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2013年03月16日(土)
『探偵〜哀しきチェイサー2 雨だれの挽歌』

音楽劇『探偵〜哀しきチェイサー2 雨だれの挽歌』@紀伊國屋ホール

作・演出マキノノゾミ、音楽coba、振付南流石の音楽劇。座長はジュリー!以下ネタバレあります。

M.O.P.の『黒いハンカチーフ』路線つまり『スティング』なのですが、最初のクライマックスが種明かしされたときの客席のどよめきがすごかった。笑顔でやられた!騙された!ってな観客の一体感、こういうのを肌で感じられる舞台っていいな、楽しい。「野太い声の赤い髪の女」と言う情報から秘書の仕業かなと思わせておいて実はああだった、と言うミスリードもお見事。『スティング』知ってるひとはあーあれかーと思うし、『黒いハンカチーフ』観てるひとはあーあの路線ね、と野球賭博を仕掛ける辺りから気付いてニヤニヤする訳ですが、最後のもうひと波乱が物語に華を添えます。これがあるのとないのでは印象が大きく変わる、甘くも苦いドラマ運び。『黒いハンカチーフ』ではも少し苦みが優しかったかな。

その「苦み」は、南野陽子さんの力に依るところが大きかったです。そうしないと女性が生き延びられなかった時代背景、残酷な偶然によって過去と対峙しなければならなくなったときの決断。夫と子供を無惨に殺された(と言っていいと思う)憎しみを二重に隠し、男たちを手玉にとる女性を鮮明に演じていました。あの声も強くていい。したたかだと言うにはあまりにも過酷な彼女のこれ迄の数年間、そしてこれからの、死ぬ迄の長い時間。秘密を見抜いたジュリーとの最後の会話の粋なこと、そして苦いこと。昭和三十四年の神戸元町、柔らかく愛嬌のあるお国言葉で語られる彼女の人生は胸に迫り、彼女がこれから穏やかな暮らしを送れるようにと強く祈らずにはいられない。舞台上の、実在しない人物にこれだけの思いを起こさせる力がありました。

そんで、ジュリー!ジュリーって言っちゃうよねー!人生初ジュリーの生歌聴けてヒデキカンゲキ(まちがい)、あの声だったよ…ギフト、ギフトな声。随分恰幅よくなってカポネかって感じでしたがいやいや強きをくじき弱きを助ける素敵な陰ある人物でした。そんでまたお国言葉がいい。いろんなことを諦めているようでいて、笑顔と強面の裏で涙を流すひとに気付く敏感さがあり、手を貸さずにはいられない。あの柔らかい口調でぽつりぽつりと語られる言葉と、一転力強く唄われる「雨だれの挽歌」、引き込まれました。歌声ですっかり世界が出来てしまう。

と言えば生ナンノも初であった。唄いだしはちょっと緊張したが(こっちが)、いやいやごめんなさいもう歌手としてもベテランですものね。ナンノのあの声で、舞台での歌。よかったよう。最近舞台で観る機会の多い“ビジネスウーマン”(て言葉があったんですね)東風万智子さんや、ジュリーを見守るママ小椋あずきさん、声を活かした“少年探偵”小飯塚貴世江さんらの女優陣が皆素敵。勿論男優陣も格好よかった!当時を再現した衣裳もよかったです。

「2」と言うことなので、ほぼレギュラーメンバーなのかな。独立して観てもとても楽しめたので、次があったらまた観に行きたいな。