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2008年01月05日(土)
『キル』

NODA・MAP『キル』@シアターコクーン

うむむう、初演、再演と観てきて今回がいちばんストーリーが解りやすく感じた。演出がシンプルになってきているのと、脚本も若干変わってる…短くなったかな?と、あとなんだろう…単純にこちらが二演観ていると言うのもあるかな。

未知数だったテムジンとシルク、よかったですなー。私は好き。初演再演と堤さんがやってきて、初めてそれ以外のテムジンを観ましたが、妻夫木くんはギラッとした野心とともに追われる立場になった焦燥を弱さとして見せる素直さみたいなものがありました。人形に秘密を打ち明けるシーン、すごくよかった。あとハラグロに見えるとこもいいね、こどもを置いてゲーセンに行くあれね(笑)

シルクの広末さん、ルックスはこれ迄でいちばんシルクと呼ばれるだけのイメージに近い感じがした。衣裳もドンピシャ!声は序盤はモロ野田さん好み、と言うか野田さんがああ言う声出せって指定してるのかな?と思う程の“あの声”(野田作品における歴代主演女優の声のトーンを思い浮かべてみましょう)で、これは正直違和感がありました。二幕以降は、母親になったこと、テムジンから気持ちが離れたこと、結髪との関係と言う変化をメリハリつけて見せるためか自然の声になっていて、こっちの方がよかった気も。後半のシルクにはかなり持ってかれた。

よく話すことだけど、野田さんて声萌えだよね〜。

で、結髪ですよ!もーうもともとこの役はもう!もう!て役ですが〜〜〜勝村さんがもう!もう!好き放題!一幕はおまえやりすぎじゃと思う程ですが、二幕はもう〜!わかってんのに泣いたがな!にくらしい!うわーん!どうなるか知ってるのにシルク走れ!早く!とかもーねーえええ(泣)てか格好よすぎる…ズルい……醜男って設定なのに勝村さんじゃ醜男じゃないしな!とか言うと初演のいっけいさんや再演の古田さんが醜男と言ってるみたいじゃないか!違う!言いたいのはそういうことじゃないー!(書けば書く程フォローにならない)

長丁場で心配だった声も皆さんしっかりしてた。ポロロンとガイドが滑舌ちょっと苦しかったな、受け取りきれない台詞がぽろぽろあった。でも中山さんもしんぺーさんもいい味出してました。そう考えると高田さんと勝村さんの役者としての超人っぷり…如実に出ますね、こういう全身を使う舞台だと。あれだけ身体が切れて台詞がバシバシ伝わるのは、“超人”なんだ、やっぱり。

野田さんが終盤の「ろ〜う」が伸び切らなかったり声がかすれたりして、感慨深いものがあった。でも、こうやってひとりの役者の老いを観続けられるのは、幸せなことかも知れないとも思った。作風が変わって行くことも。今野田さんが、こういう言葉遊びが美しく詩情溢れる作品を書く必要を感じていなくとも、過去にこうして書かれたものは、その時代時代の役者たちが舞台に立ち上げ、現在に甦らせることが出来る。そして、野田さんが書く新作はいつでも楽しみなのだ。秋にはトラムで『現代能楽集IV』が決まっている。

前の席過ぎて、布を多用した演出やいっぱいに広がる青空をひきで観られなかったのが残念。本当に美しい舞台だから。