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2011年06月03日(金)
『6月のビターオレンジ』

『6月のビターオレンジ』@東京グローブ座

G2とはどうにも相性が悪いのだが、それがなんでかってのが具体的に判断出来ました。役者さんたちはよかったですよー、楽しめて、笑顔で帰れる作品です。情報殆ど入れずに行ったので、この日が初日だったと言うのは会場に着いてから知りました。なのでネタバレは極力避けたうえで。と言ってもすごくネタバレ書きたい(笑)。

今回加藤くんと城島くんを女装(ネタバレ故反転)させる、と言うワンアイディアから物語を作っていったのだろうなあ、と言うのを強く感じました。そのこと自体は別に構わないし、実際そのシーンはとてもウケていたし、観客席もとても盛り上がりました。しかしその脚本の構成がとてもひっかかる。ストーリーを正攻法でしっかり見せる、G2の演出自体は手堅くて好きな方です。だから自分はG2の書くホンが苦手なのだと思う。

「こういう演出をしたいからこうホンを書きました」と言うのが透けて見えるのがどうにも辛いのです。今回特に強くそれを感じた。アイディアを活かすための理由付けとして、彼らがその行為に到る原因を作らなければならない。じゃあこういう家族構成にしよう、こういうエピソードを描こう、そしてトラウマを作ってそれをハッピーな方法で解決させよう。それが逆算的に見えてしまう。アイディアのためにストーリーにとても残酷なことを強いているように思える。ひとの思いもひとの命も安易に使われる。あと謎解きの説明を全部台詞で済ませてしまうのも安易に思えてしまいます。

役者さんは皆素直に演じており、とても好感が持てました。久ヶ沢さんがまとも(と言っても変だけど・笑)な人間の役を演じているのを観たのも久々で新鮮だったわー。歳下の人間をたしなめるときの声のトーンもいい。そうだよこのひと実は芝居すごい巧いんだよ、演技すごくしっかりしてるんだよね……ここんとこ観るもの観るものこのひと本当に頭おかしいわーって印象のものばっかりだったので(笑)。いやーよかった。

加藤くんは『SEMINAR』での硬質なひんやりとした印象からガラリと変わり、軽妙なコミカルさを湛えた演技。終演後のロビーでは「『SEMINAR』とは全然違ったね!」「『SEMINAR』ではああだったけど…」と言う声を随分沢山聞きました。これからもいろんなタイプの役柄を観てみたいです。城島くんは客席からの反応を繊細に感じ取り乍ら、臨機応変に押し退きを調整していっているような上手さを感じました。

久保さんは流石の貫禄。内田さんは『アンチクロックワイズ・ワンダーランド』とはかなり印象の違う溌剌とした役で新鮮でした。中川さんは安定しているのに妙なおかしみがあると言う不思議なテイスト。身体の動きも微妙におかしい(笑)。朝海さんは台詞回しが独特だなあと思っていたら、宝塚の方だったんですね。謎めいた女性役にピッタリハマッていました。いい座組です。