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2011年08月10日(水)
『天使は瞳を閉じて』

虚構の劇団『天使は瞳を閉じて』@シアターグリーン BIG TREE THEATER

シアターアプルでのインターナショナルヴァージョン以来ですから、約20年振り。その間上演された『コーマ・エンジェル』やミュージカル版は観ていません。虚構の劇団を観るのも初めて。客席には自分と同じくらいの世代、その上の世代であろうひとたちもかなり多かった。若い劇団にこの客層と言うのも不思議な感じがしました。終演後熱心にアンケートを書いているひと、見憶えのある光景だ。しかも劇場はシアターグリーンなのです。実際に第三舞台をシアターグリーンで観ることは叶いませんでしたが、劇場出口で挨拶をしている役者さんたちの姿を見て、あの写真の数々を思い出すひと、私の他にもいたと思います。

でも終演後、作品自体を初見だったと思われる若いお客さんが「すごくよかった!いいお芝居だね、いい話だね」と興奮気味に話していて嬉しかったりもしたー。

と言う訳で正直に言うと、第三舞台の面影と闘い乍ら観ると言う状態になりました。これは完全にこっちの都合です。次の展開や台詞がするする頭に浮かぶ。シーン毎に流れていた曲も鳴る。「おいでませ」は「アンジェリコ」なんだ、「総統」は「議長」なんだ。あの曲はもう使われないのか、ここの曲は絶対変えないんだな。一瞬一瞬を確認し乍ら観てしまった。基本的に演出が変わっていないこともそれに拍車をかけた。役者さんによっては台詞回しが第三舞台のひとたちとそっくりなひともいて驚いた。

しかし芝居そのものの力によって、みるみるストーリーに引き込まれていく。冒頭の描写はかなり変わっていました。もともとのストーリーがあれですから、現在を組み込んでも違和感はないだろうと思っていましたし、むしろより身近に感じられるだろうと覚悟してはいたのですが、実際この手のモチーフを描いた芝居を震災後に観たのは初めてだったので、受けたショックは大きかったです。曖昧な恐怖が像を結ぶのを見たかのよう。スクリーンに文字が溢れるシーンでは、一瞬席を立ち上がり悲鳴をあげる自分の姿が頭に浮かぶ程でした。そしてその後街をつくった人間たちの強さに希望をも持ちました。

それでも最後この世界がどうなるか、誰がどうなるか判っているし、それは変わらない。胸が締め付けられるような思いに駆られ、最後には涙が出た(つうかオープニングでもう泣いてた・笑)。現在と普遍が同居する、やはり名作です。

今回、それこそ20年前に第三舞台がきっかけで知り合った方たちと一緒に観たので、終演後の話にも花が咲いた。あれは鴻上さんの演出(演技指導)によってそうなるのか?それとも役者さんが第三舞台が上演したものの映像を観てあの演技プランにしたのだろうか?(それ程似ていたのだ)そして当時あのスタイルが80年代演劇だと思っていたが、今観るとあれはもはや鴻上さんのスタイルだったのかも知れない。意外なところで笑いが出たのにも驚いたね!最初の「さあ、握手をしよう」で笑いが出たのにはビックリした!ビックリしたビックリした!あそこ必ず私泣きそうになるとこなのに!なんだろうあれ、マスターが見当違いのところ向いてることに笑ったのかな…えーでもそれって……あでもね私の後ろのひとが笑った後に「まんまや」って言ったの。ええ?どういうこと?初演から変わってないってことが笑いに繋がるの?あともう一箇所意外なところで笑いが…どこだったっけ?(このとき思い出せなかったがもう一箇所ってあれだ、太郎に羽根が生えてきてスーツの背中が出っ張ってることにずっとクスクス笑いが…ここらへんはチャーミングな笑いでこっちも和んだ)。虚構の劇団の役者さんたちは、所謂第三舞台チルドレンなのか、全くそれとは無縁のひとたちなのか?役者さんとしては第三舞台のメンバーと比べられることについてはどう思うのだろう、しかしそうやって観てしまうこっちも失礼だよね…等々。

しかし、似ているとは言えコピーではない。演じているひとが違えば当然違う側面が見えてくるし、観ているこちらにも別の感情が生まれてくる。新しい発見にハッとしたり、今この時代にこの作品を観ることの意義に感じ入ったり。この作品を通して新しい集団、新しい役者との出会いがあったことに幸福を感じたりもしたのでした。

そしておこがましいけれど、この作品を書き上げた鴻上さんの年齢をとうに追い越した自分が観るこの世界に、以前観たときとは違う感情が多々浮かんだことも嬉しいことでした。その感情を引き出せたのは、役者さんの力によるところも大きいと思う。マイナーでヘヴィーなものは売れないと言われ続けたケイに、マイナーでヘヴィーなままでいい、それが受け入れられる場所は必ずあると声を掛けたい。反面、それだけ多くのひとに受け入れられることに飢えていたケイの心情を思うと軽々しいことは言えない。いやでもそこらへんは、図太くなったオバちゃんとして今ならおせっかい出来るかも(笑)。見たくないものを見てしまった人間たちに慟哭する天使の肩に手を置き、優しく抱きしめる存在はいないのだろうか?神さまは行方不明になっている。あの天使の姿を、決して瞳を閉じることなく見つめていたい。日々壁に向かうアキラの底抜けの明るさの裏にあるものは何だろう?終盤、マスターに“桃の缶詰”を投げた彼の姿にその片鱗を見た。あんな若者は、いつの時代にも、どこの世界にも存在する。

初見だったのにガッチリ面構えと声が印象に残る役者さんが多かった。名前も憶えたい……。ぴーとさんもツイートされてましたが配役表はあった方がいいと思います。パンフを買って見てね、と言うことだとは思いますが、あの役をやったあのひとは誰?と思ったときって、客電が点いた瞬間、一秒とかけず知りたいものなのです。ロビー迄行ってパンフ買って開く迄の数分すら惜しい。その数分の間に世界が終わるかも知れないしね(今ならすごい実感がわくわ)。

そしてマスター、大高さん。『ごあいさつ』の最後に「『虚構の劇団』に、『第三舞台』の大高洋夫を迎えました。」と言う文章を見付けて、開演前からジーンときていました。『ベルリン・天使の詩』で空中ブランコ乗りに恋をした天使が人間になったその後。今の年齢になった大高さんが演じるマスターは、より老成していて、より達観していて、だからこそより惑いが見られる人間。若者たちを見守り、人間たちを愛してやまないが故に一線を越えてしまう元天使でした。観ることが出来て本当によかった。

20年振りであっても、登場人物たちが身近な友人のように思える。そんな作品に出会えたことに感謝しています。