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2022年04月08日(金)
『アネット』舞台挨拶+こまごま

レオス・カラックスは、いつの間にやら来日し、いつの間にやら帰っていきました。公開週に入って舞台挨拶が発表されたときは驚いた。出入国の条件が緩和されたタイミングとはいえ、このご時世よく来てくれた…有難う有難う……。桜の季節に来日したのは初めてだったそうです(後述リンク)。少しでも異国の春を楽しめたならうれしい。

滞在期間中めちゃめちゃ働いたようで、取材を受け、企画展を開催しているアニエス・ベーや蔦屋書店に出向き、試写会にサプライズ登壇し、遭遇したファンにも都度サインしていたようです(「会った」「サインもらった」ってツイートの多いこと!)。舞台挨拶は初日にユーロスペース、二日目に川崎、有楽町、池袋の三会場。アイドル並みのスケジュール。

そんなカラックスの舞台挨拶を、有楽町で観覧しました。上映終了後、「たった今到着しました!」と呼び込まれて入場してきたカラックス。壇上に上がってからゆったりコートを脱ぎ、ペットボトルのドリンク(「お〜いお茶」だったかと)を床に置き、椅子に深く座りました。タバコが吸えず口寂しかったのか、お茶、何度も飲んでた。左手でキャップ開けてました。

ティーチインの形式になっており、質問は事前にtwitterで募集しておいたものだったので段取りもよく、落ち着いて話が聞けてよかったです。司会は矢田部吉彦さん。印象的だったところをおぼえがき。記憶で起こしているのでそのままではありません。

・(「緑色」について)もともと大好きな色で、家のインテリアにも緑色のものが多くあるくらいなのですが、フィルム撮影だと理想の緑色にならなかったんです。照明の具合によって変に明るい色になってしまう。その後デジタル撮影に移行して、(『TOKYO!』の)「メルド」はうまくいきました。今回も大好きな緑色が撮れました
フィルムで緑色を撮るのは難しいんだな。この話を思い出しました。

(誤)思考錯誤→(正)試行錯誤。ちなみにチャヌクと組んだ撮影監督はチョン・ジョンフン、『新しき世界』の撮影も手がけている方です。
そういえば上映前『オールドボーイ』の予告編流れたわ。4Kリストアで映像が鮮明になったため、レーティングが上がってR18+になったそうで(微笑)

・自分は演技のプロでもないし、特別な技術を持った撮影監督でもありません。監督は何も持っていないので、ひととの出会いこそが大切
ひとと出会い、新しい技術を取り入れ、実験を繰り返す。こうしてカラックスは「大好きな映画」をずっと更新し続けている。
あと「自分は作曲出来ないので、好きじゃない音楽を持ってこられたらどうやって断るかを考えないといけない」っていってたのが面白かった

・(フランスを代表する映画監督として、映画界について思うところは)最初に覚えた言語は英語ですし、私にはいろんな血が入っている。フランス、アメリカ、ドイツ、ロシア……クォータークォータークォータークォーターなんですよ。ナショナリズムは稀薄です。フランスを意識して映画は撮っていませんし、背負っているという意識もありません

・(アダムとマリオンについて)アダムはTVシリーズの『GIRLS』で知ったのですが、とても変わった顔だと思いました。身体も大きく、とても変わっている。お猿さんみたいだと思いました。ドニ・ラヴァンもそうでした。以前飼っていたことがあるくらい、猿が大好きなんです。撮ってみたいと思いました。マリオンはクランクインの数ヶ月前にやっと決まりました。最初アメリカの俳優を探していたのですがうまくいかず、諦めかけていたときマリオンが現れました。素晴らしい仕事をしてくれました

・(「死んだらどうなると思いますか?」という質問に、満面の笑みで)Thank You.(笑)まず電気はないでしょうね。闇なのでしょう。死後の世界より死ぬ直前の方に興味があります
矢田部さんが「これ私が訊くんじゃないですからね、こういう質問があったからですよ」とすごい気遣っていた。それも全部通訳されていた(笑)。映画の内容に関して同じことを何度も訊かれていただろうし、こういう毛色の変わった質問が新鮮だったのかも

・(「気が早いかもしれませんが、次回作は?」という質問にも笑って)いつも間が空くので何もしてないと思われるかも知れないんですが、日々仕事をしているんですよ。『ホーリー・モーターズ』から『アネット』の間にも、出資者が見つからず頓挫した企画があります。その間に旅行したり、恋をしたり、読書をしたり、病気になったり。皆さんと同じです。構想を練ったり、資料を集めたり
そうね…観客は無責任に「次は何年後かしらねえ」なんて気軽にいっちゃうけど、映画をつくるのって本当にたいへん。お金のことをカラックスがいうと重みが違うわ……。「皆さんと同じです」といったのが印象的でした

和やかな雰囲気のなか、30分のティーチインは終了。通訳の方がすぐに退場され、壇上に取り残されたカラックス。コートに一度袖を通したのですが、また脱いで手に持ち、お茶を取り、えっとどうしよう、みたいにモタモタしてた(失礼)のがかわいかったです。

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その他こまごま。

・「アネット」アダム・ドライバーと古舘寛治の起用理由とは、レオス・カラックスが語る(イベントレポート)┃映画ナタリー
ユーロスペースでの初日舞台挨拶の模様。
(9年ぶりの来日と紹介され)「実は今回の作品を製作している堀越謙三さんやアネットの人形制作者に会うために一度来ています」
「桜の季節に来日するのは初めて。今まではずっと秋だった。東京を歩き回るのが好きです。とってもエレガントな部分と、ちょっと下品で猥雑な部分が同居しているのが面白い」
カラックスと縁深く、今作のプロデューサーにも名を連ねている堀越謙三さんは、ユーロスペース代表でもあります。来日するとユーロがベースになりますね。下のカフェで打ち合わせもしていたとか


そういえばこのシーンっていつ撮ったんだろう? その「一度来」たときに撮ったのか、日本の撮影チームに任せたのか

・宇田川町で半世紀「シスコ坂」の生みの親 柳光商事 一柳弘子さん インタビュー┃シブテナ
シスコ坂ってチョイス最高じゃんねえ

・アネット┃ユーロスペース
「アネット役は当初から人形の予定で、日本の人形作家を含めさまざまな試作が行われたが、現場で操作可能という条件で仏のエステル・シャルリエが様々な年齢のアネットの顔を、ロミュアルド・コリネが胴体とテクニカル面すべてを担当」
いろんな人形を検討していたようです。日本ではどの作家さんと会ったのかな。川本喜八郎に会えたらよかったのになんて妄想もしましたが、シャルリエとコリネによるベイビー・アネットは素晴らしかった!

・ANNETTE PUPPET┃la pendue & Estelle Charlier
シャルリエとコリネの人形劇団、「ラ・パンデュ」。劇団のサイトにアネットの制作について載っています

・ポリシネルでござる!┃SPAC
・<#34>「まるふ」演目紹介 悒櫂螢轡優襪任瓦兇襦』┃SPAC 制作部よもやまブログ
ラ・パンデュは、2013年にSPACで公演を行なっていました。わー観てみたかったな〜!


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おまけ。


ユーロスペースのカフェは、2014年迄Café Théoというお店だったのでした(twitterのアカウント残っててうれしい)。テオはカラックスの愛犬。『ホーリー・モーターズ』や『アネット』に登場しているJavelot(『アネット』の最後、いぬの鳴き声とともに恐らくカラックスの「ジャーヴロ〜!」という声が聴こえます)は、テオの孫にあたるそうです

・Director Leos Carax's lost dog found after Adam Driver's appeal┃BBC News
・Adam Driver Successfully Leads Mission to Find Leos Carax’s Missing Dog on ‘Annette’ Set┃IndieWire
ちなみにジャヴロ、『アネット』の撮影中行方不明になりました。クラブでの撮影時、車の往来に驚いて逃げ出してしまったとのこと。
アダムが捜索願いの動画を作成。「家族の一員です」「見つけてくれた方には映画に出演してもらうとか、子供の名前を僕がつけるとか、お礼をします」……ナイスガイ! さてこの発見者の方、『アネット』に出演したのでしょうか


SNSをやっていないアダムに代わって、マーク・ハミルが動画を拡散(いいひと〜)。その流れを今も見られるという……いい時代になったものだ。見つかってよかった、ジャヴロはまだまだカラックスの傍にいてほしいな