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2011年10月23日(日)
『芸術祭十月花形歌舞伎』夜の部

『芸術祭十月花形歌舞伎』夜の部@新橋演舞場

日乃出のおべんとうを買えないこの喪失感…ううう何故だ、何故なくなっちゃったんだー(泣)。ぐんまちゃん家になっている店舗跡をうらめしく見やり、基礎工事中の歌舞伎座を横目に演舞場へ。夜の部、猿之助演出『猿之助四十八撰の内 通し狂言 當世流小栗判官』。「市川亀治郎、市川笑也 天馬にて宙乗り相勤め申し候」!段四郎さんが体調不良のため休演(しょぼん)、横山大膳久国役は右近さんでした。

いやー猿之助歌舞伎の演出は派手で爽快!スピード、スペクタクル、ストーリーの「3S」と言うだけある……。と言いつつ二幕の血の瀧見て貧血起こしそうになった自分もヤワになったものです…我に返ってからはすごいアガりましたが。血がドバーとか内臓がベチャーとか平気なたちなんですが、とめどなくさらさらさーと小川のように流れる血の瀧を見てたらああもったいない…とか思ってな……ええ、貧血が全然改善しないもので。そしてタ師匠に指摘されてああそうかと気付きましたが、これ猿之助演出ではあるけど、スーパー歌舞伎『オグリ』とは別ものなんですよね。これでもドガンドカンと派手なのに、スーパー歌舞伎だとどうなっているのか…み、観たい!

一幕における小栗と荒馬の格闘から碁盤に載っての曲馬、二幕退路を断ち闘いを制した浪七の絶命、三幕宙乗りで天空を駈ける白馬。ビシリビシリと見得を切り静止画になるそのさまの華やかなことと言ったら!キャー!か、かっこいー!粋ー!ブロマイド買うー!ってなキマリっぷりです。見得が決まるごとに鳴るツケにもテンションあがります。いやもう荒馬を乗りこなしたときの見得にはシビれたわ。後ろ脚のみでヒヒーンと立つ馬を表現するためにワイアーで馬の上半身をつり上げるのですが、歌舞伎の馬だから脚はふたりの役者さんがきぐるみに入っているんですよ勿論。で、前脚役のひとは宙に浮いてる訳です。その動きがイキイキしてて!すごい高さで!馬さん役の役者さんホント素晴らしかったよー。

それにしても二幕が白眉でした、立役の亀治郎さん大熱演。ちょー益荒男!ってなタイプではないからこその…あのーなんて言うんだ、マッチョではないからこその、僕の力ではもう無理!だから自分の身を犠牲にしてでも姫をー!と言う決死の行動として映る闘いっぷりが情に訴えまくりです。浪七ちょーいい子!(泣)櫂を繋いで舟の形にする場面も格好よかった…波の青、血の赤といった色彩も鮮やかで、めちゃ優れたヴィジュアルワークのめじろおし。

一、三幕での亀治郎さんは小栗判官役、王子っぷりがステキング。三幕での小栗判官とお駒の早替わりも見事。見掛けは勿論声色も全然違うし、なんと言うか身体の線さえも違って見える。所作の美しさでそう見せるんだけどここ迄違うとなんともまあため息が漏れますね。先日観た『HOPE JAPAN』でのギエムやルグリのような性を超越した美しさでした。で、そのお駒は小栗判官との結婚が破談となり母親お槇に殺されて化けて出る(いやーこの経緯も波乱バンジョー過ぎた。お駒もお槇もかわいそう!)のですが、好く役も好かれる役もひとりで演じる訳ですよ(笑)ニクいわー。

三階席だったので花道はモニタで観ましたが、宙乗りがすごく近くて亀治郎さんのちょうドヤ顔を有難く拝見。ドヤッ!白馬が暴れたヨ!と宙乗りの状態で馬をガタガタと揺するところがあってこっちの肝が冷えた…王子の無邪気は恐ろしい。固定してあるとは言え姫は文字通りお姫さま座り(馬を跨いでない)なので、滑って落ちたら…とか考えてしまったよ!高所恐怖症の役者さんだったらさぞや…笑也さん怖くなかったかしら。

亀治郎さんの立役を観る機会がこれ迄あまりなかったので、これからいろいろ観てみたいと思いました。いやあ格好よかった…。浪七の女房、お藤役の春猿さんもとても素敵。春猿さんの女房役って珍しい気がするけど、落ち着いた芯の強い女の魅力に満ちていてよかった…沁みた……。右近さん演じる胴八が斬っても斬っても死ななかったり(何度も訂正:琵琶湖でした失礼、に落ちるんだけど何度も這い上がってきて、その度「また!」と客席がドヨヨとわく)、獅童さんの橋蔵がアホの子だったり(演舞場で細マッチョゴリマッチョのおどりが観られるとは思わなかったわ)で笑いも満載。泣いて笑ってため息ついて。ああ歌舞伎っていいなあ。

先日亡くなった芝翫さんのこと、もうすぐ猿になる亀治郎さん(今「さる」の一発変換が「申」と出て、今後亀治郎さんがTeam申に出演することになったらネタにされそうだなあと思った)や中車さんのこと、菊地兄弟(秀行成孔)やチェブラーシカの話などをして帰宅。楽しかったー。