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2026年10月30日(金) ■
麿赤兒×エリック=マリア・クテュリエ『Alter Ego』

麿赤兒×エリック=マリア・クテュリエ『Alter Ego』@シアタートラム

す、す、すげえよがっだ 麿赤兒がエリック=マリア・クテュリエの奏でるチェロでバッハををどる。獅子の咆哮も仔猫の欠伸も恥じらいの少女も神話に出てくるバカ(©︎動物のお医者さん)も、生も死も愛も全部麿さんよ! あと2公演、完売だけど当日券出すそうなので気になる方は是非に〜 『Alter Ego』

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— kai (@flower-lens.bsky.social) 1:04 · Oct 31, 2026

幕切れの瞬間、客席のあちこちから呻きともため息ともつかぬ感嘆の声があちこちから漏れていた。私と私の真後ろのおじさんは同時に「おぉ……」といってしまい、終演後笑顔で会釈などした。

出会いは麿さん×フランソワ・シェニョー『ゴールドシャワー』のパリ公演、打ち上げの席。ずっと俺を見ている奴がいる……お前は誰だ! かくして意気投合。近年はフランスのアーティストとのコラボが盛んな麿さん、海外公演にも積極的。

初演は2024年、麿さんとクテュリエさんふたりのクリエイション。今年春に大駱駝艦の拠点・壺中天での小公演を経て、今回は大駱駝艦から4人の女性ダンサー(鋳態。高桑晶子、鉾久奈緒美、梁鐘譽、谷口美咲子)が参加。彼女たちは麿さんに寄り添い、翻弄し、そして連帯し別れていく。麿さんいうところの「骨が軋み、皺の数が増え」た老体と比するようにしなやかにをどる。騎馬ダンスや四股といった、大きく脚を開いて踏み締める所作の力強さと優雅さ。そして声! 大駱駝艦独特(だろうか……他のダンス公演では聴いたことがないのだが)の、呼吸音や破裂音でタイミングを合わせるサインの声だけでなく、歌といえばいいのか……チェロのボウイングに合わせ、美しいロングトーンを聴かせる。まるでクワイアのよう。皆さんピッチがブレないのもすごい。大駱駝艦関連でここ迄声を使ったものは初めて観た(聴いた)。

ステージには鏡面の薄いプレートがシンメトリーに吊るされている。鋳態はその鏡を覗き込み、背面に隠れ、プレートを揺らす。鏡に光が当たり、その反射光は劇場壁面と舞台後方に映り込む。シアタートラムの天井の高さが効果的に使われ、光は水面にも木漏れ日にも姿を変える(照明:岩村原太)。後方中央に椅子に座ったクテュリエさんは、J.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲」を軸とした曲の数々を70分ぶっ続けで演奏する。出演者中、唯一開幕から終幕迄舞台上にいる。アフタートークで開口一番「指が痛い」と仰っていたが然もありなん。劇伴の要素もあるこの演奏、自分のペースでは弾けない。これは通常のコンサートで聴けるものではない。

麿さんは前半は白、後半は青のドレス。このドレスには見覚えがある。終演後クレジットを見ると衣裳:堂本教子の名が。長年麿さんと大駱駝艦の衣裳を手がけ、2023年に亡くなった堂本さんの衣裳をまた目にすることが出来るとは(もうひとりの衣裳は富永美夏)。逆立った白髪のウィッグは他の公演でもよく着けているものだが、今回はネコ科を思わせるその仕草から、冒頭書いたように獅子の鬣にも、長毛の猫にも見える。顔を洗い、鏡のなかの己を覗き込む様は水面を見つめるナルシスのよう。演奏するクテュリエさんにグッと迫り、背後にまわって距離をつめ、鋳態に囲まれ、戯れ、撃たれて斃れ、そして復活する。“Alter Ego”は自己にも、他者にも現れる。覗き込む鏡に、水面に、舞踏手/演奏者に。

女性鋳態の白いドレスは背中が大きく開いており、背筋をはじめ鍛えられた身体の線を美しく見せるものだった。一方麿さんのそれは老体だが、白塗りされた胸元や裾から覗く脛には幼児のようなあどけなさも感じた。それにしても、ゆったりしたものであっても何度も屈み、頽れ、床を転がり立ち上がる下半身の強さに瞠目。私も膝が痛いとかいってる場合ではない。

それぞれの身体、それぞれの器官、全てが違って全てが自分にしかないもの。“Alter Ego”はその身体に潜む。これぞ天賦典式。

麿さんは現在83歳。もう30年くらい観ていることになるが、それでも50代の麿さんから、だ。ときどき30代くらいの、「骨が軋み、皺の数が増え」ていない頃の麿さんはどうをどっていたのだろう、観たかったな、と思う。今回は年齢の違うパフォーマーとガッツリ組んだものだったため、尚更そう感じたのかもしれない。しかし80代の冒険を目撃出来ることは、本当に幸せなことなのだ。「舞踏とは命がけで突っ立った死体である」……師・土方巽の言葉を着々と実演する麿さんのこれからも目撃していきたい。

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衣裳のまま、赤い鼻緒の下駄履きで出てきて麿さんとクテュリエさんでアフタートーク。トークになると気風のいいおっちゃんになる麿さん、ギャップがすごい。「ハイッ、こんな感じでねっ」「エリックはこんなに優しい、道端のちっちゃな花をスマホで接写してたりするひとなんですけど全身タトゥーでビッシリなんですよ!」「(4人の女性ダンサーについて)もうしあわせなリア王みたいな気分でしたね! みんなコーデリア、みんなやさしい! 意地悪なひとひとりもいない!」「23キロのスーツケースもスッと持ってってくれる! ワタシすることない、ついていくだけ、女性は強いッ」。ウケる……。「普段は振付が先で、絵が浮かんでからそれに合う音をつけるので今回は挑戦でしたねッ。もう音についていくばっかりッ」。

通訳を聴いているクテュリエさん、いやいやと首を振る。「私がクラシックとして演奏してきたバッハは麿さんがをどることで違うものになる。私の知らないバッハが聴こえてくるのでこちらも挑戦」「4人の女性ダンサーが加わったことで、またケミストリーがあった。迫ってこられると圧倒されて演奏を間違えそうになった」等々。

通訳の平野暁人さんがまた面白いひとで、クテュリエさんからの賛辞を受けた麿さんが照れもあったのか返答に詰まってしまったとき「もうっ、黙っちゃったじゃない」とボソッといったひとりごとがマイクを通して客席にも聴こえてしまい大ウケ。楽しく興味深いアフタートークでした。参加出来てよかった。