
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
kai
MAIL
HOME
|
 |
| 2014年12月27日(土) ■ |
 |
| 『ガガーリン 世界を変えた108分』 |
 |
『ガガーリン 世界を変えた108分』@シネマカリテ スクリーン2
昨年も今年も、年末に宇宙に行って帰ってくる映画を観ている…いっそのこと恒例にならんか。と言う訳で観てきたー! ユーリ・ガガーリン生誕80周年記念ですよー! ちなみにガガーリンが宇宙に第一歩を刻んだ4月12日は、ウチの父親の誕生日と言うこともありなんだか記憶に馴染みがあります。で、今回のことで気付いたが、そのウチの父親とガガーリンは同じ1934年生まれであった。そーだよなあ、なにごともなければ生きていてもおかしくない年齢なんだよね。ソチ五輪でテレシコワが出てきたときにも思ったけど。
閑話休題。ガガーリンが宇宙へ飛び立ち帰還する迄の108分を再現、その間に過去のエピソードを織り込んでいく構成。当時の実際の映像と映画ドラマ部分の映像とのバランスもよく、役者も似ている。フルシチョフも似てたー(笑)。
初めてご家族の協力を得て製作された長編伝記映画だそうで、人類初の宇宙飛行士を「愚か者」と読んだ母親の言葉が沁みます。ソ連時代に作られていたらここは伏せられただろうなあと言う箇所も結構あり、ああ、ソ連と言う国はもうないのだなあとも思った。「宇宙船がアメリカ側に着陸したら爆破してしまわないと」とか「(ガガーリンをマスコット的に)世界中に見せびらかしたい」とか……。文献で読んだことはありましたが、実際台詞で出てくるとギョッとする。最後にちょっと触れられていますが、帰還後のガガーリンは広報活動に忙殺され、二度と宇宙へは行けなかった。来日もしてるんだよね(そのときの実際の映像が最後ちょっと出てきます)。「人類初」「英雄」の重圧に押しつぶされ、スキャンダルを起こし、やがて事故で亡くなった。その事故の経緯も諸説ある。ソ連の秘密主義もあり、彼の晩年は不可解なことも多い。鴻上尚史が以前「物語はいつも途中迄。登場人物たちの人生はまだまだ続く」と言っていたことを思い出す。
それでも、この映画は彼が宇宙に行ったこと、そして帰ってきたこと、それによってソビエト国民に、いや、世界中のあらゆるひとびとにある種の光を見せてくれたということを、誠実に描いたものでした。貧しい家に生まれ、厳しい自然と環境のなかで育った幼少時代から、工業高校から航空士官学校へ進み空軍へ、そして宇宙飛行士選抜候補生へ。人類初の宇宙飛行士を目指す仲間たちとの激しい競争は、死と隣り合わせの過酷な訓練。実験の意図をちゃんと知らされなかったり、行動を監視されていたりと不安も大きい。無重力空間で人間はどういった状態になるのか? もし宇宙空間で不測の事態が起こったら? 未知と言うものは本当に恐ろしい。皆で事故の映像を観る場面は緊迫感溢れるものでした。それでも彼らはお互いを認めあい、選ばれた者を祝福し、任務の成功を祈ります。美談になりそうなエピソードも、抑えた演出で好感が持てました。厳しい日々にも、無邪気な時間があったのだなあとちょっとホッとしたり。家族との幸せな時間にあたたかみを感じたり。
ガガーリンと、二番目に宇宙に行ったチトフとの微妙な関係も印象的。やっぱり歴史に名を残すのは一番目。何故彼がひとり目に選ばれたのか、にもやはり諸説あります。狭い宇宙船にコンパクトに収まる体型だったからだとか、貧しい家の生まれだからだとか(=もし任務が失敗に終わった場合いろんな意味で対応しやすいし、成功した場合英雄に仕立て上げやすい)。さまざまな思惑のなか、自分と周囲を信じるしかなかった彼らのまっすぐな瞳が眩しかったです。
-----
・『チャイルド44』でロシアにハマったあと、レニングラード封鎖から米ソ宇宙開発競争の関連書籍迄読んでいた(そして今ではロシア雑貨にハマっている)のがいろいろ役にたった…「逃げないで、私はソ連人です」ってエピソードもちゃんと出てきた! ニュースが流れたとき昇進後の階級でアナウンスされたので父親が「同姓の別人だろう」と思った話とか
・ロシア宇宙開発史/Russian Space Anthology ここを読みあさっていたのもいろいろ役にたった〜。充実コラム満載です。有難い
・『月をめざした二人の科学者』のコロリョフ出てきたときはわー! てなった。これにコロリョフがガガーリンかわいがってた話ちょっと出てくんだよね
・で、これ読むとわかるんですが米ソの宇宙開発って実はどちらにもドイツの技術者たちが関わってるんですよね。今作でのドイツ人の描かれっぷりはかなりアレで(まあ、そういう時代だよね…)そこもせつなかった……ボリスくん、あれからどうなっちゃったんだろう
・めでたいことがあるとわーって赤の広場に集まるの、今見ると渋谷のスクランブル交差点とか大阪の道頓堀とか思い出すわ……(貧困な連想)
|
|