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2006年04月08日(土)
『カラフルメリィでオハヨ〜いつもの軽い致命傷の朝〜』+α

NYLON100°C 28th SESSION『カラフルメリィでオハヨ〜いつもの軽い致命傷の朝〜』@本多劇場

9年振りの再演。'97年の公演は、近しいひとが亡くなった直後に観た。直後過ぎたので、実感がなかった。本多劇場の後ろ〜の席で、ぼんやり観ていた。よく笑った。

ぼくたちは100年後にはもういない/いたとしてもかなりヤバい/いつか死ぬ/きっと死ぬ/人間の死亡率100パーセント

ラストシーンのこの歌を、ああそうだよなあ、と妙に納得しながらすうっと聴いた。「いたとしてもかなりヤバい」ってところには、やっぱり笑った。

ケラさんが「一生に1本しか書けない特別な台本」と言っている、唯一の私戯曲。父親を看病する病室で書かれた台本が少しずつ稽古場に届く。演出は手塚さんが兼任した。初演の千秋楽の前日に父親は亡くなった。有名な話だ。でもドキュメントではない。これは、あくまでも、ケラさんの書いた「作品」だ。どんな深刻な状況でも「ここ、書けるな」「ヘヴィーな場だけど客観的に見れば笑えるんじゃないか?書こう」と思っている。その醒めっぷりと、笑いに対する執着心。死んでいったひとを笑い飛ばす残酷さと、それ以上の愛情。

今回で4度目の上演になる。以下ネタバレあります、未見の方はご注意を。

開幕2日目にしてこの仕上がり。凄い!ちょっとした笑いのタイミングのズレはありましたが、こういう部分の精度は、後は上がる一方でしょう。レギュラーメンバーは無論、ゲスト陣が皆いいです。大倉くんが深刻さを一身に背負う役なので、本人はしんどいかも。でも、その分ストーリーの重い部分はしっかり伝わります。この重さがあるとないとでは大違いなので。峯村さんの、ボケてるようでいて裏はドロドロに深刻、と言う役どころも、あの声とあの動きだからこそ滑稽で、そしてとても悲しい。

しかしそれが笑える。深刻なところで真剣にやってることが相当笑える。これは身に覚えがある。倫理とか道徳とか理性とか、そういうものは笑いの前には何の抑制力もない。同時に嫌悪感も起こる。そのせめぎあいで約3時間を過ごすことになる。結果的には笑いが全てを凌駕する。

『労働者M』の時は引っかかった映像の使い方も、今回はドンピシャ。駆け出していく登場人物たちがすっと消える光景にはゾッとさせられました。

1985年と言う設定の必然性は薄れつつあった。あのひとは日航機に乗ったんじゃないかな、と暗示させる台詞がなくなっていた。こうやって忘れられていく。いずれこの作品も再演されなくなるだろう。でも、心にはずっと残る。

終盤のナンセンスギャグの連打は、普段のケラ作品では不条理のまま観客に投げられる。しかしこの作品では、混濁した祖父の頭の中で起こっていることとしてストレートに受け取ることが出来る。海に近い病院を、頭の中にいる仲間と共に抜け出す。病院を出られた、何をする?アメリカに行く、しいたけを採りに行く。そんなことを話している間に、仲間達はひとりひとり死んで行く。海水に溶けてしまったり、身体がどんどん膨らんで破裂してしまったり。

膨らんでいく仲間の身体は途中からハリボテにすり替えられ、天井から吊されて降りてくる。お腹の風船がどんどん膨らんで、最後には弾けてバラバラになってしまう。この笑えるバカらしいシーンで、何故か涙が出てくる。こんなリアリティの欠片もないシーンで?端から見るとかなりヤバい、不思議な光景だ。劇中の台詞のように「ゲラゲラ泣く」状況。でも、これこそが演劇なのだと思う。極端な話、こういう力がない作品は演劇とは呼べない。

そうやって、亡くなっていったひとのことを思い出す。忘れている時もある。でも思い出せるってのは、いいことじゃないかな。いずれ自分もそっちに行くんだ。そして忘れられていく。それも、それでもいいじゃないか。

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■再始動だよ!
明後日で、倉森さんが亡くなって1年になる。この1年の小松さんの仕事っぷりは周知の通り。
今日、仮チラシが折り込まれてました。
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サモ・アリナンズプロデュースNO.24@本多劇場
2006年11月29日(水)〜12月3日(日)
作:千葉雅子
演出:オクイプレジデント
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強力助っ人陣!また今度とか言ってられませんよ

■素面でこういうこと言うと
頭おかしいと思われそうですが言わずにおれん。
松尾ちゃん家のオロチってさ…ねことしては面白い顔だよねー、誰かに似てるんだよな、誰かに…とずーっと思ってて、昨日気付きました。
チバユウスケに似ています。
……ホントだって!ねこだひとだってのは頭からとっぱらってよく見てみてよ!すごく似てるよ!
ああスッキリした