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2007年11月03日(土)
服部一成『視覚伝達』とか

服部一成『視覚伝達』@Gallery 5610

ギャラリーの入っているビルの前には、駐車場も兼ねているのだったか、ちょっとしたスペースがある。門から建物迄、空が拡がる空間を歩く。ビルが建ち並んでいる青山の裏道の、そこには意外な開放感がある。

建物が道から離れているので、ギャラリーがあることは判りづらい。ビルへの角を曲がると、目印にぽつんとケーキのイラストが飾ってあるのが見える。ラインのみで構成されたケーキが、まるで発光ダイオードのように鮮やかに輝いている。近付くと、それは多色刷り(多分シルクスクリーン)の印刷物だった。ポスターそのものが発光しているよう。しかもそのラインは、プロセスカラー(CMYK)のベタ構成。はっとするインパクト、至極シンプル、とてつもなく格好いいグラフィックデザイン。

B全サイズのポスター20点強。広告の仕事は全くなし。旗、ケーキ、天気予報のアイコン等のモチーフを、多色刷りの平面構成で4〜5パターン。前述の通り、蛍光色等は使わず(グレーやアンバーは特色が使われていたが)、殆どがCMYKベタのライン構成。網は使っていない。それなのにリアルな立体感。騙し絵のようですらある。印刷物の綾(彩とも言えるか?)を知り尽くした、そして追求し続ける“グラフィックデザイナー”の姿がここにある。視覚伝達、そうだ、グラフィックデザイナーの仕事とはこれだった。クリエイティヴディレクションともアートディレクションとも違う、グラフィックデザイン。

広告の仕事では写真起用も多く、そのどれにも洗練された格好よさを提出するひとだ。キユーピーハーフや、ビル・ヴィオラ『はつゆめ』や。そこには、アイディアを提供するクリエイティヴディレクターや、現場監督とも言えるアートディレクターとはまた違った佇まいがある。伝えなければならない情報を的確に視覚化する為に必要な画像と、文字の構成を考え、選択し、配置する仕事。個人的にグラフィックデザイナーの仕事は、匿名希望の自己主張だと思っている。

ポスターをA4サイズに縮小したパンフレットも販売されていた。こちらは全てCMYK。特色部分は網になっていた。それでもデザインの強度は変わらなかった。加工に左右されないのだ。グラフィックデザインは、進んでも進んでもまだ謎がある、鉱脈がある。それはどの仕事もそうかも知れないが。

服部さんのポートフォリオ、インタヴューはこちら。上の感想書いた後読んだんだけど、やっぱりグラフィックデザイナーとして、なんだなあ。ちょっと嬉しかった。

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■服部さんトリビア(?)
1987年、ZAZOUS THEATERの旗揚げ公演『モノクローム・ビュー』の宣美を手掛けています。
THEATER/TOPSのサイトの載ってるチラシの裏面が、ビニール袋に入った水とその結露を撮ったモノクロの写真で、とても美しいんだよー。どこにであるモチーフなのに、トリミングの妙と、トーンのメリハリで魅せる

■鈴木成一さんも
第三舞台の宣美をずっと手掛けていたし、なんか、すごいよねえ、ここらへん……

■そうそう
青木克憲さんも東京ギンガ堂の宣美やってたな。劇場では毎回山のようにチラシ束を貰いますが、やはりめくる手が止まる

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■ねむりねこ
『雑踏の中で「眠り続ける猫」出没のナゾ』
服部さんとこに行く前に、原宿で見掛けた。実際に目にしたのは初めて。表参道と明治通りの交差点、ラフォーレ前の横断歩道そばの高いところに置かれていた。写メを撮るひとだかりから、黄色い声が飛んでいる。
おおきなねこはぴくりともしない。こねこは起きていて、明らかにおびえきっていた。あんまりいい気分はしなかった