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2021年04月02日(金)
DC/PRG Hey Joe, We're dismissed now/PARTY 2-TOKYO

DC/PRG Hey Joe, We're dismissed now/PARTY 2-TOKYO@USEN STUDIO COAST


一年来ない間に「USEN」がついていた。

という訳で一年ぶりのコースト、「最新で最強」との別れのときがやってきた。2007年に一度活動終了したときは「事前に言うとしばらく来てなかった連中が観に来る、そんな奴らの前で演奏したくない」といっていたが、今回は解散にあたっての宣言があった。大人になったねえ……という気持ちといやいやどこが、という気持ちと、そしてああ、本当におしまいにするつもりなんだ、という気持ちと。でもやっぱり、こういう状況だと(だからこそ)きちんと筋を通すのが「気の狂った指揮官」だ。

音楽に対しての敬意を最優先する。聴衆の期待に必ず応える。つまり、バンドメンバーと観客を最大限にもてなす。二時間以上の演奏時間を確保するためハコ側に違約金を払い、収容人数を増やすために椅子席を設けた。最終的には当日券も出し、「前売りが売れていなくてヒヤヒヤしていたのに、幕が開いてみればフルハウス」という──そういう光景はかつてよく見られ、主幹も「なんだよ! ガラガラだったらどうしようかと思ってたよ!」といっていたのだ──当日フラリとやってくる、クラブラヴァーズの刹那にも応えた形となった。当初発売された800枚程のチケットは即完。追加販売がアナウンスされたときはどういうマジックだ? と思っていた。当日フロアに入り、整然と並ぶパイプ椅子を見たときは面喰らって笑ってしまった。

木戸銭しか受けとらないことが流儀である銚子の江戸っ子は、口上でことの経緯を述べた。そしてパーティの開幕を宣言した。草稿を手にスピーチする。指揮官のスピーチはフロアに火を点け、そして鎮静させる。煽動の演説。そして治癒の演説。

演奏時間は三時間。あたりまえだ、DC/PRGのワンマンが二時間で終わる訳がない。

最後の最後迄最新だった。秋元修と近藤佑太が加入してからのライヴは三回しか観られなかったが、全員にソロがあったのは初めてだ(そもそもベースソロがあること自体このラインナップが初ではなかったか?)。多忙な高井汐人の代打としてトップリザーバーにエントリーされていたMELRAWがこの日正式加入し、最終日には勿論高井くんも出席し、つまりsaxが三本になった。よって「Circle/Line」のリフ構成も初めて聴くものになった(高井くんいうところの経緯はこちら)。普通に三本でやるんだもん、ウケた。大阪ではどうだったのか判らないが、「Mirror Balls」アウトロのコードは初めて聴くものだった。本当に、最後の最後迄DC/PRGは最新だった。そして、一音一音が最強だった。主幹は「デートコースペンタゴンロイヤルガーデン」と名乗った。Date Course Pentagon Royal Garden、DCPRG、dCprG、DC/PRG。全ての駒が揃った。帰宅後感想検索したら「さようなら、全てのDCPRG」「ありがとう、全てのDCPRG」と『エヴァンゲリオン』になぞらえているひとが多くて笑った。

若い衆が入ってボトムがえっれえ強力になった(デカいエンジン積んでるアレ)ことは承知していたが、それに悠々とライドする“元老院”の面々。津上研太は瑞々しいソロを連発し、フルートのソロも増やしてきた。坪口昌恭はProphetの音色を探り続け、ホルンも演奏した。そして大儀見元が「立っている」。

どなたかがツイートしていた類家心平のハルク感(膝を打つ)は強力で、小田朋美のソロは痛切極まりない。高井くんに至ってはソロの前にガッツポーズをし、最後は手を大きく振り続けた。あのクールな子が! 「自分の演奏がないときは舞台袖でマンガ読んでる」っていわれてた子が! こんなの“泣きたくなる様な安っぽい話し”じゃないか。オムスくんにアリガス、ゴセッキー、スミレディ。最後のライヴらしく、フロアにはOBOGも駆けつけた。皆が思い思いに別れを告げる。

菊地雅章の「Susto」から「Circle/Line」を完奏することを使命として結成された傭兵部隊。「伝統芸能」というなら、今後演奏におけるプロフェッショナルを集め、楽曲を再現することは可能だろう。しかし「Catch-22」に倣えば、傭兵たちは「気の狂った指揮官」のもとに招集されるのだ。「オレにできたんだから、君らにも必ずできる」。んなワケあるか。その指揮官は享楽の瞬間を摑む天才で、同時に野生の痛みを伝える天才でなければならないのだ。

「デートコースペンタゴンロイヤルガーデンは、ここにいる俺たちが最新で最強だ」。最新はその瞬間から過去になる。次の「最新で最強」は誰だ? すぐにその座は埋まるのか、「大空位時代」が訪れるのか。楽しみでもあると同時に途方に暮れている。今夜のことは一生忘れない。DC/PRGのフロアには天国と地獄があった。

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セットリスト
01. 構造I - 現代呪術の構造
02. fkA(Franz Kafka’s Amerika)
03. Playmate at Hanoi
04. ジャングルクルーズにうってつけの日
05. Ronald Reagan(Other Side)
06. Catch22
07. Circle/Line〜Hard Core Peace
08. Hey Joe
encore
09. Mirror Balls
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菊地成孔(cond/key/perc/speech)/ 坪口昌恭(key)/ 小田朋美(key)/ 大村孝佳(g)/ 近藤佑太(b)/ 千住宗臣(drs)/ 秋元修(drs)/ 大儀見元(perc)/ 津上研太(sax/fl)/ 高井汐人(sax)/ 類家心平(tp)/ MELRAW(sax)
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一年前(四月の第一金曜日)のコーストはSquarepusherでした。当然延期になったんだけど休みとってたし、「WE BELIEVE OUR FUTURE.」のメッセージが掲示されているというので見に行った。いやあ、このときは一年後にこんな形でここを再訪するとは予想もしないわな


坪口さん愛してる! これが発端。てかエゴサーチなさるんですね…ふふ……。
それにしてもこのコメントは胸に迫る。「菊地さんがメンバーに優しいから、俺とか研太が口うるさく意見することもあったな。参謀というか番頭というかね。」「これがデトコペよ、他の誰にこんなことできるか、と誇りに思ってる。」
坪口さんがいてくれてよかった(手を合わせる)

・余談だがいちばん笑ったのはQRコードのことを「なんだ、あれなんていうんだっけ、あのハンコみたいなの」といったことです。ネット実印(笑)

先々週の教訓を生かしてか、「連絡先を記入しないと退場出来ない」から「連絡先を記入しないと入場出来ない」に。追跡用連絡先をチケット半券の裏側に記入し、入場時に確認〜自分でもぎる形式

・一階後方エリアはスタンディングエリア、バミリテープで立ち位置指定。床に円を描いたらネコが中に入る法則はヒトにも応用出来ることを証明、はみ出さずに踊り倒せるんだこれが。千鳥配置だったので視界も良好

・曲順は憶えられるけどソロ順忘れそうだなあ、いつもセットリストとソロのオーダー表を紙ヒコーキにして飛ばすから、誰かが画像をあげてくれるだろう。なんて呑気に構えていた観客を主幹は甘やかさなかった。紙ヒコーキは飛ばさず、帽子を投げよった。受けとったひと一生の思い出だね!

・「会場スタッフも、コロナ後で一番客が入って一番ドリンクが売れて一番盛り上がって、一番良いライブだったと言ってました。久々に本当のライブハウスの姿を思い出して、1時間押してたのも気にならなかったとも。」
ツイート拝借。これにはジーンときたなあ。ハコは最大限の準備でもてなしてくれた。頼む、二週間何も起こらないでくれ。唯一無二のミラーボールを持つスタジオコーストに、心からの感謝を

・それにしてもフラフラである。家でストレッチやったり長距離散歩したりしてうん運動してる! 大丈夫! と思い込もうとしていたことがよく解った。体力落ちてる。やっぱり現場はいいなあ、大好き。行けてよかった。最後にこの場を用意してくれて有難うございました