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2013年06月27日(木)
[monologue]

山田稔明、高橋徹也、小林建樹[monologue]@Star Pine's Cafe

強者SSWスリーマン。小林さんは九年振り!のトリオ編成(都内ではこれ以来?)、いやはやすごかった……。小林さんのことを中心に書きます、長いよー。出演順は山田さん、高橋さん、小林さん。最後に合同セッション。

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Pf、Vo:小林建樹、B:千ヶ崎学、Drs:宮川剛

セットリスト
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01. ヘキサムーン
02. B.B.B
--- mc ---
03. few(インスト)
04. あおいだ空(Pf+Vo)
05. 祈り
--- mc ---
06. 花
07. Spider
08. 禁園
--- encore(Pf、Vo:小林建樹、B:千ヶ崎学、Drs:宮川剛、G、Vo:高橋徹也、Vo、Tamb、Bh:山田稔明)---
Ride On Time(山下達郎カヴァー)
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小林さんのライヴはイリオモテヤマネコ並に貴重なのですが、昨年辺りから少しずつ本数が増えてきました。今年は四本目かな?三月から月に一度はライヴをやってる…これって結構すごいことですよ小林さん的には!しかし三月は『マシーン日記』と被り四月は大阪、先月は仕事が終わらず行くことが出来なかった…そもそもはわたくしの心の師匠・窪田晴男が面倒見てるってとこから小林さんを聴き始めたので、五月のライヴ&トーク(窪田さんホストのUST)は行きたかった……。しかしこちらはアーカイヴ映像のおかげでその後観ることが出来ました。

・SEEDSHIP: 下北沢音問屋珈琲店 vol.5(カネコアヤノ,永山夏希,オトザイサトコ,小林建樹), Recorded on 13/05/27


Video streaming by Ustream
(小林さんはopと、01:25:00くらいから)

ここ数年ピアノソロで聴くことの出来た楽曲たちは、毎回のように演奏が変わっていた。構成が違う、リズムが違う。過去をなぞるような演奏は一度たりともなかった。さまざまな演奏手法によって楽曲の新たな面に光があたり、何度聴いても発見がある。そしてどうアレンジされても揺らがぬメロディの強度に唸る。クラシックやジャズのスタンダードのように、繰り返し演奏されても魅力が薄れない。

特に聴く度リズムが複雑になっており、日記にときどき菊地成孔の著書の感想が書かれていることから、アフリカや南米のリズムに関心が向かっているのかなと思うことがありました。前述のライヴ&トークでも窪田さんに「相当ブラジルに行って帰ってきたって感じだね」と指摘されていた。そしてそのトークでご本人が「同じ曲をいろんな作曲家風にアレンジするのにハマっている」と話していたことから、ひとつの曲からあらゆる可能性を見出だすのが楽しくて仕方ないのかなと思ったり。今のこのモードの演奏に他のプレイヤーが加わるとどうなるのだろう…と言う興味もありました。だから今回のバンド編成は楽しみで仕方がなかった。しかもStar Pine'sはグランドピアノが使える!

九年振りに顔を合わせた三人。果たしてそのやりとりのスリリングなこと!冒頭「ヘキサムーン」のイントロからインプロ、各楽曲のブリッジもインプロでしょう。当時の演奏もすごかったけど、それにも増してリズムのやりとりがむちゃくちゃ複雑になっていた。スウィングからラテンへ、そしてポリリズムへ。ピアノソロでは見えづらかった(聴いてる方からするとどうなってるんだ?と思う箇所が多かった)符割が複数のプレイヤーによって演奏されることで、あっこれポリリズムか!とやっと気付いたよ…これでリハ二回だったと言うのだから恐れ入る。複合リズムの妙をこれだけポップスの中にさらりと入れられるともう…すごかったとしか……。耳からうろこがぼろぼろ落ちる、同じ曲からいくらでも違う宝がざくざく出てくるさまを見せられたかのよう。ピアノソロで少しずつ披露されていた新曲をバンド編成で聴けたのも嬉しかったです。二曲、三曲、三曲と言う構成も見事でした。中盤三曲は「言葉のない曲、言葉の少しある曲、言葉のある曲」をノンストップで。そして終盤三曲、「花」アウトロから「Spider」イントロ、そのアウトロから「禁園」イントロの流れなんて息つく暇もなかった。楽しそうに演奏する小林さんの顎から、汗の雫がぱたぱたと落ちる。そうそう、左手が際立つ演奏でした。あー左利きだわーと改めて…「Spider」の低音、すごいややこしい運指で弾いてるとこがあったなあ。キュー出しも左手でしていたし(ここでまた菊地成孔を連想する病)。

再び五月のトークから引用しますが、「どの音か、どう弾くかは判ってるけど、実際に演奏するのがすごく難しい」「言葉より先に行きたい」と話していたなあ。彼には再現不可能な音が鮮やかに聴こえているのでしょう。それにどれだけ手が、声が、楽器の機能が追いつくか。全身音楽家は日々それを表に出そうと探求し、腕を磨いている。天才の頭の中の音楽をお裾分けしてもらえる、感謝するばかりです。そして嬉しいのはこのトリオでの次回のライヴが決まっていること。10月5日だそうです、しかもワンマン!予定空けて待ってる!

ちなみにこのトリオの「B.B.B」は小林さんがギター弾いてるver.も凄まじいんですよね…九年前のStar Pine'sでのライヴ音源が、昨年リリースされた『Rope』に収録されています。CD通販はこちらから。

『Rope』ダイジェストはこちら。


天才(天然)ならではのMCも相変わらず面白かったです。彼の中ではそれらの話と演奏は繋がっているんだろうな。以下おぼえがき。あまりにも支離滅裂なのでちゃんと再現出来ません……。

・インストから言葉が増えていく「few」「あおいだ空」「祈り」の流れを「人間が進化してる感じでしょ〜」
・住んでた家が壊されたんですけど、それを向かいから見てたんだけど…そう向かいに引っ越したの(笑)あ〜壊されてく〜、日々なくなっていく〜、でもその家がなくなって、そこからそれ迄見えなかった空が見えたりして…その感じがなんかいいなーって

・カラーコーディネーターのひとに診てもらったんですよ、黄色系とピンク系の肌があるんですって。で、僕今顎髭あるんですけど、似合う色を合わせると顎髭が目立たなく見えるんですよ〜。個人的には黒とか白とかが好きで…後ろの方へ後ろの方へ行きたがる性分なんで、あんまり目立たない色がいいなって……でも黄色が似合うって言われて。診てもらったとき僕は似合わない色を着ていってたの。後日手紙で診断を貰ったんですけど、「似合わないと思ってました」って(笑)そういうのって言うタイミング難しいですよね。で、黄色を着るようにしてるんだけど、41にもなって黄色って恥ずかしいね!周りからも避けられてるような気がする

・山田くんと久々に再会して呑んだとき、「なんでそんなにライヴするの」って訊いたの。そしたら「なんでそんなにライヴやらないの」って返された(笑)
・山田くんは話が面白くないとiPhoneいじりだす(山田さん平謝り)

さて山田さんと高橋さんが加わってのアンコール。「こういうときはビートルズかねって話してたら、高橋さんが『僕はストーンズ派なんで』って…」「そう言われちゃあねえ!」と山田さん。ちなみに高橋さん、小林さんと同じ1972年生まれというところから「1972年は名盤が沢山出てるんですよ」と話しだし、たとえば?と問われて「僕は好きじゃないんだけど『ジギー(・スターダスト)』とか…」と言い出してふたりに「またそういうことを!」とかツッコまれ、「ボウイの他のは大好きなんですよ!でもジギーは……」とブツブツ言ってましたうはははは。三人のなかでいちばん歳下の山田さんがいちばんしっかりしてた(笑)、場を仕切ってくれて有難し。

と言う訳ですったもんだの末選ばれたのは、小林さんが「以前カヴァーしてて」山田さんが「日本語に拘る、日本語で唄う、と言う三人の共通項もある」と山下達郎の「Ride On Time」。山田→高橋→小林のヴォーカル順で。い〜や〜よかった〜。皆さんオリジナルと同じキーで唄える上に各々確固たる世界観があるので素晴らしかったよ!高橋さんの「何という朝〜♪」の唄いまわしにはおわあとなった。

山田さんはバンド編成で最新作『新しい青の時代』からのみの選曲。常にライヴをやってるならではのセットですねー。高橋さんはギター、佐藤友亮さんのピアノとのデュオ編成。佐藤さんは途中カホンも演奏。いい楽曲、いい演奏。そしていい歌!贅沢な夜でした。