初日 最新 目次 MAIL HOME


I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
kai
MAIL
HOME

2015年12月20日(日)
『書を捨てよ町へ出よう』

RootS Vol.3 寺山修司生誕80年記念『書を捨てよ町へ出よう』@東京芸術劇場 シアターイースト

寺山修司の代表作でもありますが、なんだかんだで書籍にも映画にも触れずにきました。今回は藤田貴大による上演台本を、マームとジプシーのプロダクションで上演。

ひとつの家族とそれをとりまくひとびと。サッカーチームの補欠の兄、うさぎしか愛せない妹、認知症が進む祖母、仕事を辞めた父。母は不在だ(母のない子、か)。兄に代表される若者の鬱屈は中上健次が描くそれを思い出させる。ストーリー上のモチーフ…親(の役割)の不在、ボクシング、輪姦、と言ったものも当時を思わせる。これらは現代にもあるものだが、描写はより執拗で陰惨だ。

藤田貴大のあの、男性への呪いのような執着は何なんだろうと考え続けている。特に今回は顕著だったように思う。『cocoon』ではまだ、そうなる男性の背景を見せる部分があったように思うが、今作にそれはない。兄以外の男性たちは、役柄上では自己満足のためだけに破壊の限りを尽くし、舞台上の黒子としてはひたすら肉体を酷使した設営と撤収を繰り返す。敵意、憎しみすら感じる演出だが、冷徹に観察、考察した結果を示しているだけのようにも思える。では女性キャストは? 孤高と絶望だ。強いわけではない。したたかなだけでもない。男性も女性も、ひたすらすり減っていくように思う。青柳いづみはどこ迄すり減るのかなと思う。

ときどき、観ている側が着火されると言うか、エンジンがかかる瞬間がある。リフレインからでもあるし、言葉ひとつの力によるものだったりする。ぱちん、と言う台詞で終わる。そして闇。断線。村上虹郎は声もお母さんに似てるなと思った。眼球の解剖シーンで、目で見るのではなく、目に映ったものを頭で見るのだと言うような台詞があった。それを聞く虹郎くんの目は、照明の具合もあって伺うことが出来ない。反面、終盤激情を露わにするシーンでの目は、こちらの目に強く焼きついた。いや、頭に焼きついたのか。

-----

以下自分用メモ。今回考えるうえでヒントになったもの。

・危口統之さん(悪魔のしるし)|intvw.net 京都の演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

・akumanoshirushi|搬入プロジェクト