doo-bop days
ブーツィラの音楽雑記



 笠置シヅ子 / 買物ブギー

笠置シヅ子(1914−85)の歌声は、テレビなどで断片的ながら聴いたことのある「東京ブギウギ」(1947年録音)でのものしか知らなかった。そんな私が初めて聴いた笠置シヅ子のアルバムは、1939〜51年録音の17曲を収録したCD『買物ブギー ‐ SP盤復刻による懐かしのメロディ』(1998年発売, 左の画像)である。

1曲目の「ラッパと娘」(1939年録音)での笠置シヅ子のスウィンギーでパンチのある歌声にいきなりブッ飛んだのを皮切りに、笠置シヅ子の曲のほとんどを手掛けた作曲/編曲家・服部良一(1907−93)の和“中”折衷のセンスが鮮烈な「ホット・チャイナ」(1940年録音)、「ウゥゥワァァァーオ、ワオォォワオォォォー」と獣の如く吠える「ジャングル・ブギー」(1948年録音, 作詞: 映画監督の黒沢明)、コール&レスポンスでの黒いフィーリングを湛えた絶叫が印象的な「オールマン・リバップ」(1951年録音)を始めとして、収録曲の多くにショックを受けた。
なかでも、大阪弁によるコミカルな歌詞で言葉数の多い奇抜な難曲「買物ブギー」(1950年録音ヴァージョン, 作詞/作曲/編曲: 服部良一)を、速いテンポで完璧に歌いきる笠置シヅ子の技量とリズム感には特に驚かされたものだ。

「ブギの女王」であるばかりか、“日本最高峰の女性ジャズ・シンガー”で、“和製オリジナル・ラッパー”でもある笠置シヅ子。「東京ブギウギ」(1947年録音)の大ヒットで知られ、“戦後まもない頃に一世を風靡した懐メロ歌手”などといった笠置シヅ子への先入観ゆえ、ある世代以下、特に若い音楽ファンには見向きもされない、もしくは敬遠されがちであるならば残念至極である。

服部良一の3枚組CD『僕の音楽人生』(左, 1988年)と、笠置シヅ子の3枚組CD『ブギの女王』(右, 1988年, 廃盤)笠置シヅ子の現時点での決定版CDは、全吹き込み曲のほぼ全てを収録した3枚組『ブギの女王 - 日本のポップスの先駆者たち』(左の画像の右側, 1989年, 全53曲, 日本コロムビア, 72CA-2894→96, 廃盤)だろう。4曲が未収録であるのは、付属のブックレットによると、音源となるレコードが入手出来なかったためらしい。

日本ポピュラー音楽史に永遠と刻まれた不朽の傑作「買物ブギー」(1950年録音)は、1977年発売の復刻シングルを最後にオリジナルそのままの歌詞は聴けなくなっている。理由は、聴覚障害者への差別語が1ヵ所あるためらしい。それ以降発売された「買物ブギー」では、エンディング近くにある問題の歌詞が1ヵ所カットされているそうだが、本作『ブギの女王 - 日本のポップスの先駆者たち』(3CD)でも、「買物ブギー」のカット箇所のないオリジナルの歌詞は聴けない。
その一方で、「ボン・ボレロ」と「タンゴ物語」では、2004年現在における別の差別語がそれぞれ1ヵ所あるが、この3枚組CD『ブギの女王 - 日本のポップスの先駆者たち』(廃盤)では、両曲ともカットなしのオリジナルの歌詞で聴ける。

【関連】笠置シヅ子「買物ブギー」の完全版(『doo-bop days』2007年08月13日)

2004年12月03日(金)
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