初日 最新 目次 MAIL HOME


I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
kai
MAIL
HOME

2018年07月28日(土)
『大人のけんかが終わるまで』

『大人のけんかが終わるまで』@シアタークリエ

シアタークリエ十周年だそうでおめでとうございます、多分7〜8年ぶりに来たような……というくらい久し振りにこの劇場へ足を運んだのは、『偶然の男』や『ART』、そして『おとなのけんか』を書いたヤスミナ・レザの作品が上演されるため。そして「上演台本」を手掛けたのが岩松了だったから。キャスティングも好みでした。演出は上村聡史。

内容はといえば、地獄コメディだった(笑)つらしま。なぜ「上演台本」を必要としたのか、ということを考えざるを得ない仕上がりにも見え、翻訳だけでは成立が難しく、ドラマトゥルク的な役割として岩松さんが台本を起こしたのでは……と勘繰ってしまいました。演出家と演者は辛抱強く、粘り強くこの戯曲と向き合ったのだろうなあなんてこと迄こっちが考えてどうする。二時間弱の上演時間が随分長く感じられました。本国で上演されたときの評判ってどうだったのかしら? ああ言えばこう言う台詞の応酬から問題が噴出し、おもろうてやがてグッタリな展開を得意とする(と勝手に思っている・笑)ヤスミナ・レザ作品だけにもう一歩踏み込んだものを期待していたのだけど、そこは消化不良。いや充分グッタリしましたが。

それぞれ問題を抱えた男女が、それぞれのストレスをはち切れんばかりに刺激し合う。不倫、嫁姑問題、板挟みの夫、事業の失敗、認知症、薬物あるいはアルコール依存の兆候。磁石のNとNあるいはSとSのような関係ばかりなのに、それでもときどき片方のSがNになる。だから断絶がなかなか決定的にならない。面倒くさい(笑)。どの役も演者にとってはやっかいというか不利というか、わーこんなひとやだわーと思われてしまう人物像ばかりなのだが、そこに憎みきれない愛嬌や情けなさをひと匙、ふた匙。観客もそのチャームに気づく作業が楽しい。女ふたりがタバコを吸いつつ一瞬の友好をあたためる場面にはグッときた。

二列目センターだったので、鈴木京香のパンツが見えそうで気が気じゃなかった。スカートに見えたふわふわミニはうまいことキュロットになってました、衣裳さんいい仕事(笑)。NODA・MAPの『カノン』で観たときも見惚れた美脚は健在。低めの発声ではすっぱで、前の席で観ていたのにも関わらず「きょうかさん……だよね?」としばらく確信が持てなかったくらい。北村有起哉の声も低音なのでいいハーモニーでした。近年の北村さんはワルいとかダメな男を色気で魅せる役をすっかりモノにしており、今回も楽しませていただきましたヨ! 芸達者のバランサー藤井隆、頑なで損な役まわりに悲哀を加味してくれた板谷由夏、いやはや登場した途端に持ってかれる! 麻実れいと、難物戯曲を上演してくれたカンパニーに拍手を贈りたい気分。