初日 最新 目次 MAIL HOME


I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
kai
MAIL
HOME

2016年10月08日(土)
『ひとりずもう 2』

テスト・サンプル 06『ひとりずもう 2』@早稲田小劇場どらま館

-----

一、『清掃員』奥田洋平
二、『鳩が丘』野津あおい
三、『パート・タイム』松井周
四、『朝』辻美奈子
五、『授業』古屋隆太

構成・演出:松井周

-----

サンプルの面々による一人芝居オムニバス、その2。その1は今年二月に開催されたのですが、スケジュールの都合がつかず観られませんでした。いーやー面白かった。ちょーサンプルだった。ひとりあたり15〜20分、裸舞台に机と椅子が数脚。上手側の机上にはノートパソコン、そこから流れている音楽を、登場した役者が停めるのがスタートの合図。

ホンの段階から役者と構成演出が一緒につくりあげる。虚実入り乱れ、しかしそこには演者の真実。トイレ清掃でえずく奥田さん、地元の変化に妄想の羽根を拡げる野津さん、自身の性と家族との関係にあがく松井さん、生活者のパワーを体現する辻さん、人間関係とエロの変換に挑む古屋さん。どれもがサンプルらしくうすら寒くて気味わるい。そして身に覚えがある。やだわー。キメラとはよく言ったものです。日常と非日常と、現実と虚構と。

松井さんの『パート・タイム』がタイトルといい構成といい演じる実体といい、作家で演出家で役者でって全部出来るひとはよお〜と憎らしい程整っててお気に入り。女装で近所を散歩した松井周、妻に責められ娘に泣かれ。ミルクとカタクリを混ぜて乳首に塗ったらおまえは飲んだんだよ! 俺だって好きで白いものをピューピュー出してんじゃないんだよ! どうせならこっち(乳首)からピューピュー出したいよ! リアル〜。しかもこのくだり、テンションみなぎりすぎて噛んじゃう松井さんがまたリアル〜。ボーヴォワールの「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」の引用が痛快です。ボーヴォワールもこういう解釈にされるとは思わなかっただろうよ。ひとは夫、父、男、をパートでやってんだ。う〜ん、うまいこという。整ってる。

野津さんの作品には心地よい驚きがあった。女性のひとりごとが舞台上の景色をみるみる変える。作中現れる人物との関係、土地との関係。愚痴かな、ぼやきかな、いや、自意識過剰かな? 悪口、噂話? いやだな、と感じてしまう導入から、いつの間にやら鳥の視点、駅前ロータリーの上空へと飛翔していく。20分弱でこれは見事。

古屋さんを観たの久しぶりで、えー髪のびたねえ、いや役柄上か? ヅラか? とそっちが気になってしまっていろいろ気が散った。いや、フォロモン出していきましょうな古屋さんを直視するのに照れたのかもしれない。その日の夜出演しているというので観た『世にも奇妙な物語』「シンクロニシティ」でもオールバックにしていたので地毛だったか。お似合いでした。いや〜あんな演劇教室、イヤ〜。見学はしたい〜。

奥田さんの細やかな表現と話し相手、職場を想像させる間隙に惹かれ、辻さんのバランス感覚に涙しそうになり。家庭はちいさな社会で、職場は他人が集まるコミュニティ。そこで感じる違和感や苛立ち、同時に安心感。他人は異物、異物とくらすのがいきもの。ぬるぬる、ざわざわするサンプルの観察記、これからも楽しみです。

時間の都合でアフタートークに参加出来なかったのが残念。どらま館行ったの何年ぶりだろう、前回行ったときはまだ銅鑼魔館だった。