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2020年02月08日(土)
第7世代実験室『勝手に思うから』

第7世代実験室『勝手に思うから』@新宿ゴールデン街劇場


現代演劇の第二世代がつかさん、第三が野田さん、第四が鴻上さんでしたっけ? なんかそういう括りありましたよね。90年代前半には、我々が世代を担っていくと宣言した「第五世代」という劇団もありました。今は第七世代くらい、ということからこのユニット名になったようです。さいたまネクスト・シアターのサテライト企画。

暗転から照明がパッと灯る、眼前には開幕前にはなかったススキヶ原。このインパクト、蜷川幸雄のこどもたちだ、と思う。岩松了の『シブヤから遠く離れて』で、戯曲に書かれていた「ススキ」を蜷川さんは「枯れたヒマワリ」へと変換したことを思い出す。50人収容の小劇場で、この美術と演出は見事。

実際この作品には、岩松さんと蜷川さんの影響を強く感じた。台詞のやりとり、階段のある風景、水の扱い、ひとりごととして機能するモノローグ。食事のシーンで役者たちは実際にものを食べ、ちいさな劇場にいい匂いが漂う。客入れ時に流れていた弦楽器の練習/チューニング音や、パッヘルベルのカノンをモチーフにした音楽(椎名京子、芝由佳子)もよかった。講談は神田松之丞のものだろうか?

『薄い桃色のかたまり』は2017年、さいたまゴールド・シアターにより上演された作品で、演出も岩松さんが手掛けた。内田さんがここから大きなインスピレーションを受けたことが窺える。書きたいこと、表現したいことが沢山あったのだろう、まとまりに欠ける印象はあった。しかしハコの性質上、長時間の鑑賞は観客に負担が大きいとも考えたのではないだろうか。1時間20分という上演時間に収めたことには感心した。装置や制作も手練感すら感じるそつのなさで、これまた感心。いやさ、これ迄いろんな不備だらけの小さな公演を観てきたもので、旗揚げでこれはすごいなと。こういうところも、ネクストで鍛えられたものだろうなと思う。なんでも出来るし、なんでもやる。きっとトラブルがあれば代役はすぐ舞台に立てるし、不測の事態があったとしてもうまく対処するだろうという安心感もあった。

それだけに、もう少しこなれたホンでこの役者たちを観てみたいと思ったことも確か。裏を返せば、このホンを1時間20分見せきった役者と演出には素直に脱帽。内田さんの演出の手数はもっと観てみたい。しかし、舞台に立つ内田さんもまだまだ観たいですね。

『よみちにひはくれない』を観たときにも思ったが、シェイクスピア等古典の手法を徹底的に学び上演していたネクストの面々が、現代の普段着で、現代の言葉遣いで話している姿を観るのは楽しくもあった。衣裳や美術も素敵。青いワンピースを着こなす周本絵梨香は流石の存在感。客演もおり、「第一回公演」らしい熱と切実さのこもった演技を見せてくれました。

内田さんは開演前、客席壁にかかっていた時計を取り外しに出て来た。時計の音や畜光が上演の妨げにならないようにとの配慮だろう。受付には堀源起の姿が。堀さん、『よみちにひはくれない』のときのメガネ屋店長さんみたいなナリでした(微笑)。スタッフにもネクストの面々がクレジットされており(そういえばチケット代金の振込先名義は周本さんだったな)、裏方も兼任している出演者が多かった。芝居をしたいという渇望が成し遂げたものだったのだろう。話題性もあったし、継続していってほしい。勿論、ネクストの本公演も待っています。

ゴールデン街劇場、初めて行った。いい雰囲気。あーワタシは小劇場が大好きなんだよ。