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2014年11月02日(日)
高橋徹也 レコ発ツアー・ファイナル『REST OF THE WORLD 1999-2014』

高橋徹也 レコ発ツアー・ファイナル『REST OF THE WORLD 1999-2014』@CLUB Que

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Vo、G:高橋徹也、B:鹿島“KID”達也、Drs:脇山広介(tobaccojuice)、Key:佐藤友亮(sugarbeans)
ゲストホーンズ:Tp:山崎千裕、Ts:杉田久子、Tb:永井嗣人
(ホーンアレンジ:sugarbeans)
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レコ発、と言うことだったが、そのレコードから演奏されたのは一曲のみ。そのレコードと言うのは、録音から十五年後にリリースされた幻の4thアルバム『REST OF THE WORLD』だ。所謂お蔵入りと言うやつだが、運命のいたずらはあるものだ。マスターテープが発掘され、さまざまな権利契約をクリアし、日の目を見ることになった。情報が出たのはGW明けくらいだっただろうか、web上で大騒ぎになったのを憶えている。リリースに際して、多くの関係者の方の意欲や協力があったのだと思う。その経緯も踏まえ、デビューからのキャリアを振り返ってみると言う集大成的なライヴになったのだろう。高橋さんご本人だけでなく、当時からのファンやリスナーの方々の思いはいかばかりか。

アンコールでは予告どおり「新しい世界」が演奏された。ご本人曰く「ホーン・セクションを加えたオリジナル・レコーディング・アレンジで演奏したのは、なんと『初めて』」。リリースから十七年後、まるでこの夜、この場を待っていたかのような、集ったひとたちを祝福するかのような音が、高らかに鳴り響いた。

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一曲目はデビューシングル「My Favourite Girl」。歓声(と言うより驚きのどよめき)が上がる。続けて「真夜中のメリーゴーランド」「チャイナカフェ」と畳み掛ける。佐藤さんの指が軽やかに、踊るように鍵盤上を滑る。この曲や「ホテル・スターダスト」は、佐藤さんの演奏が際立っていた。どの曲も音源とはまた違うアレンジが施されているうえ、佐藤さんも鹿島さんもインプロ的なフレーズやソロをぐいぐい入れてくる。瞬時に対応し、全体の流れを底上げする脇山さん。大きなエンジンを積んでる! と言うのがバンドの第一印象。サウンドとしては相当エグい。

そう、このバンドセット…驚いたのはそのグルーヴマスターっぷり。本腰入れて聴き始めたのは昨年からの新参なもので、ライヴはKeyあるいはBとのデュオや、弦楽カルテットとのアコースティックセットでしか聴いたことがなかったのだ。良質な楽曲や歌詞、歌唱を噛み締めると言う形でライヴに参加していた訳だが、それらがバンドセットだとこうなるかと。ゴリゴリのファンク、スウィングなダンスミュージック。もともとの音源に忠実な構成で演奏しても(そしてその音源は勿論素晴らしい)、ライヴと言う有機的な場でないと起こり得ないグルーヴなのだ。このメンバーが揃ったステージにおけるマジックとしか言いようがない。スティーリーダンかトーキングヘッズか? このアンサンブルの妙技! まさに音のいきもの。そして何がすごいって、アクの強いこれらの演奏が、ある種のひとなつこささえ感じさせるポピュラーミュージックとして響くのだ。

それは高橋さんの力量なのだと思う。ヴェルヴェットヴォイスと言える天性の声のよさに加え、ファルセット、ヴィブラート、モノローグと言ったヴォーカリゼーションのスキル、歌詞世界を鮮やかに表現するストーリーテラーの妙で聴かせる。複雑なリズムの海を、優雅にメロディが泳いでいく。そしてギター。あの(あのって言っちゃうわ)鉄壁リズム隊の間を縫うような精緻なコード、カッティング。水面下では演奏のせめぎ合いが繰り広げられる。まさに白鳥だ。ぐいぐい引き込まれる。久し振りのバンドセット(だったそう)で、フラストレーションが爆発した印象すらあった。それも地力あってこそだ。

それにしても…「音楽の天国と地獄」を具現化したような曲を書く。「新しい世界」と「ユニバース」が顕著だが、ポップソングにしては長めの7〜8分のなかに「Circle Line」〜「Hard Core Peace」のあの(あの再び)多幸感をぶっこむ凄まじさなのだ。DCPRG好きにしか判らないたとえで申し訳ないが、高橋さんは菊地成孔との共演楽曲があるので思い出した次第。現在コラボレートしたらどうなるか、聴いてみたくもある。

『REST〜』から演奏された一曲は「ユニバース」だった。『REST〜』のリリースが頓挫し、レコード会社との契約を終了した後、幾度もプライベートカセットや自主制作のアルバムに収録された楽曲だ。『REST〜』収録のトラックにだけ「風を追い越して」と言うサブタイトルがついている。“REST OF THE WORLD”と“新しい世界”、そして“ユニバース”。パズルのピースがぴたりとはまったかのようだった。皆が笑顔だ、ステージの上も、フロアも。メンバーは楽しそうに演奏し、高橋さんは終始笑顔だった。

終わってみれば二時間半の長丁場だったのだが、正直時間を忘れていた。次の曲は何だ、どんな演奏が聴けるんだ? ひたすらこっちもがっついた。終わってしまうのが名残惜しかった。場を去り難く、終演後寄る辺なくフロアをうろうろしてしまった。

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以下おぼえがき。

・ご本人も苦手と仰っているし、演奏に集中するあまり他がお留守になってしまうのでしょうが、MCがユルい(笑)
・お父さん自慢を始める(笑)「お父さん」て言うとこがまたいい
・「お父さん格好いいんですよ、僕と同じくらい(それ以上?)背高いんですけど(フロアどよめき)……格好いいんですよー。見ててあー…、格好いいー、て思うー」
・「前は『ミュージシャン? おまえそんなんで喰っていけるのか』って感じだったんですけど、最近は『おお、がんばってるな』って感じになってきて。こっちも歳をとって、反発心もなくなったので最近は実家に帰って一緒に粗大ゴミ出したりして」
・「こないだ初めて一緒にラーメン屋さんに行ったんですけど、『あつっ、あつっ』なんてラーメン食べてて。あんなに強い、大きいと思っていたひとが『あつっ、あつっ』って…見てたらなんか泣きそうになっちゃいました」
・感極まったわたくし、帰りにラーメン屋さん行きましたよね
・しかしそのラーメンはぬるく高橋さんのお父上のように「あつっ、あつっ」とは言えなかった(がおいしかった)

・MC同様演奏に集中するあまりかメンバーの名前を間違える。「脇山広一ー! 違う! 脇山広介! 誰だ広一って」
・「鹿島達也“KID”ー!ステージネームなんでステージにいるときはKIDて呼んでください。いいなーステージネーム。俺もほしい…ダーク? スマイル?(ぶつぶつ)」
・その後フロアから「キッドー!」と声が飛び鹿島さん笑顔
・鹿島さん「今もう誰も呼んでないよ。高橋だけだよ呼んでるの」

・そうそうフロアのレスポンスがよくてなー! スタンディング、バンドセットときてあの演奏とくれば盛り上がるよね
・男性のお客さんも多く、地方からいらした方もかなりいたよう。福岡から来たって話してたひともいた。連休中日ってのもよかったね

・(アンコールで出て来たときだったかな?)「はー全然疲れてない」
・「42ですよーもうー」(どよめきとともに「わかーい!」て声が飛ぶ)
・42であのプロポーション維持は素晴らしいわ…シャツインでベルトなしであの柳腰

・「再来年二十周年、それに向けていろいろやっていきたいです。ずっとブルースやってる映像が頭にあるんですけどね。3コードで、全部同じような、文句ばっかり言ってるような曲ばっか作って。……そうなったら、見限ってください」(笑)
・そこで菊地さんとのコラボですよ(夢)

・『大統領夫人と棺』に映像作品を収録したDVDが付き、二枚組で再リリース
・「どこそのアイドルみたいな商法」と仰っていたけど、再プレス分も在庫切れの状態で入手困難、中古は結構な価格がついてしまっている。良心的だと思います
・しかもその映像作品が素晴らしいときた!
 Tetsuya Takahashi - First Lady and Coffin (MV digest)

(よだんだがアベフトシを思い出すショットがあってぎゃわーとなった…脚ながー! ほそー!)

・使用ギターは基本ジャズマスター、「ブラックバード」のみギブソンES-330
・ギブソンに持ち替えて、お? と思ったら「ブラックバード」でギャーとなったんでそこは憶えてる。この曲だけだったと思うんだけど
・しっかし「ブラックバード」と「大統領夫人と棺」はベースラインがすごいですね。や、どれもすごいんだけど「大統領〜」のベースはホントすごい……
・それにしても高橋さんと言い小林建樹さんにおける千ヶ崎学さんと言い、いいベーシストが傍にいますね…(しみじみ)
・と言うか、優れたミュージシャンは優れたミュージシャンと出会うことが出来るのだろう
・フロアで建樹さんのこと話してる方がいたのでふと思ったのでした。リスナー、被りますねえ。昨年が初共演だったなんて嘘みたい
(20141105追記:nagameeさまより2013年以前にも共演はあったとご指摘頂きました、有難うございます!
・“RESORT SOUNDS 2003”高橋徹也/小林建樹、opening act>epoch
2003年、Queでのライヴレポート。ちょ、なんでこれ行ってないの自分!)

・やー録ってないのかな今回のライヴ。音源出ないかなあ
・OTOTOYで配信とか…どうですかね……

・そういえば高橋さん、左利きだと初めて知りました(いやほらギターは右だし字書いてるの初めて見たんで)ニヤニヤ
・と言う訳でサインをいただき…ました……や、物販にいらっしゃるんだもん! そこをスルーするのもおかしな話でしょう!
・皆さん思いの丈を伝えてらっしゃいましたがもー緊張して「す、すごかったです来てよかったです」としか言えなかった…アホの子か……
・握手した手がとても大きかった。ギター弾きには恵みの手ですね、生まれながらのミュージシャン!
・着替えずステージと同じ格好で、会場外の階段で対応してらっしゃいました。妙なとこ見てるなってアレですが黒いシャツに白い汗ジミが。寒いのですぐに乾いて、塩が浮いてしまったのでしょう。風邪ひいてないといいのですが。あんな凄まじいライヴ後にこんな穏やかな対応するのかとそのギャップにも感動した……

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セットリスト(高橋さんのツイートより:12

01. My Favourite Girl
02. 真夜中のメリーゴーランド
03. チャイナカフェ
04. 怒りを込めて
05. 人の噂
06. 夕食の後
07. Night & Day, Day & Night
08. 曇ったガラス
09. 赤いカーテン
10. ホテル・スターダスト
11. ブラックバード
12. ハリケーン・ビューティ
13. 大統領夫人と棺
14. 真っ赤な車
15. ユニバース
16. 夜明けのフリーウェイ
encore01
17. 新しい世界
18. 犬と老人
encore02
19. バタフライナイト

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・高橋徹也 レコ発ツアー・ファイナル『REST OF THE WORLD 1999-2014』感想 - Togetterまとめ
やーもーこれ保存版。いろんなひとの思いがつまってて、読んでると胸が熱くなる。まとめてくださった方有難うございます!

・REST OF THE WORLD 発売記念インタビュー - ポプシクリップ
リリースの経緯等。ライヴ後に改めて読むとじわじわくる

・ジャガー・ジャズマスターシェイプ比較特集|ハートマンヴィンテージギターズ
おまけ。いつ迄経ってもジャズマスターとジャガーの区別がつかん…と思って調べていたら見つけた頁