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2006年06月03日(土)
『メタルマクベス』

SHINKANSEN☆RS『メタルマクベス』@青山劇場

これの前にお茶してて、キャラメル食べたら歯のつめものがとれた…何かものすごく戦意を奪われるね歯が弱ると…。

で、本編で「キャラメル噛んだらダメよ、歯にくっつくから」って台詞があって白目になった。

とまあ予想外のところでショックを受けましたが、いやー面白かった。シェイクスピアは著作権が切れているので好き放題に翻案出来る。'80年代のメタルバンドと2206年の将軍。両者の成り上がりと凋落が、見事に『マクベス』として描かれていました。やっぱりクドカンは巧い!「俺は帝王切開で生まれたんだ!」て台詞でドッと観客が笑ったのも爽快だった。そうだよここは笑うところだよ!『マクベス』観たことあるひとは皆ここ引っかかってると思うんだよね、無理があり過ぎるだろう!って。ここで笑えたのにはスッキリしたなあ。

とは言え、国を継いでいくマルカムが物語を締める原作とは違い、グレコ(マクダフ)がランダムスター(マクベス)のちぎれた右腕を掲げるラストにしたのは随分思い切ったなあと思った。最後レスポールJr.(マルカム)出てこなかったもんね。ランダムスターの右手は、死ぬ時に掲げたメロイックサインを示している。敵ながら天晴れと言うところだろうか。

ええと私クドカンとほぼ同世代なので、'80〜'90年代の日本のメタル〜パンク〜宝島〜バンドブームを目の当たりにしている訳ですよ。で、ちょっと退いて見ていたって自覚もあるのですよ。うーんメタル?あのファッションにあのメイク、髪型、どうも笑いと紙一重…みたいな。一幕はその描写が容赦なく提示されます。リンスはお湯に溶かして使えとかダイエースプレー買うてこいや!ウルトラハードで頼むでしかし!てなもんで。メタル演歌のとこもドンピシャですよ…合うんだ演歌とメタル。

二幕ではポジパンが登場し、それ迄トレーナーを着て目黒鹿鳴館に集っていたファンの子たちはあっと言う間にラバーソウル、ボーダーのタイツ、ショートカットのファッションで新しいバンドに移っていく。マクベスは「SIONかと思った」と言われちゃう。こういうとこも鋭い…厳しい…。マクベスは起死回生を賭け、歌舞伎町の歩行者天国でゲリラライヴを敢行する。

情けない、間抜けだ、嘲笑の的になる。それでも時々、「うおお格好いい!」と思う一瞬がある。その「うおお格好いい!」と、とことん笑わしたるでえが絶妙なんですよ…クドカンも新感線も。電源落とされてアンプが使えなくなったランダムスターが、崩れ落ちる城の中でメロイックサインを高々と挙げて滅びていくシルエットにはもう鳥肌が立ちましたね…うおー格好悪い筈なのに格好いいよ。笑えるのに泣けるよ。

内野さんの歌が序盤ちょっと弱く感じたのですが…メタルな唄い回し的に弱いなと言う意味で。また王付きの専属歌手(道化的な役回り)=冠さんがそのメタルな歌で場をかっさらっていたのでうーんこれはちょっと不利?と思ったのですが、後半は盛り返していました。小物が成り上がるにつれ自信を付けたと言う役作り、と解釈すればいいかな。そして松さんはやはり巧い。とことん弾けられるし、とことん狂える貴重な女優さんです。歌も素晴らしかった。

で、『マクベス』と言えばいちばん格好いいのはマクダフとマルカムです(断言)。配役情報入れないまま観たんですが、蓋を開けてみればマクダフは北村くんでしたよ!おおおおおい!う、嬉しい!長身で細身で脚が細く長いので、メタルなファッションが似合うよ!後半のストーリーを引っ張る上にあのラスト。力のある役者さんじゃないと務まらない役を見事に演じ切っておりました。マルカムは前述の通り、結構バッサリ見せ場が切られていて勿体なかった…森山くんが伸びやかなダンスと演技でとても良かっただけに。ESP国に攻め込んで行くシーンで、客席中央の通路上に上って観客を煽る姿が格好よかったです。うーん惜しい、このマルカムはもっと観てみたかった。

そしてレスポール王(ダンカン)の上條さんが“メタルゴッド”ロブ・ハルフォード に見えました(笑)流石の貫禄、歌唱力。キング!

これ、ブロードウェイ辺りでやったら当たるかも知れない。メタルのあの微妙なおかしみと哀愁ってのは万国共通なんではないかな。あとこの手の舞台は、観客のレスポンスが出来を左右するところもあると思います。ノリのいいアメリカ人に観てもらいたいなと思いました。