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2014年06月14日(土)
『不機嫌な男たち 不倫と純愛』

『不機嫌な男たち 不倫と純愛』(DVD)

ファン・ジョンミン出演作漁りをひとやすみして、チョン・チャン出演作。原題は『가능한 변화들(可能な変化たち)』、2004年作品で、日本では2004年(第17回)東京国際映画祭で上映(最優秀アジア映画賞受賞)後、2007年に劇場公開された様子。

まず有権者に訴えたいのは(@怒り新党)、本国リリース版との扱いの違いであります! まずはパッケージ画像載せときますね。

・本国版


・日本版


どういうことなのこれ…日本版はベタなサブタイトルが付き、パッケージの紹介文も「韓国を代表するセクシー女優たちが全裸で熱演!」てのがメインでございました。男優さんたちも全裸で熱演でしたが…いや待てよ。この画像からして本国ではむしろ「話題の男優たちが全裸で熱演!」てのを売りにしていたのか? 先入観によってイメージ変わるわー、広告制作ってだいじ。本国版の画像とストーリー紹介を先に見ていたので、青春時代を懐かしむ男たちのちょっとせつない爽やか映画だと思っていたのだが……。

で、実際観てみれば、いやもうなんとも。ちょっとせつない爽やか映画でもなく、だからって全裸が熱演ってのが前面に出る訳でもなく、ひたすら男ってしょうもない…人生ってしょうもない……ただ自然だけが美しいってな話でしたがな。どっちの男もクズとしかいいようが……いや役が! 役がですよ! 日本版の副題にもなっている出来事は確かに組み込まれているのですが、これを不倫と言うにはあまりにも安易で、純愛と言うにはあまりにもエグい。そしてどちらの男も救いようもないくらいそれに無自覚です。

小説家志望で会社を辞めたムノが経済的に安定している(どころかジョンギュに中絶費用を援助するくらいには余裕もある)のは奥さんがしっかりしているからなのでしょうが、それがいつ迄続くのか。そしてジョンギュはもはや病気で、そして病気だからと許されるものではない域に足を踏み込んでいる。ふたりとも破滅の予感しかありません。片や避妊はしないし片や中絶させるし、片やつれていく店も宿(ホテルとも言えん)もあんなだし片や相手に連れてってもらったホテルで会員カード使えとか言うし。女性がぽつりと「男は根無し草ばかり」と言うシーンがありますが、これにはいろ〜んな意味が含まれている。直訳したらもっと違う意味合いなのかも知れないですね。面白いのはどちらの男も教会に行くんです。クリスチャンの多さに反して堕胎率もとても高いと言う国の不思議を目の当たりにした感じ。救済なんてどこにもない。

プロローグとエピローグが、本編のその後(あるいはその前)になっている構成。ムノがジョンギュの背中を押したのは幻か、それとも? 幼馴染みふたりの行き着く先は、ムノの妻が現像した写真のなかにしかないのか。終始ダルトーンの本編中、唯一ヴィヴィッドな色使いになったのがこの写真のシーンでした。この光景のなかではジョンギュは足を引きずらず、ムノも屈託なく笑っているのかも知れない。山に囲まれた湖や、抜けるような青空と眩しいくらい白い雲。そこに棲むことは、多分生きている限り不可能だ。そういう視点から観ると確かに切ない青春映画でありました。

またもやR18だったんですが、またもやR18ってこんなんだっけ? てな内容でもあった。『浮気な家族』でもそうだったけど、濡れ場の殆どが男の背中側からのショットなんですよ、と言うか背中とお尻と後頭部しか映ってない(笑)女優さんの身体どころか表情すら見えない。なんだろうこれ…韓国濡れ場のセオリーなの? それともこう撮るのが2000年代前半のトレンドだったの? 不思議だ…もうこれが気になって気になってエロい気分どころじゃなかったね!

チョンチャンさんはドラマ出演が主で、映画出演作がそんなにないんですね。モデルから芸能界に入り、ドラマでも貴公子やお坊ちゃま的な役が殆ど。そのイメージを破りたい、映画に出たいと言う思いから強烈な役柄を欲していたそうなんですが…映画だと脱ぎ仕事が多くなると言う……。インタヴューで「ラブシーン何度やってもうまく出来ない自信ない」とか言っててかわいいやらなんとやらですわ。ちなみに初濡れ場は『ロードムービー』だったそうで(つまり初のお相手がファン・ジョンミン……)「純潔を奪われたように放心状態になった」そうで、かわいいやら(以下略)。

そしてこの映画、例の大麻で捕まったあとの作品なんですが、序盤ハッパか何か吸うシーンがあって何この自虐ギャグと困惑しましたよね。芸能って因果な仕事ですね……。いろいろと複雑な気持ちになりましたが、チョンチャンさんいい仕事してはりました。そしてやっぱり声がよい。