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2013年03月13日(水)
『鈴木勝秀(suzukatz.)-130313/ウエアハウス』

『鈴木勝秀(suzukatz.)-130313/ウエアハウス』@SARAVAH Tokyo

配役はサトウトオル=田口トモロヲ、トミヤマショウジ=ヨシダ朝、ピアニスト(=演奏)前嶋康明。テキストはこちらからダウンロード出来ます

トモロヲさんもヨシダさんも過去の『ウエアハウス』シリーズ(リストはこちら)に出演していますが、この組み合わせは初めてですね。伝えやすいので『動物園物語』をなぞって言うと、トオル=ジェリー、ショウジ=ピーターになります。ちなみにトモロヲさんは1993年、中島陽典さんとのユニットCroMagnonで『動物園物語』にインスパイアされた『ZOO』と言う公演を打ち、ジェリーに当たる人物を演じていました……って、さっき『ZOO』を検索していたら、2003年に中島さんが再びピーターを演じた『動物園物語』があったと言う記録を発見。しまった知らなかった!ああ観たかったよううう。

さまざまな形態で何度も繰り返し上演されている『ウエアハウス』。上演が繰り返されるうち、ふたりの登場人物像がだんだん溶け合ってきているようにも感じます。もはやどちらがどちらだか。ある意味命の、人生のリレー。

さてこのスズカツさんのサラヴァシリーズについては、ここんとこレポートと言うより妄想を書くようになっているので(いつもか?)具体的なことは後半に。ぐぐっとスクロールしてください(笑)。

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レイ・ハラカミが亡くなったのは一昨年の夏フェスシーズンまっさかりの頃だった。そういうタイミングもあって、縁のあるアーティストたちは出演したフェスで、さまざまな形でハラカミくんを悼んだ。矢野さんはyanokamiで出演が決まっていたフェスで演奏を続けた。そのyanokamiが出演するサマソニ前夜に起こったこと。

twitterのログを見ていたらあるツイートが目に飛び込んできた。RSRでまりん(と未だに言ってしまう…砂原良徳)がハラカミくんの曲を完コピしている!続いていくつもRTが飛ばされてきた。agraphくんのツイートが的確にその状況を知らせていた。

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@agraph 砂原さんがRSRライブでハラカミさんのjoyをカバーしました。オリジナルからのサンプリング無し、88使用せず、という環境下での完コピ。映像は高谷さんからお借りしたオリジナルでした。 http://twitpic.com/65fdtv
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その後agraphくんも「unexpected situations」をカヴァーしていたなあ。

これの何が『ウエアハウス』と関係あるねんとお思いでしょう(笑)。しかし自分は、トモロヲさんとヨシダさんのやりとりを聴き乍ら、このことを思い出していました。「オリジナルからのサンプリング無し、88使用せず」。

ハラカミくんの機材はMac OS 9とローランドSC-88proがメイン。「あの機材を使っているからこその音」と言われることもあり、本人もこのMacが動かなくなったらもう…なんて冗談めかして言っていた。ところがまりんは、ハラカミくんの「JOY」を耳コピし、違う機材で完コピしたのだ。「あの機材を使っているからこそ」を無効にする。ハラカミくんはこのインタヴューにもある通り「(同じ機材を)使い続けることで想像力が伸びていくモノだ」と言っている。まりんは自分の使っている機材に想像力を宿らせたのだ。

扱うひとの器官と想像力によって変貌し続けるもの。逆説的ではあるが、違うものも、同じものも生み出せる。

翌朝、まりんからのメッセージがRTされてきた。『完コピされるのが嫌なら長生きすること』。またもや逆説的。まりんらしい追悼の仕方だった。

てなことを、まりんがリマスタリングしたDE DE MOUSE『tide of stars -Ultimate Edition』を聴き乍らつらつら考えていた一週間。今朝(書いてるのは19日)TVでサカナクションによってハラカミくんの曲が紹介されたと知ってにんまりしている。曲は残る、音は残る。こうやって繋がっていけ、続いていけ。

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・役者がふたり、音楽家がひとり。『ウエアハウス』の初演を思い出すメンバー構成でした。ヴァイオリンとエレクトロニクス、ピアノと言う楽器の違いも興味深く
・音楽と音効がピアノで奏でられ、音響でホワイトノイズが張り巡らされる
・いぬの声もピアノ!かわゆい(その後可哀相なことになる訳だが)
・トモロヲさんがピアノに近付いていって前嶋さんとノイズ連弾、いぬを黙らせる=音を止める。わーん

・今回のホンは、一昨年の演劇集団円とのコラボ『ウエアハウス[circle]』をふたり用にリライトしたものとのこと
・[circle]ではふたりの年齢設定が『動物園物語』とは逆転しているところや、ジェリーに当たる人物にこどもがいない理由が「結婚が遅かったから」になっていた
・過去の『ウエアハウス』では「妻には子宮がない」ためこどもがいない、と言う台詞があり、[circle]でそれを削除したことも興味深かった
・それが今回「子宮がない」が復活し、なおかつ「結婚が遅かったから」になっていた
・こういう細々した違いが興味深く面白い。演者の年齢(見た目含)から喚起されるものも多い

・しかしトモロヲさんは塚本監督言うところの「博多人形のような肌」を持つ年齢不詳さんですからもう訳がわかりませんね(笑)いや実際の年齢知ってるけどホント若々しーよね……
・年齢や生活環境の違うふたりが根底に通じるものを抱えている。今回の出演者、世代的にはほぼ同じくらいなんだけど、その同じ世代でも細分化されてきて、いくらでも違うしいくらでも同じ。と言うところが面白い
・トモロヲさんの「突っ込んだ話はこれから☆です!」て言い回しに大ウケ。他にもちょっとしたトーンやアクセントの違いで笑いを呼んでいた

・と言えばヨシダさんの「たすけてくださーい」がよかったなあ、沁みた。恐怖と緊張のあまり喉が絞まって声が出ない感じがまざまざと。ああ、きっと誰も気付かない、誰も来ない。助けてくれるひとはいない
・ヨシダさんの声でギンズバーグ聴けて嬉しかった!堪能した!

・かめ大好きだし飼ってたこともあるのでかめをディスるのは許さねえ
・あーかめかわいい!

・“いぬの長ゼリ”をピーターに当たる人物が語るラストシーン、好きなんだー
・実際『ウエアハウス』において、『動物園物語』の“いぬの長ゼリ”は減りつつある。もはやあの長ゼリがなくなっても『ウエアハウス』だなーってとこに行きつつあるんだな
・やがてジェリーに当たる人物、ピーターに当たる人物、と言う説明も出来なくなるんだろう

・ホンの表紙、今回ポストカードにもなっていたアートワークのマテリアルが多分『教授』の宣美で使われていたTVの写真を加工したものだったり、前嶋さんの音楽「ウエアハウスのテーマ」が教授の「トニー滝谷」(あー!)であったり、前嶋さんの「100歳の少年と12通の手紙」であったりと、ここにも溶けてる感じ。いずれどれがどの作品だったか曖昧になっていくかもな
・それは自分の記憶力の問題かも知れないが(笑)
・ん、ややこしくなってるな。『教授』は先月上演されたスズカツさんの舞台、教授は坂本龍一
・既に溶けつつある、自分の脳が