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2010年04月17日(土)
『御名残四月大歌舞伎 第一部』

『御名残四月大歌舞伎 第一部』@歌舞伎座

朝の銀座は気持ちがいいですねえ。早起きして第一部です。『御名残木挽闇爭』『熊谷陣屋』『連獅子』。

『御名残木挽闇爭』は顔見世のような趣もあるので、後半はもう、若手の豪華メンバー揃い踏み。セリで上がってきてドーン!揃ってだんまり!思えば海老蔵さんて何度か観てはいるんだが、だんまりは観たことがなかった…もーすげー目力。海老蔵襲名の時のにらみを観たやまこさんが「ご利益ありそう!」と言っていたがホントそんな感じだったよ…すっぴんでも目がバッキリしてんのに、曽我五郎時致の扮装で、もうこどもが泣くでって言う。なまはげ?そんななか小林朝比奈の勘太郎くんはその扮装からして和む和む(笑)。と言うか、あの化粧あの衣裳なのにビッシー!と姿が決まるのでもうすげー格好いいの。

しかし、ただ立って姿を決めてだんまり、と言う構図は、役者の実力と言うかオーラの差と言うかが…残酷な程にあからさまになる。怖い。しかし努力でそこに到達するひともいる筈なんだ、その姿を観ていきたいとも思うものでした。

『熊谷陣屋』は中堅ベテランの皆さんでガッチリ。平家ものですが、この辺りによくあるこどもを身替わりに…と言うあれで、もうつらくてつらくて。吉右衛門さん扮する熊谷次郎直実が出家して、悲しみもしがらみも振り切って去る花道のシーンは、笠で表情が隠れていても全身から慟哭が立ち上がっているようにすら見えこちらも涙が出た…その後ごはん休憩だったので、ごはんはおいしいけど気分は沈むと言う複雑なことに。藤十郎さん演じる相模(熊谷の妻)と魁春さん演じる藤の方(平経盛室)は、このお芝居中ずーっと客席に背を向けて座り嘆き悲しんでいるのですが、もうその背中だけで泣けてきてしまう程なのです。すごい……。最近ちいさなこどもたちが酷くて悲しい命の落とし方をするニュースが多くて、どうしてそうなっちゃうんだろうと思うことも多いのでいろいろ考えちゃったな……。

そして中村さんとこの『連獅子』!何度観ても有難い、なんかここんとこ落ち込んだり具合が悪かったりなんだけど、これで厄が落ちた感じもしたよ…!あかん、めでたく明るくいこうぜ!いやもうホント、伝統芸能を観ると、自分の悩みなんてなんてちっぽけなのかしらーとか思ったりする…何代も積み重ねられてきた大きなものと、自分を待っている客席のひとたち。それらを一身に背負って、ひとり舞台に立つことって、どれだけのプレッシャーと充実感と、自分ではどうにもならないものに動かされている、と言う感覚を受け止めているんだろう。人間ではなく役者と言ういきもの、と言う言葉を使ったのはつかこうへいさんだけど、役者さんには本当に尊敬と畏怖を持っている。だからこそ、いい加減に舞台に立つひとには怒りを感じる。

あー、いろいろ思うことあって舞台そのものの感想があまりない…あれ?いつもか?いろんなことを喚起させられる舞台だったと言うことですとまとめる。

筋書きに舞台写真が入っていなかったので、公演の後半には入ったものが売られそう。ああ、両方買っちゃいそうだな……。