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2019年11月10日(日)
NODA・MAP『Q:A Night At The Kabuki』

NODA・MAP『Q:A Night At The Kabuki』@東京芸術劇場 プレイハウス

Queenからのオファー(! しかも映画『ボヘミアン・ラプソディ』公開前に)により実現、全編Queenの楽曲で彩られたNODA・MAP新作。てことは英国公演も予定されているのでしょうか。『A Night At The Opera(オペラ座の夜)』は『A Night At The Kabuki(歌舞伎(座)の夜』)』となり、『ロミオとジュリエット』は『俊寛(平家女護島)』に。そしてもうひとつ、野田さんにしか書けない(としかいいようのない)パートが加わり、ひと組の男女は壮大な旅へ出る。瑞々しくひたむきな志尊淳と広瀬すず、熟練と風格の上川隆也と松たか子。互いが互いの未来を思い、変わらない運命へと立ち向かう。

野田さんは「おいていかれた者たち」っをずっと見ている。忘れられるどころか誰にも気付かれず、知られず消えていく存在を探し当て、見つけたぞ、伝えるぞ、と観客へと差し出す。蜷川さんは「打ち棄てられた者たち」を見つめ続けたひとだった。野田さんのこれが顕著になってきたのはいつ頃からだったか……いや、『二万七千光年の旅』も、『野田版 鼠小僧』も、『ロープ』も『The Diver』もそうだったじゃないか。萩尾望都原作ではあるが『半神』もそうだ。特定のフェーズに拘って書くようになったのは『オイル』からという印象だが(それでも15年だ)、根幹は変わっていないのかもしれない。遠ざかる車輛というヴィジュアルは『オイル』でも『エッグ』でも印象的だったが、その寂寥は優しいものになった。やりきれない程に優しいものに。

全編『オペラ座の夜』の楽曲から、というのが一種のハードルになっているように感じたところもありましたが(演出家・野田秀樹唯一の弱点は音楽の使い方だと思っている)、それでも「ボヘミアン・ラプソディ」があのシーンで鳴り響いた瞬間には鳥肌がたった。楽曲のインパクトは勿論、あの歌詞(キーワード)が耳に飛び込んでくるんだもの。『ボヘミアン・ラプソディ』を観ているひとは瞬時にあのキーワードとシーンのリンクに反応しただろうし、観ていないひとでもクイーンを愛聴しているひと、リアルタイムでクイーンの活動に触れていた年代のひとたちにリーチするものだった。勿論それを知らない若い世代にも、感情に訴えるものがあった筈だ。起源を辿る興味もわくだろう。

NODA・MAP初参加組にも注目。上川さん素晴らしかった。ルートさんの指摘で気付いたけれど、彼は『大地の子』の演技で注目されたんだった。まさに「おいていかれた者」だ。竹中直人がアンサンブルともしっくりきてるところに驚かされたし、そんななか「まっすぐ歩ける!」をぶっ込んできてウケると同時に唸った。竹中さんを自身のプロデュース公演(竹中直人の会/竹中直人の匙かげん)以外で観るのって、多分2001年の『四谷怪談』以来だったんだけど、こうもカンパニーにとけこむとは。声色の使い分けも見事。やはりすごい役者さんだ。橋本さとしは恋人たちの仲を引き裂く源氏の家長と、ふたりの結婚を見守る修道士という両方の役割を演じ、なおかつコメディリリーフも務めるという活躍ぶり。このひとほんと格好いいときとアホの子のときの落差が激しすぎる(笑)。そしてさとしさんと羽野晶紀を一緒に観られるなんて〜! てか羽野さんの舞台観るの何十年振りか! 台詞まわしの切れ味鈍ってないどころかすごみが増してた!

あと小松和重が最高だった、いつもだけど。つうかさ〜マキューシオにあたる役を小松さんがやるって最高じゃん。遊び人で世捨て人ででも芯は熱いやつでさ……そんな彼をセンターにハカ(モチーフは「カマテ」。振付:井出茂太)が観られるという演出には血がたぎりましたね。Rugby World Cupという時事ネタを台詞とかでちらっと、とかじゃなく演出にガッツリ組み込んできたことにも驚いたけど、思えばあの踊りはそういう踊りだよ……ハッとした。これも「ボヘミアン・ラプソディ」という楽曲同様、ポピュラリティを獲得しているものだからこその効果的な演出だった。2019年のいい思い出になったなー。しかしこれ、いつ組み込もうと思ったんだろう。絶妙のタイミングで摑まえたな! と脱帽。二階席最後列のど真ん中という席だったのですが、このハカと、恋人たちの寝室のシーツが舞う場面はこの位置から観て本当によかったと思いました。見立てとフォーメーションの美しさ。いや、近くで観られたら観られたで違うよさがあるけどね……。

あとアンサンブルで河内大和観られるのちょ〜〜〜贅沢じゃないですか。やっぱり目がいく。

野田さんはかつて『21世紀を憂える戯曲集』『21世紀を信じてみる戯曲集』と題した戯曲集を出版しているが、今作は「憂え、信じてみる」がひとつになったもののように感じました。信じてみよう、いつか戦争がなくなる時代がくることを。あの言葉を、これからずっと松さんの声で思い浮かべることが出来ることを幸せに思う。

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・クイーン『オペラ座の夜』を演劇と融合させた野田秀樹のイマジネーション┃Rolling Stone Japan
クイーン側からのあれこれには新しい発見ばかり。歌舞伎側からアプローチするひともいるわけで、その両方の心を動かす野田さんの仕事っぷりには唸るばかり……いつもこんな感じなので、その有難みを忘れがちだな! おそろしい贅沢だな! ちなみに1939年は、ノモンハン事件が起こった年でもある

・広瀬さんが演じるオフィーリアを観てみたくなりました。映像でしか観たことなかった志尊さん、プロポーションがめちゃめちゃよくてすごい舞台映えする。動きもしなやかだし声もいいし、また舞台で観たいな