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2011年12月24日(土)
『その妹』

『その妹』@シアタートラム

武者小路実篤の戯曲。多少なりともブラッシュアップしたのかな。それにしてもシェイクスピアばりに説明過多な台詞です(笑)。具体的な言葉数も多い。それを1.2倍速くらいのスピードで役者たちが語り倒す。とにかく台詞回しが速い!しかしこれを皆さん乗りこなす乗りこなす。所作も皆綺麗。付け焼き刃のひととそうでないひとの差って舞台に立つとテキメンに判るし、そこに演出がちゃんと目を配っているかってのも同様です。扱う題材にもよるけど、この作品に関しては、単純にスキル必須だなと思いました。

しかしそれだけだと「うーまーいーなー」で終わってしまう。膨大な台詞量から登場人物を多面的に映し出すのも役者と演出の力量。亀治郎さんと蒼井優ちゃんのザ・女優(え)対決みたいな様相もありつつ、しかしタイトルロールだけに妹オンステージみたいなところもありました。これは女優冥利に尽きる役柄ですな…処女と妖女の両面を好きなだけ出せる。ちょっと妖女の方をドロッと出し過ぎたかなと言う印象はありました。あーこれは計算づくだ、と思わせられてしまうような。まあ、意識して計算しているのではないのがコワいところなんですが。これはあれだな、西島の妻が会うなりピーンときたように、女性から見ると「この女、うまいことやりよる…!」と思うけど、男性からすると「うわあん可哀相、助けちゃる!」となっちゃうかしら。まあ実際可哀相だしな……。

なので、ボロクソ言われている男のところに嫁に行っても、妹はうまいことたちまわれそうな気がしましたとか言うと鬼みたいですな私(笑)。確かに兄妹の過酷な運命には同情しますが、実際心が寄ったのは西島なんですよね。いちばん気の毒なのは西島な気がするー。段田さんの巧さもあってうえーんてなりました。

演出も堅牢。兄妹の「ズルい」面を強めに出して笑いを誘っていました。そして男のじゅんじょーよりも女のおっかなさが解りやすく出てた。しかしこれ、男のひとが観たらそうは思わないんだろうか(笑)。河原さんがそれをどこ迄見据えてこう打ち出したか、を知りたい気もします。

それにしても、クリスマスイヴに観るにはあまりにもしょんぼりするストーリーであったよ(泣)。