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2006年09月16日(土)
『オレステス』

『オレステス』@シアターコクーン

いきなりネタバレします、未見の方はご注意を。

『ユナイテッド93』観た翌日にこれかい!ラストシーンで劇場中にバラまかれたビラには、パレスチナ自治区、イスラエル国、レバノン共和国、アメリカ合衆国の国旗と国歌が記されていた。蜷川さんはホント大人げない…そこが好きだ……。かなり強引な収拾のつけかたをするギリシャ悲劇ですが(神が出てきて一件落着かい!と言う)、それを現在、ここで上演するにはこういう演出が必要だったということか。復讐の連鎖はいつ迄も終わることがない。

『ディファイルド』の時も図書カードまいたけど、これは天井の高いコクーンではとても効果的。

『エレクトラ』に続く、女性コロスはやはりいいです。群唱が綺麗。しかし序盤は雨の力(音)に押されていたか、台詞が聞こえづらかった。中盤〜終盤にかけて、エレクトラの共犯になっていくコロスの緊張感には目が離せなくなった。喪服のような衣裳、鈴のついた傘と、ヴィジュアルもよかったです。ただ傘がビニ傘なのはちょっと…これは傘の中にいる役者の表情が見えるようにと言う配慮かも知れませんが、やっぱりちょっと、ね。他の役者さんの衣裳類が具象なので尚更。鋼太郎さんの鎧、すっごい重そうだった…。八百屋舞台だし、雨で床は滑るし、マントは長いし、動くのが大変そうだった。

雨の力がかなり強い。まず音。結構な量を結構な頻度で降らすので、それに負けない声を出し、なおかつ観客が聞き取れるように台詞を通さねばならない。そして体力も相当奪われる。藤原くんは半裸で狂乱の演技を続けるので、どんどん身体に傷がついていく。実際見えるんですよ、怪我していくのが…擦り傷や、打ち身や、床との摩擦で皮膚が灼けたりとか。公演始まって何日だ?大丈夫か?と心配になる程でした。

役者陣への“縛り”がかなり多い演出だと思います。その中でどれだけ暴れられるか、と言うところに目が行きます。プリュギア人役の横田さんが、短い出番ながら観客を惹き付ける演技をしていました。ここでちょっとリラックス出来た…かなり終盤だけどね。それ迄はもうずっとどテンション芝居。やる方は大変だろう。その中ピュラデス役の北村くんが、抑えた演技なのに力強く印象に残る。藤原くんの激しさと対比して、面白いバランスになっていました。

とまあ、出演者の心配ばっかりして観ていましたよ…で、そういうとこに注意が行っても理解出来る展開なのです。台詞も説明的でとても判りやすい。それだけに…なかなか……上演するのは難しい戯曲なんだろうなと思いました。腑に落ちないところも多い。まあそれを気にしては、ギリシャ悲劇を観るのはキツいですが。しかし『エレクトラ』ではまだ納得出来る部分が多かったんだよな…今回は、最後のあの演出がなければ、そりゃないよ!と思っただろうな…。

初日よりは雨のシーン減らしたそうですが、出演者の皆さん、千秋楽迄無事演じきってください。