアター

『木の上の軍隊』は延期、『黙阿彌オペラ』再々演に変更、と発表になった直後に井上さんは亡くなり、これが追悼公演になりました。この演目は井上さんご自身の希望だったとのこと。使われることのなかった『木の上の軍隊』ポスターと宣伝写真がロビーに展示されていました。永遠に上演されることはありません。観たかったな。

狂言作者・河竹新七(黙阿弥)が見つめる、幕末から明治への28年。文明開化に乗って欧化へと浮かれる時代を生きた彼の日本人観、芝居への厳しさ、観客への思い。黙阿弥は井上さん本人なのでしょう。軽快な言葉たち。説教するでもなく、ユーモアを交え、しかし根底には怒りの炎があり、ただただ静かに、しかし意志は決して曲げず、ひとや空気に惑わされず。そしてひとにはひたすら優しく。失敗しても、挫折しても、必ず活路はあると示し、死んではいけないと言う。その足許には、思いを遂げられなかった者たちの亡骸が累々と続いている。必死に、懸命に生きていたのに、どうすることも出来ずに死んでしまった者たちだ。

毎度のことだがものすごい台詞量、しかも3時間超の上演。体力を使う。しかし飽きない。物語の力にぐいぐい引き込まれる。とにかく言葉が素晴らしいので、読みものとしての戯曲だけでも伝わるものは多いと思います。新たに言葉を加えて感想を書くのが野暮だと思えてしまうくらい。しかし、舞台と言うものには役者と言う肉体が存在する。役者たちが語るからこその何かがあるのは間違いがない、そうでないと芝居である意味がない。出演者たちは、それに十二分に応えていました。絶妙のキャスティングに思えました。『木の上の軍隊』のために集まったキャストだったと言うのに。

台詞のスピードはかなりあります。テンポよくハイスピード。しかし言葉が流れていかない。聴き流すことはない、いや、出来ない。これは出演者の力も大きい。抑制が利いているが腰の据わった鋼太郎さんが冷静な新七像を演じる。藤原くんがてやんでえな調子で息を吹き込んだ役は五郎蔵。お調子者ではあるが、彼の背景にはさまざまな辛苦がある。不遇に身を置き乍らも懸命に生きる。藤原くん、やはりこのひとはすごいなと思わずにはいられなかった。北村くんも緩急自在の演技を見せてくれました。このひとホント絶妙なとこで力抜くの巧いなー。

内田さんの歌は初めて聴いたけど、あれだけ唄えるひとだったんだ!計り知れないポテンシャルの持ち主だなあと感嘆。熊谷さんはばあさんと娘の二役を力強く演じていました。彼女に代表される市井のひとたちには共感することも多く、だからこそあのラストシーンは胸に迫った。そこを掬いあげる井上さんの目線のことを思った。見ているひとはどこかにいる。誰にも気付かれず死んでいったひと、誰からも忘れられているひとたちが、ほんの一瞬でもそれを信じることが出来たらどんなにいいだろう。それを届けるのが役者の仕事。それを心に持ち帰るのが観客。それが拡がっていけば、どんなにか。

松田さんも、大鷹さんも朴さんも素晴らしかった。登場人物たちが舞台の上で生きている。そして、作品の中で井上さんの言葉も生き続けるのだろう。



2010年08月20日(金)
よみもの

■『センチメンタルな旅 春の旅』荒木経惟
ラットホールギャラリーによる出版で、900部限定。『センチメンタルな旅 冬の旅』とサイズや装幀を揃えてある。並べて置いておくことにした。『冬の旅』同様、これから何度も開く写真集になる。
『夏の旅』や『秋の旅』はもう出てほしくない。でも、もしそれらが発表されることがあったら、間違いなく素晴らしい作品になる
・『アラーキー 愛猫チロを語る「愛する者を失うということ」』

■『INOUE TSUGUYA GRAPHICS TALKING THE DRAGON』井上嗣也
うわーいリトルモアさん有難う、井上さんの気が変わらないうちにどんどん出してください。
あれだけ表に出るのをいやがってた井上さんが続けて作品集を出しているのは、人生まとめの時期に入っているってことなのかな。しかし散逸しがちな広告印刷物を作品集としてまとめてもらえるのはとても嬉しい。写真、文字、平面。印刷物のアート。孤高のラディカルグラフィックデザイナー

■『家で食べるごはんが一番 アルネのかんたん料理』大橋歩
■『家で食べるごはんが一番 アルネのかんたん料理 2』大橋歩
いきあたりばったり(笑)。材料が予想よりかさばって鍋が溢れそうになってしまっても、「今さら鍋を換えることはできません。写真を撮っているからね。」とそのまま続行してる。そのゆるさが憎めないー。料理そのものはシンプル、しっかり手順を踏めば難しいことはない。でもそのシンプルなものからバリエーションを拡げる発想が豊か、しかもかわいらしい!暮らしなんて臨機応変にしかならないからな。理想的。
読みものとしても面白いし、味のある写真(撮影も大橋さん)やチャーミングなキャプションをパラパラ眺めるだけでも楽しい料理本

■『大森南朋 さもあらばあれ』
うはあタレント本だ!こういう本が出るように……(涙)
めちゃめちゃ狙った萌え写真(笑)も満載ですが、麿パパや立兄ィとの家族鼎談、全仕事一覧(でもよく見ると漏れがあるよ!)等テキストも充実しています。実はおーもりくんの舞台デビューは大駱駝艦だったと言う初出しのネタもあり。ワークショップにもしっかり出ていたそうです。この手の真面目な話、以前ははぐらかすことが多かった。それで誤解されることもあったんじゃないかな。今は、照れは相変わらず見え隠れすれど、きちんと話すようになっているように思います。役者として充実している今だからこそ、なのでしょう。よかったよかった。これからのご活躍も期待しております



2010年08月16日(月)
夜の上野動物園

夜間営業(〜20時)最終日の16日に行ってきました。と言ってもスタートは16:30。まだまだ日差しは弱まらず、そしてよりにもよって猛暑日と言う。歩いてる間にぶっ倒れるんじゃないかと言う暑さだったので、入場前に飲みものを確保して持ち歩く。

真夏に水族館ならともかく動物園て、どんだけもの好きか…と思ったものの、ひとは結構います。夏休みのこどもとか、元気だねー。とりあえずいちばんの目当て、まぬるねこがいる小獣館を目指す。5月の頭に生まれた三匹のこどもたちがちょーかわいいの。6月末に見に行った時は既に馬肉をばくばく食べていて、「二ヶ月弱でもうこんな…けもの……」と思ったのですが、またひとまわり大きくなっていた。と言うかもはやちっちゃいおとな。でも仕草はまだまだかわいらしく、こどもー。ごはん前はあばれまわり、おかあさんにちょっかい出して怒られ、ごはんがきたら阿鼻叫喚、食べ終わったらスイッチ切れたみたいにパタリと眠る。あああかわいい。

6月から変わっていたことと言えば、こどもたちに名前が付いていたこと、巣箱に設置されたカメラとモニターがなくなっていたこと、タビーが隣のスペースに引っ越してきていたこと。タビーは一昨年生まれた子なんですが、次の赤ちゃんが生まれた時ケンカになるかもしれないからと外に隔離されていたのです。隣とは言え、行き来出来ない一匹きりのスペースなのでちょっと可哀相な気もしたり。隣が大騒ぎになってると、ガラスに顔をベターとつけて様子を窺ってたりする。あーかわいい、かわいそう、かわいいそう。気のせいか。

それにしてもタビーはなんか、思慮深い顔をしていた。よく遠くを眺めてた。格好いいねえ、おとこのこかな、いやでも宝塚ぽくもある…なんて話していた。帰宅して調べてみたら、おんなのこだそう。いやー格好いいな、惚れた。素敵。

おとうさんがいなかったのが残念。もう12歳なので夏バテとかしてないかちょっと心配。エアコンが効いてる屋内と言うこともあり、一時間以上かぶりつきで見ちゃったよ。全然飽きないよ…あーまぬるねこはかわいいなあああー。

残りの時間で他のどうぶつなど見る。丁度こびとかばとかばの前で飼育員さんがお話をしてくれるイヴェントをやっていたので寄っていく。こびとかばとかばの違いをイラストフリップを使って説明してくれました。楽しく聴いたがここで蚊にたくさんさされた。だんだん暗くなってきて楽しい、駆け足でペンギンやレッサーパンダ、とらを見る。最後に『動物園のハローワーク』と題した上野動物園の歴史や業務内容、飼育に関しての裏話を聴く。面白かったー。

動物園前にホットケーキのおいしい人形町のお店でお茶+ごはん、動物園後にタイスキ。おいしかったー。ようやっと食べられるようになってきた。ともだちと楽しくうはうは食事出来ることって幸せなことだよなあとしみじみ。



2010年08月15日(日)
東京バレエ団『ベジャール・ガラ』

東京バレエ団『ベジャール・ガラ』@ゆうぽうとホール

『ギリシャの踊り』『ドン・ジョヴァンニ』『ボレロ』。東京バレエ団2010年欧州ツアー帰朝報告公演と言うことで、ロビーにはツアーの様子のパネル等も展示されていました。

観たことのある作品ばかりのプログラムだったので、多少構成を憶えていて落ち着いて観られた。『ドン・ジョヴァンニ』何度観ても面白い…最後のあのオチのおっちゃんは誰なんだろね。キャストにも載らないし。スタッフさんとかなのかしらん。アイドルに憧れる少女たち、女性ダンサー皆かわいらしい。『ギリシャの踊り』は陽光のもとで輝く官能が美しい。後藤晴雄さんのソロが素晴らしかった。

『ボレロ』を踊るのはパリ・オペラ座のトップエトワール、ニコラ・ル・リッシュ。例えばギエムだと長い髪が鞭のようにしなると言った、激しさの中に宿る流麗さも大きな魅力ですが、リッシュの場合は、芸術的とすら言える強靭な筋肉、汗の飛沫がミストのようにパッと散ると言った美しさ。鋼のようなボレロでした。リズムを踊る東京バレエ団の男性ダンサーたちも躍動感溢れ、なんと言うか…清々しさすら感じた。幕が降りた時、ステージの内側から出演者たちの歓声が聴こえました。チームワークの良さと言うか、人間リッシュに魅了された後輩たちが集ってやりとげた!みたいな気持ちよさを感じました。ああ、いいものを観た……。

男性ダンサーのボレロはリッシュ、オクタヴィオ・デ・ラ・ローサ、首藤康之さんで観ているのですが、女性ダンサーはまだギエムしか観ていないのです。上野水香さんのボレロもいずれ観たいな。



2010年08月14日(土)
有元利夫展、八月花形歌舞伎 第三部

有元利夫展『天空の音楽』@東京都庭園美術館

学生の頃同級生に教えてもらった有元利夫。その時貸してもらった『女神たち』はその後自分でも買い求め、今でもよく開く画集です。その同級生はグラフィックデザイン専攻同士だったのだが、有元さんの絵が岩絵具を使っていることにとても興味を持っていて、日本画についてもっと知りたいと言っていた。卒業してから会わなくなったが、今はどうしているのかな。

代表的な作品は勿論、芸大買い上げになった卒制作品(連作『私にとってのピエロ・デラ・フランチェスカ』)も半分展示されていた。『花降る日』『春』『厳格なカノン』もあって嬉しかった。いろんな本の装幀にも使われているのでポピュラーでもある。こういう作品がポップになりうるのも不思議なものだな、と思っていたが、有元さんは芸大卒業後数年電通に勤めており、制作ノートにも「商品としては…」と書いていたりして、意識的なものもあったのだなあと思う。

絵に登場する人物は、どっしりとした女性像が多いのにも関わらず、なんだかふわりと浮いているように見える。モチーフとして使われる花弁、球体、布らしき薄い板状のものも、常にふわふわと漂っている。絵の中に躍動感は一切ない(と言うより意識的に排除しているのだと思われる)のだが、そこには風の存在を感じる。

その風は“風化”の風なのだろうか。最初から風化を目指している、と言うか、風化したものが本来の姿と言ったような絵の数々。その風化を一刻も早く見たい、とでも言うように、有元さんは若くして亡くなってしまった。遺された作品の数々は、今でも風化することなく愛され続けている。時間が止まっているかのような庭園美術館で観られたのもよかった。

下描きやメモ類が観られたのも面白かったな。何故かほうれん草のチャーハンのレシピとか詳細にメモってるの(笑)思わず憶えて帰っちゃった。

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八月花形歌舞伎 第三部『東海道四谷怪談』@新橋演舞場

勘太郎くんのお岩が素晴らしくてもう恐れ入りました。おまっなんでそんなに女心が解るねん!とすら言いたくなった。いや、女心だけでなく…愛情を失うこと、信じていたものに裏切られること、自分のアイデンティティを喪失すること、そういう負の感情をこのひとはどこで得てきたのだろう?なんてことすら思ってしまった。普段の勘太郎くんは見ての通り(と言っても自分たちは本当の素の勘太郎くん=波野雅行さんのことなど知る由はないのですが)明るいキャラクターでまっすぐなイメージですけどね。恐ろしい役者さんです。以下まわりくどいのもなんなのでもういきなりネタバレです。

とにかく二幕目第三場、『元の伊衛右門浪宅の場』に尽きます。容貌の変わったお岩が伊藤家へ向かうべくお歯黒を塗り髪梳きをする場面。圧巻です。演舞場静まり返りまくり。その前の薬を毒と知らず感謝して服む場面は勘三郎さんを彷彿とさせる型で、こちらも素晴らしかったのですが…いやー……髪梳きはもう有名な場面ですが、お歯黒塗る場面から涙したのは初めてだよ私……。

失礼な話だが、この辺りって大概宅悦がお岩の顔見る度に「ひいっ!」とか「ぎゃあっ!」とかすごい騒ぐ演出じゃないですか。そこで笑いが起こるのも常で。今回もそうだったんだけど、お岩の怒りと悲しみの表現が凄まじくて、宅悦の反応を鬱陶しく感じた(笑)もうおめーうるせーよ!お岩可哀相じゃんよ、もっと気遣えや!とすら思った(笑)市蔵さんごめんなさい。いやでもあの場面に笑いを挟み込む必要はないと思ってしまったよ…それ程迫真の場面でした。

お家は没落、自分は夜鷹となってなんとか日々の糧を得るも、父は殺され、旦那はアレで、跡継ぎとなる男子を産んでも何の評価もされずむしろ疎まれ、自身の顔も存在の意味も崩壊していく。『四谷怪談』って何度観ても酷い話でお岩が可哀相でならないのですが、エンタテイメントとしての効力があるのか、世情とか伊右衛門の都合とかもまあ含み置く余裕もあったりはするんです。しかし今回はなかったな、そんなの!(笑)もーなんで!?なんでお岩がこんな目に遭わなきゃならないの?お岩何も悪いことしてないのに!とてもいい娘で、姉で、妻で、母なのに!女が背負うもん皆背負ってそれでも凛と生きているのに!どー(涙)てなものですよ……。

お岩の悲しみ、焦燥、怒りがこれだけ伝わったのは、勘太郎くんが若いからと言うのもあるのではと思いました。お岩は大役ですからベテランの役者さんが演じることが多いですが、考えてみればお岩さんの実年齢って、勘太郎くんの方が近いと思うのです。あの辺りの年齢だからこそ感じるものがあったと言うか…親が亡くなり長女として家を守らねばと言う責任感を負っているとか、若い娘に旦那をとられちゃうとか。上の世代は死んでいき、下の世代には追い立てられる。怒り、悲しみが実年齢に添うように感じられたのです。リアルだった。

そもそもリアルに見せない(=それこそが粋)為に歌舞伎の型があるのだとは思いますが、そういう約束事を打ち破ってこその歌舞伎だとも思うのです。そしてそれは、ただリアルに、ストレートに感情を出せばいいと言うものでもない。実際舞台上のお岩は慟哭したりはしません。言い回し、動きはしっかり型に乗っ取っているものです。ただ若いから、だけで務まるものではなく、技量も必要と言うことです。だからこそこれは今の勘太郎くんでなければ演じられなかったのではないか、とすら思いました。今だからこそのお岩像とも言えます。そういう意味でも貴重。今後勘太郎くんが歳を重ね、お岩像を更新していくのを目撃出来る楽しみもあります。

はーお岩のことばかり書いてしまったぞ。他も面白かったですよ…お岩を演じる役者さんは与茂七、小平も演じますが、その醍醐味でもある戸板返しの場面がちょっとギリギリでヒヤリとしました、ご愛嬌(笑)。そしてお岩役のためだと思うのですが、勘太郎くんすごく痩せてて、与茂七役やってる時にすごく華奢に見えた。しかしその分身体のキレがよく、大詰第二場『仇討の場』では軽妙さ溢れる殺陣で盛り上がりました。まあ勘太郎くんはいつもキレがよいが…お岩で抑えている分与茂七で炸裂と言った感じか。

はー勘太郎くんのことばかり書いてしまったぞ。他も(以下略)

・三角屋敷の場がないとやっぱお袖と直助のことは尻切れトンボになるよねえ…仕方ないとは言え
・舞台番(猿弥さんでした)お約束の「おや、お岩さんがいらしたようですよ」の後の客席いじりは毎度のことと分かっていてもやっぱりビビるよねー!
・演舞場なので歌舞伎座程どよ〜んとした真っ暗闇にはならないんだけど、やっぱり怖いわー
・そしてお岩が客席に!以外で「ぎゃあー!」と叫び乍ら知らせのひとが客席を横断して舞台上に駆け上がって来るって演出は初めて観た。あんまりビックリしたのでそのひとが何を知らせに来たか忘れた(笑)
・小山三さんがおいろ役で出演。舞台上ではお元気そうに見えました。笑いも沢山とりました。退場時に「中村屋!」と声がとんでジーン

・しかし同じ『東海道四谷怪談』の同じ場面でも「首が飛んでも動いてみせるわ」って台詞があったりなかったり、小平の指が折れてぶらぶら〜があったりなかったり、お岩の息子がねずみに連れて行かれた後も出て来たり出て来なかったり。これってどこのお家が主役をやるかとかによって違うんでしょうか?流派みたいな…未だによく判らない

・海老蔵さんの伊右衛門は…姿はかなりよかったです。あとやっぱこういう色男があーゆーDVやるとホンットムカつくね!(笑)蚊帳迄はぎとっていくとことかさ!あーホント腹立つ



2010年08月12日(木)
『gracious weather』

『gracious weather』@晴れたら空に豆まいて

晴れたら空に豆まいて四周年記念特別企画。南博トリオwith菊地成孔とCHORO CLUBの対バンです。

ブラジリアンミュージックのショーロを独自の解釈で演奏するCHORO CLUBから。初見。笹子重治(G)、秋岡欧(バンドリン)、沢田穣治(B)のトリオ編成。カヴァーとオリジナルをいいバランスで進めていきます。ゲストヴォーカルを迎えた曲もあるそうですが、それもこの日は全てインストで。秋岡さんの演奏する楽器、マンドリンならぬバンドリンと言うものだそうですが、音も見掛けも私にはマンドリンと区別がつかなかった…(こういうことらしい。正にショーロのための楽器なんですね)。

MCは気さくにゆるゆる。共演したマルコス・スザーノのエピソードが面白かったー。ああなんか心が洗われましたよ。夏バテに効いた。

さて南博トリオ、こちらも初見。菊地さんのリーダーバンドでの南さんはダンディーの権化で、ちょークールでちょーかっこええイメージだったんですが、それが崩壊しました。「そりゃ菊地のリーダーバンドでは喋んないよ俺は」つってましたが、自分とこではこうなんだー…まさかゴーゴー踊りやケイレンダンス迄見られるとは思わなんだ(笑)。このトリオに現場参加したのが初の菊地さんですら「俺南さんと結構つきあい長いのに…俺の知らない南さんがいる」なんて言ってました。

メンバーは南博(Pf)、鈴木正人(B)、芳垣安洋(Drs)。南さんと鈴木くん、鈴木くんと芳垣さんが組むのを観るのは久々。途中から菊地成孔(T-Sax)。オリジナル、スタンダードナンバー、NKDSのナンバー(1ホーンでピアノとのユニゾンをとる「Susan Sontag」は新鮮!これはこれで緊密でいい!)、当然インプロを織り交ぜ乍ら、緊張感溢れ、しかし抱腹絶倒の約105分セット(うち15分くらい喋り?笑)。「僕のはジャズじゃない、お遊び」なんて言い乍ら、余韻を残さずプツッとしたエンディング、しかし中盤の滑らかで気持ちのよいパッセージ。鈴木くんが演奏中に笑顔を見せることはよくあるが(彼の表情でその日の手応えが伝わってくる)、芳垣さんが笑っているのは珍しい。音で遊ぶ大人たち。しかし陣取りゲームのようにお互いの音の隙間は決して逃さない、ほんの少しでも展開の兆しが見えれば即鈴木くんがパターンを変える、芳垣さんが拡げる。南さんがその上を疾走する、菊地さんが暴れる。

呑みっぱなしの南さん、指も滑るし口も滑る。それに負けじと菊地さんも言う言う。書けません(笑)。演奏同様「俺の方がすげーぜー」なヤンチャ同士の意地の張り合いみたいで面白い。しかし菊地さんは終始敬語、ここらへんなんだかんだで“らしい”印象。

こんな生き方長生きしないよねなんて言っていたけど、いやいや南さんには長生きしてほしいです。ダンディーでコドモでヤンチャでクールなそのピアノをまだまだ聴かせてほしい。最後の曲はレクイエム、まだまだ送る方でいてください。



2010年08月10日(火)
THE SMASHING PUMPKINS -SUMMER SONIC 2010 EXTRA-

THE SMASHING PUMPKINS@STUDIO COAST

サマソニに行けなかったので、これが再結成スマパン初見。

19:45くらいに会場に着くと、汗だくになったOAのファンがごそーーーっと出て来て(てゆーかスマパン観てくれないのね…)ええ〜ガラガラになっちゃったらどうしようともう泣きそうになる(笑)。と言いつつ私もOA観てない訳ですが。いや、仕事が終わらなかった。そうこうするうちに、今度はスマパンファンらしきひとたちがどどっと入って来て、なんだかんだで結構な入りになりました。

となりの子が「日系人のひとがいるんだよね!」と話していておいそりゃいつの話だよと冷や汗。しかし初めてのスマパンのようでとても楽しみにしてるっぽく、始まったらメンバー構成について別に気にしている様子もなかったのでよかったねえ楽しめーとか思う。再結成について(と言ってももはやオリジナルメンバーはビリーしかいないので、ビリーが今後スマパンの看板でやってきますよーってことについて、かな)はいろいろ思うことはあるが、ビリ公を甘やかす会会員なのでもう好きにやればええがな、と思う。

2時間ガッツリ、ビリーニッコリ。ちょっと後ろめの段差のあるとこで観た。位置的にも音がいい、と言うか、やっぱりスタジオコーストって音がいい。再結成後の曲と既発曲をほぼ交互にやるスタイル。「Ava Adore」(この曲がこんだけ盛り上がるのは日本ならではだろうな)「Today」(ビリーガッツポーズ)「Bullet〜」(流した感じの演奏だったけどフロアが盛り上がる盛り上がる)「1979」(最初の8ビートドラムパターンだけでもう歓声が)等、過去曲は大合唱。昔の曲はやらないもんと再結成直後の頃は言ってたので、まるくなったと言うか…昔の曲も自分の曲じゃないの、かたくなになることないのにねと思っていたのでここらへんは嬉しかったな。音的には過去のスマパンではない、当然。ビリーのギターはともかく、ジミーのドラムがない。サウンド的にはこのふたりが核ではあったし、ジミーのドラムはバリテクな上にとてつもなく個性的で、唯一無二のドラムだった。それがない。

しかし19歳(!)の新入りドラマーはかなりよかった。ジミーではない、あのロールじゃない。でも彼のドラムはよかった。ビリーもドラムソロを任せたりしている。「Pastichio Medley」(『ZERO』に入っていたアレ)的なビリ公が好きにギターを弾きまくりまーす!皆おいてけぼり!な展開も多々ありましたが、ビリ公とギターの子が向かい合わせになって3〜5度違いのリフユニゾン弾いたりする。むしろ昔のスマパンよりバンドっぽい…とすら思う光景があった。

もともとビリーのワンマンバンドのようなものなのでバンド幻想は少ない。それでも『Siamese Dream』でビリーがイハとダーシーの楽器をとりあげてレコーディングしたこと、ジョナサンが亡くなってジミーが解雇された後、残った3人で作り上げた『Adore』、ジミーが戻りダーシーが去り、メリッサを迎えて行った最後のツアーと言った、傷付け合ったメンバーがくっついたり離れたりするさまには、やはりTHE SMASHING PUMPKINSと言う名を持つバンドの特殊性を感じざるを得ない。

メンバーが代替わりすればリスナーも代替わりする。驚いたのは、再結成後の曲でも反応がよく合唱になったこと。歌詞部分じゃなくてコーラス部分だけど、何故皆タイミングをわかってるんだと思う程だった。 ビリー言うところの“New Generation”は、CDを買わずにダウンロードした最近の曲を熱心に聴いてるのかな、と思ったりした。過去のメンバーのしがらみも、既発曲への拘りもない。OA目当てだったのかも知れない。初めて観るTHE SMASHING PUMPKINS、ライヴではどんな曲をやるのかな?きっと最新作からは必ずやるだろう、丁度ダウンロードも出来るし、聴いてみよう。そうやって新しい曲を憶えてきたのかも知れない。こういうのが続けばいい、そしてこのバンドがこれからも愛されていけばいいな、と思った。

いちばん嬉しかったのは「Cherub Rock」。ジミーのドラムじゃなくても。

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セットリスト

01. Freak
02. Hummer
03. Astral Planes
04. Ava Adore
05. A Song for a Son
06. Today
07. Bleeding the Orchid
08. Eye
09. Bullet with Butterfly Wings
10. Gossamer
11. A Stitch in Time
12. 1979
13. Cherub Rock
14. That's the Way (My Love Is)
15. Owata
16. Stand Inside Your Love
17. Tarantula
18. Tonight, Tonight

encore
19. United States

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2010年08月06日(金)
ONE DAY AS A LION、『ドッコイ生キテル街ノ中』

■ONE DAY AS A LION@UNIT

フジではロキシーと丸被りだったのでこちらの単独を。しかしよくとれたな…有難うございました。と言う訳でUNIT満杯。ぐるじがっだー。

UNITに着いたら、前に停められていたワゴンからザックが出て来た。ちょ、開演30分前ですよ。リハ後どっかに出かけてたのかな。こういう場合キャー!とか言うてサインもらったり握手してもらえばいいんだろうか。出来ませんでした。いつもそうです。素のザックはとてもふんわりした雰囲気だった。このひとがあのRATMの…怒りの……ううーんなんだか連想出来ませんでした。ちょっと衝撃。

フロアはぎゅうぎゅう。過去唯一本気で死ぬかもしれないと思ったライヴが2000年のRATM@幕張で(未だにこれ更新されないわ…って、更新したくないわ……本当に走馬灯って見えるんですね)これトラウマになってるもんで、もうその時の恐怖が思い出され、まずは身の安全が保てることを第一条件に場所を探す。PA卓付近に柵があったんで、いざとなったらしがみつこう!とそこに決める。ちょっと段差のあるとこだったので視界もいい。しかし開演が近付くにつれここもぎゅうぎゅうになってくる。このエリアでこの圧受けたの初めてだ。スタッフが何度も「こちらの奥がまだ空いてます!」「動けるひとはこちらへ!」等と誘導している。怖い……。

後ろのおにーさんが「40分で終わるらしいぞ」と言ってる。ODAALはEP一枚しか出してないから持ち曲が少ない、ザックの性格からしてRATMの曲をこのユニットではやらない。大阪でも名古屋でも9曲、20時には終わっていたそう。19時過ぎにまず韓国のギターを作っていた職人さん?の挨拶があり、不当解雇を受けたことについてザックが共闘してくれる、この場を借りて皆さんにも実情を知ってほしい、協力してほしい、と言ったお話。そして19:20にODAAL登場。

果たして40分で終わりました。ステージに出て来たザックは帽子を被っており、出て来た時誰か気付かなかった(笑)。ああやっぱりRATMとは違うー、当たり前だけど。だってザックが笑うんだよ、ステージ上で!リラックスした雰囲気。かなり押されて怖かったけど、あ、こりゃヤバいマジで!て程にはならずなんとか最後迄ちゃんと観られました。暴れる以前にザックが何をやるのか?と見守ってる感じだったかな。

ex. マーズヴォルタのジョン・セオドア(Drs)と、サポートにロカストのジョーイ・カラム(Key)のトリオ編成。最初から上半身裸のセオドアがドラムをラフにしかし強力に叩き、そこにカラムの隙間を活かしたノイズが乗り、ザックが吠える。音の感じは、フラットな音程のヴォーカル(まあザックは唄う訳ではないけど)、シンセの単音使いや音質が似ていることから、NINの『Year Zero』をちょっと連想しました。なんだろこれって局地的な流行みたいなもんもあるのかしら…時期とか場所とか。アメリカに住んでるひとが今アメリカに対して抱いているもんが形になるとこうなる、と言った一例なのかな。たまたまかな。

ザックもKeyをいじり、セッションぽくなる場面も。しかし終盤マイクを握ったザックは縦横無尽に飛び回り、スピーカーに乗ってフロアを煽ったりして盛り上がりました。こうやって見るとこのひと腕長いねー。

終わって時計を見たらピッタリ20時。余裕でハシゴが出来る、助かった。

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■eastern youth『ドッコイ生キテル街ノ中』@シアターN渋谷 シアター2

うおー立ち見も完売。早めに整理券とりに行ってよかった。

イースタンユースの映像作品がDVDでリリースされるのを機に、2週間の限定上映。最終日になんと監督とメンバーの舞台挨拶があると言うことで、こんな機会滅多にないだろう!と出かけて行きました。だって3人がトークとかすんのよ…何喋るのよ……。どるさんが「吉野さん照れちゃって何話していいかわかんない!ってしこたま酒呑んで酔っ払って登壇しそうだよ」と言っていたが、まあほぼそんな感じでした(笑)。

皆さん(タモさんは遅刻したので控え室?で観てたとか)一緒に上映を観ており、客席から登場。フッツーに帽子被って荷物持ったまんま(笑)。吉野さんいきなり「ちょっと便所行ってきていいすか?」と出て行き場内爆笑。進行を任されていた川口潤監督が「時間ないのに〜」と泣きそう。しかし15分のトーク予定をちょっと延長していろいろ話してくれました。以下憶えているもの。記憶で起こしているのでそのままではありません。

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田森:僕だけ遅刻しちゃって。でも途中で入るのもあれだしさあ!皆が観てる前を、こう…それ嫌なんで、控え室にいた。もう帰りたい、眠い(爆笑)

(戻って来た吉野さん挙動不審。缶ビールが渡され呑み呑み開始)
川口:観てみてどうでしたか?
吉野:いや〜ふとってんなあ〜って……何俺?丸!って!キャー恥ずかしい!
二宮:ふとってる〜…恥ずかしい!客観的に見れない
川口:やっぱり見た目の変化は気になるものですか
二宮:ええ、自分大好きなもんで(笑)
川口:見た目と言えばタモさんがいちばん…髪型とか……
田森:だってさあメンバー皆坊主ってのもねえ!(場内爆笑)あと昔はシンバルの位置が高かったんだけど、だんだん普通に…スタジオに置いてあるまんまのセッティングに(笑)あ、これでもいいんじゃね?むしろこっちの方がいいんじゃね?と思うようになって。腰にもいいし(笑)

川口:吉野さん確かに倒れる前と後では見た目が……
吉野:うん、でもホントに…あ、死ぬんだなって思ったし。あたりまえなんだけど、人間死ぬんだし。アメリカでの事故の時にも思ったけど……。そうそう、俺が倒れる前後のところ、普通こういうとこあったら使うでしょ、大げさにって言うか…でもそういうことをしてなかったのが、うん、よかったな

(2003年アメリカツアーでの事故について)
吉野:「あ〜今日も移動長いなあ、たっりぃなあ〜」って乗ってたら、もうずーっとなんもないまっすぐな長〜い道で急にガクンって。で、ガガガガガって…あれ?あれれ?って言う間に。で、田森が…田森が運転してたんだけど「あ、ダメだ」って
田森:言ってねえよ(即答)
吉野:言ったよ。で、「ああ、運転してるひとがそう言うんならもうダメなんだ」って
田森:だから言ってないって!
吉野:言ったよ!
田森:「あ、ハンドルが利かねえ」とは言ったよ。「ダメだ」とは言ってないって!
吉野:いや言った。言ったよう!
川口:まあまあ、まあまあまあ
二宮:こうやってね、7年間ずーっと揉めてるんですよ(爆笑)

質問:エフェクターは何を使ってるんですか?歪(ゆが)ませる時の…
吉野:歪(ゆが)ませるじゃなくて歪(ひず)ませる、ね(笑)歪(ゆが)んだら困る(笑)えーと○○(失念)かな?あとビッグマフ。あんまりエフェクター使うの好きじゃないの
(これちょっと意外だった。効果的なところに効果的に使ってるってことかー)

質問:この前倒れた時と、アメリカでの事故のどっちが「死ぬかも知れない」と思った度が高かったですか?(おいおい笑)
吉野:あ、それはこの間の。ほんっとうに苦しくて、救急車呼んだしね。事故の時はあれっ?と言う間にひっくり返ったから

質問:ライヴの時、吉野さんの後ろに置いてあるおうちはティッシュ箱入れなんですか?(笑)
吉野:あれはファンの方がくれて。組み立て式だったの、手紙と一緒に。で、なんだこりゃって組み立てたらおうちになってー。で、それ以来ずっと飾ってて。そのうちいろいろごちゃごちゃと…って、俺が置いてんだけど。で、今ティッシュ箱隠しみたいになってる(笑)。あとそういえばアメリカでお面買ったんだよね、でもそれ家に置いてもな〜んか馴染まなくて。もう捨てちゃおうかって

質問:これ以前の、昔の映像ドキュメントを出す予定は?
川口:機会があれば…前回Vapから出した時は自分が撮ってない素材も合わせて編集したので、またそういう素材を提供してもらえれば自分がまとめてみたいですね。今回ライヴメインにやって、オフショットが少なかったので今度はそっちを多めに、とか
吉野:全編オフショットとかね(笑)

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さて本編ですが、上映されたのはDVDのDisc1に当たるライヴドキュメンタリーです。若干内容も違うとのこと。まだDVD観てないのでどう違うかは判りませんが、すごーく映画ー!て感じでしたよ。ライヴ、メンバーのオフショット、ライヴに来ているひとたちのコメントで構成。いやもうライヴシーンでは泣いた泣いた…いやー映画館で観られてよかった……。エンドロール前にバンド名とタイトルがバン!と出る編集も格好いい。

川口監督は、今冬bloodthirsty butchersの映画も公開になるので観てみようかな。今年はシアターNづいてるなあ。と言うか川口監督って『77BOADRUM』がデビュー作なのか。ええ、これはちょっとすごいんじゃないの…注目しておこう。

トークで言われていたようにオフショットは少なめですが、短いシーンを効果的に入れ込んでいました。トークで吉野さんが仰ってましたが、吉野さんが倒れる前後の流れが控えめでしかし伝えることはしっかり伝えていて、その“語らない”場面こそが何よりも雄弁だったように思います。倒れるちょっと前の千葉での楽屋の様子、その後退院してから荻窪の街を歩く様子。その後ろ姿。そしてアメリカでの事故の様子。映像を見たのは初めてだったのでショックだった。よくこの状態で、軽傷者だけで済んだなあ……。この2年後に同じくアメリカツアー中の交通事故で亡くなったチャイナさんのことも思い出した。うっかり死ぬことは判っている。意外とひとは死なない。でも簡単に死ぬ。その違いは何なんだろう。それが判れば悩むこともないのにね。でも生きている限り、悩まない訳にはいかないのだろう。

そうやってバンドは今日も進む。ドッコイ生キテル街ノ中。

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■この日は結構忙しかったのだ(当社比)
イースタンの整理券を朝から取りに行って、ポール&ジョーのねこリップを買いに行き(予約がすぐなくなりあとは8/6の一般発売先着順と言われたので)、MIOさんに整理券渡して、一旦帰宅して片付けやらして、UNIT→シアターN、と言う一日。流石に電池が切れて土日は寝たきり。完全に夏バテだ。参った。



2010年08月01日(日)
『FUJI ROCK FESTIVAL '10』3日目

宿が越後湯沢なので、会場迄バスで40分かかります。その前に、バスに乗る迄の行列待ち時間が何度来ても読み切れない…今回も余裕に余裕を持って出発したつもりが、バス待ちでかなり時間を喰い結局遅刻。ガーン。てかOCSが昼過ぎって早い、早いよ(泣)。

■OCEAN COLOUR SCENE(GREEN STAGE)
と言う訳で最後の4曲(…)。でも「Hundred Mile High City」(クラドックさんイントロのギターじらすじらす)「The Day We Caught the Train」(唄った唄ったシンガローング)は聴けた、わーい。サイモンは目の醒めるような赤、クラドックさんは綺麗な空色のポロを着ててうわーんどモッズー!格好いいー!しかし今年出たアルバム『Saturday』の曲がもう、どれも素晴らしかったのでライヴで聴きたかった……て言うか単独公演お願いしますよおおお(泣)たのむよ!フェスのOCSもいいけど単独で存分に聴きたい…おねがい……。
あ、そういえばこれかわいかった(笑)→・RO69『プレスエリアにて、オーシャン・カラー・シーン』

しばらくのんびりしようと決めていたので奥地を目指す。木道亭では世武裕子さんが演奏中。ちらっと聴いただけだけどなんだかすごく印象に残った。声も曲も、歌詞も。ちらっとしか聴いてないのにほろり。

ドッグランでSMASH日高さんのどん吉(しばいぬ。ちょーかわいい)を観たりドラムサークルを見物したり(ここのひとたち三日間下に降りないでずっと演奏してそう)散歩したりダラダラしたりして、今年はハバナ仕様になっているテントへ。ここはドリンクをグラスで出してくれるんだよー。

■東京パノラママンボボーイズ(CABARET FIESTA)
なんかここでいちばんはっちゃけた気がする……久し振りに観たよーウッ!うっかりぐいぐい前に行ってしまい携帯持ってないのにつれとはぐれる。まあテントだから終われば会えるかなと…すみません……。コモエスタ八重樫さん(相変わらず格好いい)がミイラDJ言われててウケる、いくつなんだっけか…しかし皆さん変わらないねえ。辺境エリアでやってるだけに無礼講でかなりおかしいことになっており、あれとかあれとか(笑)。途中巡回中のおまわりさんが覗いて行ったそうでヒヤリとした(笑)。こっちからは見えないけど、ステージが入口向いているのでパラダイス山元さんはビビッたようですははは。
えーと、YouTubeで「フジ マンボ」で検索するといろいろ出てきます、気になる方はどうぞ。
山元さんとゴンザレス鈴木さんのボケツッコミも変わらず見事、楽しかったー。しかしちゃんと演奏してる山元さん久し振りに見た。最近餃子とかサンタでしか見てなかったから(笑)。ああマンボって楽しいなあ、ウッ!

と言う訳でのんびり下山です。アヴァロン、ところ天国に寄ってグリーンへ。

■BOOM BOOM SATELLITES(GREEN STAGE)
次のAFP待ちのお客さんも多かったようですが、後ろで観ていた分にはすげー盛り上がってて嬉しかったよう。
しかし中野くんの「俺の、俺の、俺の思い、受〜け〜取〜れ〜〜〜〜〜!!!!!」な気合いが凄まじい内容でした。まあそりゃそうだろう…グリーンで、しかもAFPの前ですからね……。肉肉肉!野菜なし!みたいな構成です。そして毎回のことだが仕込みも相当変えてきて、その仕込みもぎゅうぎゅうに詰め込んでる感じ、これも毎度のことで足し算。隙間がない。空間なんぞ使いません。みたいな。ここらへん、後にマッシヴを観た時に思い出されてすごく興味深く感じました。野外の広いところで、遠く迄音を届かせる方法論の違いみたいな。
濃密さはすごいんですが、ずっと濃いので単調に聴こえたのが惜しい。あの、緩急がないの。ずっとクライマックスなの。一曲やったらもう使い切りました、終わりですみたいなたたみかけっぷりなの。唯一「Stay」がホッとするところの筈なんだが、そこの緊迫感もすごかったなあ…ブレイクになってない(笑)。中盤でもう後ろのひとが「え、まだやるの?」と言った時には苦笑した…一曲一曲はいいんだよ……。川島さんの声すごいよく出てたし。構成をこう…曲順をこう……よけいなおせわですかそうですか。いやでもそういう生真面目と言うか一途なところも好きなんですけどね。
しかしいちばんの破壊力だったのは妖怪の衣裳だな。に、似合ってるんだけど、その………。
どれだけ私たちが笑ったかは(ひどい)、画像探して察してください。私は「特撮戦隊ものみたいだ」と言い、MIOさんは「K-POPのアイドル」と言った。そしてある意味森ガールに見えなくもない(この森ガールと言うキーワードは後にも延々使われることになる)。それが似合っているのでどうしたものかと…そして絶対あれ本人のチョイスだよね……。あの、このひとたち無駄にルックスがいいのでなんか困っちゃうよね(笑)。
「ひとみしり」の旗を持った外国人が走り回っているのも爆笑ポイントでした。ひとみしりってブンブンのことか!ピッタリだ!と思ったけど、このひとその後のステージでも見たしあらゆるところで目撃されているようなので、単に面白いひとのようだった。

■ATOMS FOR PEACE(GREEN STAGE)
なんて言うか……聴いたことがない音にすら感じました。絶句。トムのソロアルバム『The Eraser』とレディオヘッドのナンバーから主に構成されているので、何度も聴いている曲も多いんだけど…しかも『The Eraser』パートは曲順も同じなのだ。なのに音源とは全く違って聴こえる。
とてつもなく美しい、なのに原始的、そして有機的。踊り狂いましたがその一方で耳が澄んだと言うか研ぎ澄まされたと言うか、一音も聴き逃せない!と言ったこちらの欲望も全開、みたいな。そしてそういう時に限って猛烈に具合が悪くなり途中抜け。最悪。身体は動かなくなりましたが耳では必死に聴いていました。なんとか全曲聴けた。
なんだろう…美しいメロディ、声とそれらを反響させるような音作りはトム。リズム、グルーヴはフリー。でもそれだけじゃなくて…ナイジェル・ゴドリッチやジョーイ・ワロンカー、マウロ・レフォスコの役割も各々ポイントなんだろうけど……ああわからないよー。必死ではあったがもはや朦朧としていたので、もうわからない。あああ、悔やまれる…多分もう観られないもの。でも仕方がない、一期一会。いやでも朦朧としてなくてもわからなかったかもな…謎だ。
とにかくすごかった、と言うことです。モンスターがおったで。音源化の予定はないんだろうか…このメンバーでレコーディングすることはないかなあ……。とは思うものの、ライヴでの効力がすごいバンドのよう気もしました。
現在こちらで4月のライヴ音源がフル公開されています。しばらくこれ聴いていろいろ考えよう……。
・[Tuesday Pickup] Atoms For Peace (Thom Yorke) - Live at the Fox Theater Oakland, CA 4/15/10
フリーはベースの他にもピアニカを弾いたりとプレイヤーに徹していて格好よかった。RHCPだと他にもいろいろやることあるからね。そうだよ、フリーってミュージシャンシップ溢れるひとだよ。こういうフリーが観られたと言うのも嬉しかったし、こういう場をフリーが持てたこともなんだか嬉しいことだった。服も着てたしね(笑)メッシュの赤いタンクトップ。
そう服と言えばトムの格好…グラストの時の画像見ていたので覚悟はしていたがやはり衝撃的だった。ロン毛、無精髭、タンクトップ、ヘアバンド。…わからない……意味がわからない。ヒッピースタイル?いやいっそ森ガール(ガールちがう)?やっぱ流行ってるの森?なんだかわからないことだらけでした。しかしすごいライヴだったと言うことは確か。
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セットリスト
---(The Eraserパート)
01. The Eraser
02. Analyse
03. The Clock
04. Black Swan
05. Skip Divided
06. Atoms For Peace
07. And It Rained All Night
08. Harrowdown Hill
09. Cymbal Rush
---(トムのソロパート)
10. I Might Be Wrong(レディオヘッド)
11. Give Up The Ghost
12. Videotape(レディオヘッド)
---(AFPオリジナルかな、それとも今後レディオヘッドでレコーディングされるのか?パート)
13. Paperbag Writer(レディオヘッド)
14. Judge, Jury and Executioner
15. Hollow Earth
16. Feeling Pulled Apart By Horses
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離脱したためここからは単独行動。ただ立ってるだけ、の方がつらいのでマッシヴ前にホワイト迄ゆっくり歩いて行き、IAN BROWNを観る。そういえばLCD Soundsystemも観たかったんだよなあ…3日目いろいろ被り過ぎ(泣)。イアンは観る度いい感じに歳をとっていってて、ああこんな格好いい大人になりたいものだと思う。

夜のところ天国はとても綺麗。昨年ここの川が豪雨で大変なことになったので、橋が補強されて位置も高くなっている。森に映る星粒状の光を橋の上から観てほろり。

■MASSIVE ATTACK(GREEN STAGE)
隙間があったのでついつい二列目迄行ってしまう。身体もなんとか復調、おとなしく観ようと思ったが始まるとなんだかんだで踊り倒す。途中から雨が激しくなり、合羽のフードを被ってひたすら踊って手を挙げて泣いたり笑ったりする。いろいろ人生を振り返る(笑)。
いやしかしグリーンのトリで観るマッシヴの風格と言ったら…てかこういう場にこそってな感じで……なんでこうフェスの最後にダウーンな気持ちにならんといかんのかと思いつつ(その後のシザシスはクロージングにふさわしい盛り上がるアクトだったそうですね)、しかしこのシチュエーション…野外、夜、雨!にぴったりで、これはなにものにも代え難いわと思いました。
しかもこれが、今の自分の気分にもぴったりだったのだ。落ちる落ちる。デルナジャ有難う。
マッシヴは遠い国でのライヴでもちゃんとゲストヴォーカリストを連れてきてくれるので嬉しい。「Teardrop」はエリザベス・フレイザーではなくマルティナ・トップリー・バードが唄いましたが('06のサマソニにはリズ来たんだよね)、これがまたよかった。「Teardrop」、アレンジもかなり変わっていた。こういうのもいいな。そしてホレス・アンディの「Angel」!アンコールで「Unfinished Sympathy」を唄ったひとは誰か判らなかったけど(音源とは違うひとだと思う)、これのヴォーカルがまた素晴らしかった。
で、ブンブンのことを思い出した訳ですが、マッシヴの場合低音、音圧がとにかく強力。太い!でも“鳴り”を届かせる迄の“間”がハッキリあるのです。空間使いが絶妙。
デルナジャは『パトロール』と書かれた腕章をしていた。どこで見付けてきたんだろう。デルナジャは世界をパトロール中、ステージ上からメッセージを投げかける。引用、提示、虚報、あなたはどう判断しますか?日本の時事問題についての言葉がメッセージボードに連発された時は、フジに着いてから外の情報を一切入れていなかった身には強烈に響きました。周りのひともそうだったようで、『管(字間違ってた・笑)首相辞任』とテロップが出た時にはどよめきが起こり、その場で携帯を開いてニュースを検索し始めるひともいた。
「Atlas Air」もアレンジ結構違ってて、すごくライヴ映えした。これが幕切れ。
強烈でした。今でもボディブローのように残っている。なんだか音の空襲に遭ったような気分だった。そりゃ人生も振り返りますよ。あーつらかったなあ…でももういいんだ、これでいいんだ。
デルナジャもダディーGも雨に打たれて聴いているオーディエンスを気遣うような様子を見せていた。あー有難う。
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セットリスト
01. United Snakes
02. Babel
03. Risingson
04. Girl I Love You
05. Future Proof
06. Invade Me
07. Teardrop
08. Mezzanine
09. Angel
10. Safe From Harm
11. Inertia Creeps
encore
12. Splitting The Atom
13. Unfinished Sympathy
14. Atlas Air
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と言う訳で合流して早めに下山、越後湯沢で夕食。例年ここに辿り着くのは夜中なので、駅周辺のお店に入ったのは初めて。おいしいとこでした、また行きたいな。疲れと緊張が解けたことといろいろ弱っていた+抜けていたので、チーズフォンデュで泥酔する。おつかれさまでした。

■小ネタ
・マッシヴの時関係者エリアでフリーが観てた(トムもいたらしいが気付かなかった)。帰っていく時に気付いたので一瞬だったけど、瞳の色がわかるくらい近くだった。本当に綺麗なブルーアイだった、そして穏やかな表情。フリーのこういう面を間近で見られたこと、きっとずっと憶えていると思う
・ブラーのcoffee&TVの牛乳パックを帽子につけてる子がいたよ。かわいい!こんなグッズない筈だし、手作りだよね
・具合わるかったのでせっかくのフジなのにいろいろ食べられなかったのが残念。でもあのちゃんとその場でにぎってくれるおにぎりと豚汁のお店はやっぱりおいしかった。クロワッサンソフトは通りかかるといつも売り切れ。わーん
・そういえば朝霧シチューに丼版が出来てたな。今年から?それとも去年から?(去年行ってないので)
・しかし今回はホント反動と言うかダメージが大きく、一週間経った今でも具合が悪い。おかげでサマソニはキャンセルしました…うーん、これから歳とって行けばこんなことは増える一方だろうから、いろいろ対策を考えねばなりませんな
・でも今年は比較的過ごしやすかったように思います。個人的には雨より日差しに弱いので