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2012年06月15日(金)
『ラブストーリー〜don't let me down〜』

国産第1号『ラブストーリー〜don't let me down〜』@下北沢OFF・OFFシアター

オクイさんの頭の中を覗いてみよう。一筋縄ではいきません、痛くて笑えて恐ろしくて安堵してぽーんと投げ出されて幕。爆笑と震撼を急転直下で行ったり来たり、演出は80〜90年代小劇場を彷彿させるテンポのよさ、音楽の使い方にも懐かしさを覚える。

んん?懐かしさ、とはまた違うかな。出自が見える、と言えばいいか。演劇にもいろいろあり、作る側がどこで育ったか、観る側がどこを観てきたか、による、共通認識みたいなものがある。と言う訳で身構えることなく観ることが出来たのですが、オクイさんのこれ迄の作品とは違うテイストだったとのこと。確かに自分がこれ迄に観たオクイさんの作品って、サモアリにしてもコント集的なものにしても笑えるものばかりだったので驚きましたし、その反面納得もしました。何事もとことん突き詰める、何事も振り切る迄やる。それは出演者全員がそうだった。そして皆すごく格好よかった。

謎解きもあり、人間の業の深さもあり。性別や性的嗜好に正解はなく、弱さがない人間はいない。そしてお互いに愛情を持っている。だいじな誰かのために何かをする。パズルのピースが全てはまったとき、生き残れるひとはいない。オクイさん「観たひとから優しくされる」と仰ってましたが、確かに心配になりますわ。それにしても文章で表すのが難しい。とても笑ったけど、とてもドン退きしたし、とてもせつなくなった。

しかしオクイさんのブリーフ一丁とわかまどかさんのボンデージ(いやしかしすごい似合ってた…ちゃんと身体鍛えてそう。劇中に出てきたグレイシー柔術ホントにやってるのかもと思った)は登場時すごいインパクトですごい笑ったんですが、その姿のまま舞台上にしばらくいると違和感なくなるんですよね(笑)。どんどん深刻な話になっていって、こちらもどよーんと落ち込んで、でも何かの拍子に「いやでもこれを話しているひとはブリーフ一丁…そんなこと言ってるけどSM嬢……」と我に返ってブルブルすると言う。慣れって恐ろしい。

そしてOFF・OFFで観るバイオレンス描写の恐ろしさを久々に体感出来たことも嬉しかったな。観ているこちらにも火の粉が飛んでくるかのような臨場感はあれくらいのキャパならでは。暗転したら本当に真っ暗になるし、ちょっとした音がその後の呼び水にもなる。開幕前にオクイさんが各所でお知らせしていましたが、確かに今回の作品は携帯がなったり液晶画面が光ったりしたら台無しになるシーンが沢山あった。開演直前迄舞台上に諸注意を書いたボードを置いておく、と言う提示の仕方もスマート。理想的な環境で観られてよかった。

あ、あとオールビーの『動物園物語』を思い出すモチーフがありました。ベンチ、ナイフ、そのナイフと抱き合う男。