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2009年09月11日(金)
『屋根裏のポムネンカ』

『屋根裏のポムネンカ』@ユーロスペース2

イジー・バルタ監督24年振りの新作長編。この監督と言えば『手袋の失われた世界』を筆頭に、ちょっと不気味でダークなものを作るイメージでしたが、今回の『屋根裏のポムネンカ』は、かわいらしい作品でした。しかしそこはチェコアニメ、やっぱりどこかほの暗く、圧倒的な力の前に屈することなく前を向き、ガラクタへの愛が溢れているものでした。

屋根裏に放置されているトランクの中でくらしている人形ポムネンカとともだち。屋根裏が彼らの知っている世界の全て。くまのムハは駅長で、マリオネットのクラソンは妖怪退治が仕事。ねんどとがらくたで出来たシュブルトは、人間に踏んづけられて靴裏に身体の一部を持ってかれちゃったりするけど、あんまり気にしてるふうでもない。ポムネンカが銅像の手下に誘拐され、仲間たちは救助に向かう。ポムネンカも困難に立ち向かう。

チェコアニメと言えば人形劇からの伝統。その人形劇の発展にも、占領下に100年間も禁じられた母国語を守るためだったと言う歴史的な背景がある。代表的な監督は1950〜60年代に活躍したひとたちが多い。ここ数年でその頃の作品が随分日本でも観られるようになり、“当時”のものとして観ていたのですが、今回の新作でも作品全体のトーンにあまり変化がないのに驚きました。多少CGで上書きした線画がありましたが、人形の色合いや背景色が一緒。過去のものと新作を並列に上映しても、パッと見にはどっちが古いものか判らないのではないでしょうか。古いからこういうトーンなんだと思っていたけど、そうではないんですね。

ガラクタや使い古されたもので人形やぬいぐるみを作る。新しいものも汚してみる。と言っても単に汚くするのではなく、人間の手に何度も触れられた風合いにする。そこに住むひとたちと一緒に時を重ねてきたようなものばかり。そしてどの人形たちもデザインが素晴らしいんだなー。布製スリッパの寝袋で寝てるくまとかちょうかわいい。あと怒ったりムッとしたりすると、眉間に皺がくしゃって寄るのがちょーかわいいー。そういう表情の変化が繊細であーかーわーいー!

そしてどの作品でも(監督が違っても)必ずと言っていい程ぬいぐるみのくまの声をおっさんがあてている…なんでだ。チェコのくまのイメージっておっさんばっかなのか。あと動きがワイルドなのがいいー。コマ撮り独特の荒っぽさがチャーミング。おたまでシチューよそうとことか、おまっそれ投げてるだろみたいな(笑)あと食べものがおいしそうじゃない(笑)ねんどいろだからねー。そこがいいんだよ!

あとやっぱりどうにも話が…かわいいふりしていつも厳しいわ(泣)理不尽な不幸は誰にでもふりかかるとか、そういうの。そこで諦めない登場人物(ものか?)を描き、一応のハッピーエンドを見るのだが、不穏の火種は決してなくならない、またいつ災難がやってくるか判らない。それでも彼らはトランクの中で毎日誰かの誕生日を祝う。こういった一貫したテーマは、チェコアニメだからと言う無意識からにじみ出るものではなく、思想的なものも伝統として引き継いでいるのかも知れません。

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よだん:
・悪の帝国の親玉が銅像で(こういうとこにまた歴史を感じる)、その役は人間がやってるんだけど、どーもこの手の上半身像を見ると新春かくし芸大会のハナ肇を思い出すなー。世代…
・マリオネットのクラソンはチェコのおみやげの定番らしいんですが、ディテールがどうにもモテ王@ながいけんのファーザーに似ていた(笑)
・くまがガリク・セコ監督の作品に出てくるくまと感じが似ていた。チェコだからなのかは判らないけど。セコ監督は若くして亡くなってしまったので、短編作品しか残していない。本国ではもっといろいろ観られるのかなあ、日本では彼の作品集はひとつしか出ていない。長編も観てみたかったな