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2014年09月21日(日)
『背信』

葛河思潮社『背信』@東京芸術劇場 シアターイースト

思えば初めて『ダム・ウェイター』以外のハロルド・ピンター作品を観た。葛河思潮社、初の海外戯曲です。

誰かが嘘をついている。あるいは皆が嘘をついている。誰の言うことが本当なのか、それらは語られた言葉を頼りにするしかない。しかし、その言葉を司る記憶が既に改竄されている。飲み下される酒、酒、酒。

記憶がいちばん曖昧なのはジェリーなのだが、彼の言うことにいちばん嘘がないように思える。ひとを欺いていないと思い込んでいる無邪気さともとれるし、エマとロバートの強い主張に、付和雷同してしまいがちな性格のためだともとれる。こどもの父親は誰なのかはエマだけが知っている(かも知れない)が、それは彼女がそう思い込もうとしているからかも知れない。ロバートは浮気をしていると告白したようだが、それは彼のつくり話かも知れない。そしてジェリーの妻は本当に「知らない」のか。ハートリーとエマの関係は果たして言われた限りのものか。放たれた言葉のなかから、登場人物も観客も、自分が信じたいものを探す。結局信じたものは自分だけのものだし、疑いも同じだ。それぞれの真実が出来上がる。

時間が逆行すると言う構成だが、全ての場面がそうなる訳ではなく、あることが判明してからいくつかの場面は時間通りに進む。戯曲にはその複数の場面でひと区切り、との指定があるのかも知れないが、舞台上では間に転換が含まれるので、些か混乱が生じる。その辺りは演者の表情や仕草で収拾がつくようになっている。テーブルやベッド、椅子等ほぼ全てのセットがあらかじめ舞台上に置かれており、エマとロバートの家、エマとジェリーの部屋、ロバートとジェリーが会うパブやレストランと言った場面転換はそれらの移動で表現される。ニュートンのゆりかご(五玉振り子/カチカチボールのあれね)、砂時計等の小道具も印象的に使われている。照明も丁寧なガイドだ。演劇的効果の主張が強い。

ちょっとした言い違いや前後の入れ替えで、その場面における言葉の意味が全く変わったものになってしまう。またそれが憶えにくそうな短いセンテンスの連続だったりする。演者は大変だっただろうなと思うものの、これ迄『浮標』『冒した者』と言った難物戯曲を上演してきた葛河思潮社常連の役者たちだったので、一種の信頼感はありました。そういったテクニカルな面に加え、皆さん声にも仕草にも色気がある。刺激的な95分でした。

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よだん。ピンターと言えば哲司さんで『ダム・ウェイター』観てみたいんだよー。そんでまあ関係ないが、哲司さんは以前『動物園物語』のときもジェリーだったなーなんて思いました。ほろり

よだん2。パンフにプレヴュー後のインタヴューが掲載されているんだけど、KAATではパンフ販売されなかったの? それとも一日で編集DTP印刷して初日には販売したのかな。気になる……。そしてこれのゴーチ/伊藤さんの挨拶にモヤ〜としています。以前から思っていたことだけどー。直接会えるひとには話します(笑)

よだん3。KAATと言えば今作に度々名前が出てくるイェイツ。彼が日本の能に影響を受けて書いた『鷹の井戸』の舞台衣装が、現在ヨコハマトリエンナーレに出品されています
・Simon STARLING サイモン・スターリング | アーティスト | ヨコハマトリエンナーレ2014
・浅田彰 | ヨコハマトリエンナーレ2014 | REALKYOTO