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2013年12月18日(水)
『ゼロ・グラビティ』

『ゼロ・グラビティ』@ユナイテッド・シネマとしまえん スクリーン8

まずはIMAX3Dで観ました。いやー…す、すごかった………。音響含めこれは映画館で是非、と言いたくなる作品でした。通常の3Dや2Dで観ても作品の素晴らしさは変わりませんが、環境や状況が揃うのであれば、是非作り手側がこの環境で観てほしいと思っているであろうIMAX3Dで。作品の素晴らしさは変わらない、と書いたのは、観終わって思い出すのはその映像のすごさだけでなく、役者の表情であったり、声色だったり、台詞のひとことひとことだったりするからです。目に映るものは圧倒的。にも関わらず、映らないものへの余韻が大きいのです。それはストーリーがシンプルかつ深淵であるからだと思います。以下ネタバレあります。

映画の素晴らしさだなあと思ったのは、最近では(ってもう一年前だが)『アルゴ』がそうだったけど、「映画のためのフィクション(つまり嘘)があるけれど、それは映画へ奉仕する嘘である」と言うところ。気圧調整が必要であろう宇宙服をあんなに簡単に着脱出来る筈がないとか、いくら中国の宇宙船だからって機器が漢字表記のみってことはないだろうとか、そういうツッコミは野暮と言うものです。いや、そういうツッコミをしつつ、観ている側はそうであってほしいと思っている。この嘘を信じたいと思っている。私はそうだった。早く脱出してほしい、危機を回避してほしい。ああ映画だもの、これが映画でよかった。だから映画は素晴らしいんだ。

映像は本当にすごい。あまりにもすごいので、映らない部分への想像力が研ぎすまされてしまう。宇宙空間に放り出された衝撃、その宇宙空間でひとりきりになってしまった孤独、そして有限な酸素を使い切ることが予想出来る絶望。これら理解や経験の範囲外が想像されることによって生じる恐怖感。宇宙空間からヘルメットを通過して登場人物の主観になると言う驚異的な長回しショットも、その人物の閉塞感(酸素残量が少ないことも装着している機器表示から判る)が伝わってきて、頭で考えるよりも先に感覚が反応する。観ている間ずっと呼吸が浅かった。

主人公である女性が、ライアンと言う男性的な名前であることは『プライベート・ライアン』をちょっと連想した(こちらのライアンは名字だが)。何も出来ない観客は、ライアンが無事帰還してほしいとただただ祈ることでストーリーに参加している。その名前の由来、家族の話はほんの少しの言葉で語られるだけだが、そのわずかな情報だけで彼女の人生の背景が浮き彫りになる。彼女をサポートし続ける(そう、彼は退場後も彼女を助ける!)コマンダーとの会話により、彼女が「生きる」ことを思い出すシーンは感動的です。サンドラ・ブロック綺麗だったなあ、顔の造作だけじゃなくて内面から滲み出る美しさ。

91分と言う長さもよかった。シンプルなストーリー、圧倒的情報量の映像、想像力を喚起する余白。これぞマスターピース。

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以下おぼえがき。

・ミッションコントロールの声がエド・ハリス!『アポロ13』!この配役はニクい!
・どなたかツイートしてたけど『プラネテス』読んでるひとはうわあと思うよ…デブリこわい……
・事故の原因はロシア、ってとこがなんかニヤニヤしますね…冷戦が終わってもアメリカはアメリカですよね……
・宇宙船内にぷかぷか浮いてる小道具にもニヤニヤ。中国のだと卓球セットとかね

・バリバリのねこ派ですが、あの場面はやっぱいぬだよなあと思った……
・ライカは勿論思い出すけど、それだけじゃなくて
・ひとりっきりのときに聴く遠くのいぬの声って、あまりにもあたたかいのよ
・ライアンが「アウー」ていぬの鳴きまねするところ、身に憶えがあるひとは多いと思うよ!私もやったことあるよ!(泣)
・このいぬのシーン、スピンオフ作品(『Aningaaq』)が公開されています。うわあああああん!これ観てないひとにはなんじゃって感じだろうけど観てるひとはもう、もう!


・あとやっぱジョージ・クルーニーですよ……
・先に観てきたウチの姉が「『L.A.コンフィデンシャル』くらいビックリした」つってたんだけどそういうことかと。ケヴィン・スペイシーの退場くらい唐突で早かったってことね……
・早い!早いよ!しかもあんな!(号泣)
・つーかこの場面、隣の兄さん(外国人)がめっさ泣いてしまってそれはもう嗚咽が出そうな勢いで、違う意味でオロオロした。oh...
・行くことないけど行くことになったらジョージと一緒に宇宙行く
・おばけが!おばけが!わあああああああ
・おばけっつうかああいう状況で出てきたらもー泣くっちゅうねん
・あの脱臼したような唐突さ、よかったなあ…はああ……
・ある意味おいしい役だがその説得力はジョージだからですよそうですよ

・なかったことにされてるっぽいがソダばぁの『ソラリス』大好きなので、個人的にもうジョージ・クルーニー+宇宙と来たら鉄板決定だ
・『ソラリス』、ex.RHCPのクリフ・マルティネスが手掛けた音楽も素晴らしいんです。今でもよく聴く