doo-bop days
ブーツィラの音楽雑記



 マイ・ベスト・アルバム2007

音楽雑誌、ブログなどで年末恒例の年間ベスト・アルバム。今年も懲りずに挙げておこう。

対象は、私が購入した2007年発売の音楽作品。部門は新作と、リイシュー/発掘音源・映像の2つ。それぞれ10作品を上限として特に良かった作品を挙げた。新作、リイシュー/発掘音源・映像ともに順不同。海外盤では2006年以前に発売済みながら、日本盤・直輸入国内盤としては2007年発売の作品も選考対象に含めた。

新作
ジョー・ヘンリーの『Civilians』
2007年のロックの新作における、おそらく最良のアメリカン・ルーツ・ミュージック。ソングライターの実力としてランディ・ニューマンなどの先達が引き合いに出されるのも納得させられる。枯れたヴォーカルの味わいも格別。

ティナリウェンの『アマン・イマン 〜 水こそ命  Aman Iman: Water Is Life』
サハラ砂漠の遊牧民のバンドによる、“砂漠のブルース”と形容されるレベル・ミュージック。絶賛された前作を超える傑作。サウンド・プロダクツも緻密に練られたもので、さらなる大衆性を獲得した。

トゥーマスト(Toumast)の『Ishumar イシュマール 〜機関銃の代わりにギターを〜
ティナリウェン同様、サハラ砂漠の遊牧民のバンドで、“砂漠のブルース”と形容されるレベル・ミュージック。ただし、こちらは、在仏トゥアレグ人の元ゲリラ兵&砂漠のギター・ヒーローでもあったリーダーのムーサ・アグ・ケイナが、フランスで出会ったミュージシャンたちと結成したバンド。サウンドから垣間見える反骨精神の強度では、ティナリウェンを凌ぐかも。海外盤は2006年発売。

オーケストラ・バオバブ(Orchestra Baobab)の『Made In Dakar メイド・イン・ダカール
1970年に結成されたセネガルの伝説的アフロ・キューバン・バンドが再結成アルバムから約5年ぶりに発表した、過去の作品の再演が中心のアルバム。陽気でご機嫌な曲が多く、アフロ・キューバンを土台とした多彩で幅広い音楽性に溢れている。

アブダル・マリック(Abd Al Malik)の『ジブラルタル Gibraltar』
フランス在住コンゴ系移民2世による2ndアルバム。ポエトリー・リーディング・スタイルの知性的なラップと切迫感を伴った真摯なサウンドが胸に響く。海外盤は2006年発売。

ティケン・ジャー・ファコリー(Tiken Jah Fakoly)の『The African』
西アフリカのコートジボワール出身のティケン・ジャー・ファコリーによる、アフリカン・ルーツ・レゲエの会心作。銃を持った男連中がずらりと居並ぶ戦闘的なジャケット写真に怖気づくが、音楽的にはポップで軽やかでさえある。

バルカン・ビート・ボックス(Balkan Beat Box)の『Nu Med』
ニューヨークの多国籍ミクスチャー・バルカン・ビート・バンドの2ndアルバム。バルカン/北アフリカ音楽の伝統的な諸要素に、ヒップホップ/ブレイクビーツ等の現代性を交配したごった煮サウンドが刺激的で生々しい。

Various Artistの『Gnawa Home songs グナーワ・ホーム・ソングス
グナワ
の聖地モロッコのタメスロットで録音された、グナワの名人たちの共演集。儀式における祈りのような歌とチャント。それらに手拍子とゲンブリ(ベースっぽい音の3弦楽器)、カルカベ(鉄製カスタネット)などが加わって織りなす地味なトランス・ミュージックに、「音楽の根源にあるもの」を感じる。

バセク・クヤーテ&ンゴーニ・バ(Bassekou Kouyate & Ngoni Ba)の『Segu Blue』
西アフリカの音楽大国マリのグリオ(世襲制の職業音楽家, 口承伝承人)の家系出身で、グリオの伝統的な弦楽器であるンゴーニ奏者のバセク・クヤーテが、グリオの語り継ぐ口承伝承などを、マリ初の試みとされるンゴーニのカルテット編成によって取り上げた意欲作。ンゴーニの絡みを中心としたアンサンブルに、グリオの伝統的なヴォーカルや手拍子、パーカッション、バラフォンなどが加わった穏やかなグルーヴと素朴なサウンドが心地よい。「BBC Radio 3 Awards for World Music 2008」のアルバム・オブ・ザ・イヤー受賞。

マシュー・ディアーMatthew Dear a.k.a. Audion)の『Asa Breed』
デトロイトのクリック/ミニマル・ハウス・アーティストによる本人名義の3rdアルバム。ダークで変態チックなエレクトロ・ポップ風の小品で構成された異色&意欲作。マシュー・ディアー本人による高橋幸宏っぽいヴォーカル入り。
本作を選ぶか、それともフリー/インプロ系ピアノ・トリオのTrio M(Myra Melford, Mark Dresser, Matt Wilson)の『Big Picture』 or クリック/ミニマル・ハウスの最先端を行くリカルド・ヴィラロボス(Ricardo Villalobos)のミックスCD『Fabric 36』にするかで、最後の最後まで迷った。

リイシュー/発掘音源&映像
アレサ・フランクリンの『Rare & Unreleased Recordings From The Golden Reign Of The Queen Of Soul』
“ソウルの女王”がアトランティック時代の1966年から1973年に録音したレア&未発表トラック集。2枚組CD。10月下旬にディスク1の最初の3曲を何の予備知識もなく聴いてぶっ飛び、アレサ熱が何年かぶりに再燃。最近までアトランティック時代のオリジナル・アルバムを中心に聴き直していた。レア&未発表トラック集ながら、重要性ではオリジナル・アルバムに引けを取らない傑作。

フランコ&TPOKジャズの『黄金の20周年 20eme Anniversaire 6 juin 1956−6 juin 1976』
アフリカ音楽最大の巨人、フランコ(1938−1989)率いるT.P.O.K. Jazzの代表作。陽気でまろやかなサウンドと同じフレーズの執拗な反復のある長尺曲ばかりで、当初は聴き進むにつれ苦痛すら覚えるほどだったが、某サイトで詳細なレビューを読ませてもらったおかげか、3回目くらいに聴いた時から何もかもすんなりと受け入れることができた。フランコ絶頂期の1976年にT.P.O.K. Jazz結成20周年記念盤として発表された2枚組LPの復刻盤2CD。

サン・ラ『Disco 3000 Complete Milan Concert 1978』
1978年1月23日のイタリア・ミラノでのライヴを収録したアルバム『Disco 3000』の初CD化&未発表音源を追加したほぼ完全版。約130分収録の2枚組CD。白眉は、チープなリズム・ボックスによるループの渦に、サン・ラのアブストラクトでノイジーなシンセ・ソロが炸裂するナンバーで、ぶっ飛び度が異常に高い。

クラスター(Cluster)の『Sowiesoso ゾヴィゾーゾー
ハンス・ヨアヒム・ローデリウスとディーター・メビウスによるジャーマン電子音楽デュオ、クラスター(Cluster)の代表作の一つ。1976年にコニー・プランクのプロデュースで発表された4thアルバムの、世界初となる音源完全収録版によるリマスター復刻CD(紙ジャケット仕様)。過去のCDではイントロが1分近くも欠損しているトラック1と短縮されていたトラック3を、オリジナルLPに準じて完全収録しているのが選出の決め手。さらに、かつてのCDでは裏ジャケットの一部を拡大して表ジャケットに使用していたが、この復刻CDは初のオリジナル・ジャケット仕様であるのも嬉しい。Captain Trip Recordsから1,000枚限定プレスで発売。

ダイナソーLの『24→24 Music』
アーサー・ラッセル(1951−1992)とウィリアム・ソロコフによるプロジェクト、Dinosaur Lが1981年に発表したアルバムの初CD化。突拍子のないヴォーカルをフィーチャーするなど、アーサー・ラッセルの特異な感性、音の選び方の変態センスなどが窺えるNYアンダーグラウンドのニューウェーヴ・ディスコ作品。オリジナルLP未収録のミックスによる4曲追加。

伊福部 昭の『伊福部 昭 映画音楽の世界』
伊福部先生の映画音楽の2枚組CD決定版ベスト。「作曲者自身が生前にセレクトした作品を中心に、製作会社の垣根を越えた代表的作品を収録」。

松村禎三の『松村禎三の世界』
タワーレコード・オリジナル企画による作曲家・松村禎三編。私が初めて買った松村禎三氏の作品。2枚組CDで1,500円という破格の安さながら、内容は文句なし。日本人としての民族性に立脚したアジア的で独自の音世界に、初めて聴いた時にはただ圧倒されるばかりで、日本のクラシック作曲家の実力のほどを思い知らされた。2007年8月6日、肺炎のため78歳で逝去。亡くなる約5か月前、東京・赤坂のサントリーホール大ホールで行われた「伊福部昭音楽祭」において、車椅子姿の松村禎三氏を何度か見かけたのが最初で最後となってしまった。

山鹿良之の『肥後の琵琶弾き 山鹿良之の世界 〜語りと神事〜 RITES and TALES with BIWA Yamashika Yoshiyuki, Blind Musician of Kyushu』
肥後琵琶の貴重な音源を3枚のCDに収録した後世に遺る作品。琵琶盲僧・永田法順師の6枚組CD(+DVD)のように日常的に繰り返し聴く作品とはなっていないものの、音源の史料価値が非常に高いゆえ選出。よくぞ発売してくれたとさえ思う。平成19年度 第62回 文化庁芸術祭優秀賞受賞。

お鯉さんの『お鯉 -okoi- 唄声は時代(とき)を超えて』
百歳の元芸妓(げいぎ=芸者)で、唄と三味線の名人であるお鯉さんこと多田小餘綾(ただ・こゆるぎ)さんの百寿記念の自主制作CD(プレス盤)。お鯉さん40代後半から99歳の時の録音で、端唄、小唄、長唄、阿波の民謡を収録したベスト盤的アルバム。なかでも91歳、99歳という大変なご高齢でありながら、艶やかな美声と正確な爪(つま)弾きを披露するお鯉さんには感服するしかない。

小林ハルさんのDVD『小林ハル 〜渾身の熱唱〜』
1980年代にBSN新潟放送が撮影した瞽女唄(ごぜうた)を演ずる小林ハルさんの映像でつづる瞽女唄集。小林ハルさんが瞽女としてはすでに引退し、養護盲老人ホームに入所してからのもので、生きるために歌い続けた小林ハルさんの歌声の魅力・凄味は、終生減じることがなかったと再認識させられる。高田瞽女の杉本シズさんと難波コトミさんによる「葛の葉子別れ」(トラック3の前半)をカットせずに収録した配慮も実にありがたい。

2007年12月31日(月)
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