初日 最新 目次 MAIL HOME


I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
kai
MAIL
HOME

2013年11月24日(日)
木ノ下歌舞伎『東海道四谷怪談―通し上演―』

木ノ下歌舞伎『東海道四谷怪談―通し上演―』@あうるすぽっと

FESTIVAL/TOKYO参加作品。これは面白かった!あまりに面白かったのでアフタートークも参加して、結果7時間近くあうるすぽっとにいた…空腹。幕見もあるので是非と言いたいが今日が千秋楽だった、フェスものは公演期間が短いのが難ですね。通し上演は大変だと思いますが、再演を期待。

興味深くなおかつ有意義だと思ったのは、現在観られる歌舞伎のイメージ…所作の型や様式を再現すると言ったものではなく、作品が書かれた背景とテキストの構造そのものを現代に持ってくると言う試みがなされているところ。五七調と現代口語が併用されるのは、鶴屋南北が書いたテキストのつくりそのものなのだそうです。つまり当時の舞台では、登場人物たちが武家言葉と(当時の)口語のミクスチャーで会話していたと言うこと。当時の観客が受けた衝撃と困惑を、現代の観客も感じられるのです。歌舞伎の破天荒(無茶苦茶とも言う)なスピリットそのものを甦らせている!しかしこれって現代でもそうですよね。世代の違い、出自の違い。おじいちゃんと孫、お嬢様とヤンキーが話したらこんな感じなのではないか。

お岩やお袖は武家言葉に終始し、町人はくだけた言葉で話す。伊右衛門はどっちつかず。武家の出と言うプライドを捨てきれない彼女たちと、そんなことでは生きていけないとあがく伊右衛門、直助のすれ違いがよりリアルになる。そう考えると、女性は現実的、男性は夢見がちと言う現代とは違う雛形が露になってその辺りも興味深かったなあ。

そして通しで上演することで、忠臣蔵との関係性がよりはっきりする。「小塩田隠れ家の場」は多分初めて観たのですが、小仏小平がどんなにいい子だったか、何故あんなに薬をほしがっていたのかがやっと実感出来た。過去観た印象では薬がそんなホントに効くものだとは思ってなかった(…)ので、小平って健気だけど抜けた子ねくらいの印象でしたよ…ごめんよ!討ち入りを願う主人を元気にしたい一心だったんだね!(泣)で、その主人が結果的に討ち入りのメンバーから外されるってのも今回初めて知り、その報われなさっぷりに涙が出ましたよ…しかし小平は最後の最後迄主人に寄り添ってた。その行く末が観られてよかった……!

「夢の場」も確か初見。その後の提灯抜け等のおどろおどろしい演出を封印した「蛇山庵室の場」でも明確でしたが、死後のお岩の解釈が見直されていたところにも唸った。実際あの化けて出る場面の描写、どこ迄がト書きにあって、いつからああいう演出になったんでしょうね。最初はなかったけど一度やってみたら観客の反応がよく、次第に定着していったとも考えられ……。徹底的にテキストを読み込んだ結果の今回の演出だと思われます。

そのテキストの読み込みは「髪梳きの場」にも現れており、ここが出色でした。抜け落ちた髪を掴んでむせび泣くお岩の場面にラップと歌が被ってきた。最初ええっ!?となったけど、そのライムと歌詞聴いてたらお岩と伊右衛門の心情が描かれているものですっごいせつないの!実は泣いてしまったさー!その後アフタートークによると、ホンには「流行歌が流れる」とあったそうです。で、演出の杉原邦生さん曰く「今の流行歌って言ったらラップでしょう!」……見事にやられた。当時の観客もポカーンとしたのかも知れないな、と想像出来るのも楽しいものです。

木ノ下歌舞伎は主宰の木ノ下裕一さんのプロフィール以外全く知らず、劇団なのかプロデュース形式なのかも判らないまま出演者もチェックせずの初見だったのですが、いーやーなにこのひと?何に出てるひと?と惹き付けられる役者さんが沢山出ていた。ゴールドシアターの竹居正武さんや国分寺大人倶楽部の後藤剛範さんとか…どういうキャスティングなんだろう、オーディションがあったのかな。中性的な姿と声を持った森田真和さんと盪海里┐澆気鵑皸象に残ったなあ、浮世に生きる儚い人物を体現していました。あとやっぱこの作品、佐藤与茂七がヒーローやで!ってとこで演じた田中佑弥さんがめちゃ格好よかったですね。対して庶民のダークヒーローと呼んでもいいだろう、直助権兵衛!飯塚克之さんの燃え立つような迫力と言ったらなかった。このふたりが最後に会う「深川三角屋敷の場」、素晴らしかった。

そして民谷伊右衛門役、ロロの亀島一徳さん。殆どチャラいDQNDV男でうっわーうっざいわー憎いわーバーカバーカはやく呪い殺されてしまえ、と思ってしまう程のヤな男だったんですが(ごめん)、「夢の場」でその気持ちを改めましたね…戻れなくなった男の悲哀を惨めに体現、よかった。この辺り、南北のロマンティストな要素が木ノ下さんの手により純度を増したようにも思いました。

そして杉原さんってKUNIO主宰の方か!イキウメ大窪くんの出演で太田省吾の『更地』をやったとこですっごい気になってたんだよ!今回観られてよかった。他の作品も観てみたい!