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2014年10月19日(日)
『忘れな草』

カンパニー・フィリップ・ジャンティ『忘れな草』@PARCO劇場

初演はフィリップ・ジャンティ作品を観た二本目で、なんで猿? と混乱したことを憶えています(笑)。なんでも半分くらいは改訂されたとのこと。ノルウェーのヴェルダール演劇学校でワークショップを開催した際、学生たちのレヴェルの高さにすっかり魅了されたジャンティが、教材として使ったこの作品を彼らとともに改めて上演しようと決断したとのこと。昨年観た『動かぬ旅人』も改訂再演でしたが、こうやって変化し続け、更新されていく作品を観続けていける嬉しさよ。そしてレパートリーシアターとしてのPARCO劇場に感謝。

魅力的な声を持つメンバーの資質を活かそうと、台詞が増え、歌う場面も。台詞のいくつかは日本語で。白い雪の美しさ、しんとした夜。ジャンティとメアリー・アンダーウッドに、ノルウェーの土地とひとたちが与えた影響は大きかったようです。カンパニーの現在が映し出されます。自分そっくりの人形を操る演者たち。動きは精巧で、人間なのか人形なのか瞬時には判断出来ない。人形は死体のようにも見え、それを抱える演者は自らの死に対峙しているようにも見える。生と死の境が曖昧になる。やはり猿は登場し、ひとをからかったりときの移ろいを嘆き悲しんだりしている。若いカンパニーのしなやかな身体、躍動感が美しい。

あと水って初演のときあんなに使ったっけなあ。前の席にはとんできたかもね。結構笑えるシーンも増えていて、軽やかな印象になりました。夢か現か、記憶収拾人の旅は続く。

そうそう、今回席がA列でとても視界がよくて嬉しかった…ここ、実質四列目なんですよね。で、四列目から前列との段差がつく。Y〜Z(二〜三列目)だと前の席のひとの頭に隠れてしまい、視界がかなり狭くなるのです。どこだと確実にA列以降がとれるのだろうか…一時期twitter先行でY〜Zがやたらとれたことがあったんですが、一概には言えないですねえ。

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終演後はスペシャルレクチャー トーク。ツアーマネジャーのクレールと、出演者二名(男女ひとりずつ名前失念)、男優さんの人形も一緒に椅子に座って出席。以下おぼえがき(記憶で起こしているのでそのままではありません)。

・演者が扱う人形は15kg(!)作品を演じる前に、まず人形操作の訓練をする。動きを滑らかに違和感のないように…八時間もやってるともう腕はぶるぶる、へとへとになる(笑)本人から型をとった、世界に一体しかない人形

・途中出てくるスノーボールも操作が大変。全身をすっぽり入れて、うさぎ跳びの要領で移動します。あっと言う間に汗びっしょりになります
・ツアーも始まって何度も使っているので、ボールのなかからは僕のいいにおいがしています(笑)
・頭も入れると方向感覚が全くなくなる。劇場によって舞台の大きさが違うので、リハのとき何回でんぐりがえりをすれば指定の場所に行けるのか憶えておく。でも一度その回数を忘れちゃったことがあって、どうしよう? とでんぐりがえり続けて舞台袖にハケちゃったことがある(笑)
・(司会の方)さっきスタッフがでんぐりがえりに挑戦してましたが、すぐギブアップしてました。真っ暗だし狭いしで、今自分がどちらの方を向いているかも、どのくらいの距離を動いたかも判らなくなるそうです

・台本と言われるものはなく、フィリップが提案したシーンのイメージをもとに演者が即興で動き、それをビデオに撮ったものをフィリップが家に持ち帰って観て、これを採用しよう、こう構成しよう提案する。それを何度も繰り返す。お互いの意見を交換しあい、アイディアを取り入れて作って行く