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2005年06月26日(日)
『隣りの男』楽日

M&O playsプロデュース『隣りの男』@本多劇場

いやあもう感無量です…いろいろ考えた…。大森南朋って役者さんを好きでよかったと思った…。なんかもー終演後はシモキタの喫茶店と呑み屋をハシゴして6時間近く語りあいましたよ。いい舞台を観たあとは話が弾むね!ごはんがおいしいね!酒が呑めたらきっとウマい酒だったろうよ!

初日+2回目の感想にいろいろ補足などを。

■初演の役者さんに当て書きされたかなと思わせられる点
例えば、最後の台詞「なんだこれは!」は、竹中さんの十八番・ジーパン刑事@松田優作さんから連想されたものではないかな、とか(笑)、宮地が来る前夜ソワソワして、2階の掃除を始める竹田の落ち着かない様子などは、竹中さんのしゃかしゃかした動きから笑いを誘うものとして書かれたのではないかなと思いました。バケツの水をひっくり返した時の「アーッ!」なんて、あの甲高い声で叫んだんだろうなあとか。
どちらかと言うと小柄な竹中さんがちょこまか動いて笑わせる、ある意味サービス的な面もあったのかも知れませんが、今回大柄な大森さんがどったばた動いても面白かったんです。うわードンくせーって感じで。うわーんこれ賞賛なんですよ!
戸田さんにしても、岩松さんのねっとりとしたいやらしさ(笑)とはまた違った、刃物のような視線やニヤリと笑った時の歯の感じがとても怖かった。
登場人物の服装や、メイク、髪型、ドデカホーンがあったり黒電話があったりと、見てくれの古さとは裏腹に現実感は切羽詰まるものがあった。戯曲の強度を思い知らされた感じもしました

■“枷”があった方が生きる
逆から見れば「提示されたルールを守っていれば、あとは何をやっても構わない」と言うことでもあります。話の本筋から外れない上でのアドリブ的要素が増え、活気が増していました。予想外のトラブルを巧く笑いに転化していたり。八千代が竹田に迫るところで、いつもはふたりをぐるぐる巻きにするんだけど、この日は椅子の下に紐が挟まってしまってとれなくなってしまいました。そこを砂羽さんが「これをッ、こうしてッ、こうしてッ」と色っぽい声でうんうんうなって自分をぐるぐる巻きにしちゃっててウケたー。
戸田さんも「この横分けメガネ!」って悪態ついたりね(笑)

■どうでもいいが
週末スマパンのベストDVD観直してて、これの「TONIGHT, TONIGHT」に出て来る宇宙人そっくりの動きを戸田さんがしたんで(「ゴーストバスターズ!」びょーんびょーんのとこ)ひとりでツボにはまって爆笑してしまった。
話それるがホントこのクリップ集クオリティ高い。久々に観たけどやっぱりすごいなあ

■そんで
ゲストで小林薫さんが出演されたんですが(2週目のいつからか、連日出ていたらしい)ここ、ほぼフリーだったのかな?もうからむからむ。竹田にメガネ修理を頼みに来た設定で「俺にだって私生活はあるんだよってか?」と家の中に興味津々。千秋楽だったためか「もうちょっといさせてくれよ」と長居をし、さんざん大森くんをいじって帰りました(笑)
こういうとこもライヴ感があって楽しかったな。
カーテンコールで出てくるかな?と思ったが「PRIDE観るんで埼玉行っちゃった」そうです(笑)

■りんごとは別の場所にもう一箇所シミが出来ていたような
照明の具合でそう見えていただけでした、失礼しましたー

■宮地のアキレス腱
今回は見えた、ストッキングと言うかタイツの飾りでした。赤い花の刺繍がぶら下がっていた

■ディズニー
これも時々出てくるモチーフだな。岩松さんディズニー好きなの?

■終演後の語りあいで
出るわ出るわ深読み大会。これが面白いんだよ岩松さんの話は!ミステリーとしても読めるし、コメディにもなる。
漆の置き物を埋めたり掘り返したりするのは何かの暗示?天井のシミには何か理由があるのでは?八千代がいなくなった時、竹田が落ち着いて見えるのは八千代がどこにいるか知っているから?それともいなくなってホッとしているから?八千代が兄のところへ行く時、必ずそこに独身男性がいるのは何故か?
人間の心の奥にある、触れてほしくないところをほじくり返す。見ないふりをするからこそ続けられる生活もある。いや、殆どがそういうものだ。そこを見せつける。当事者にしかわからない会話を描くので、第三者は断片しか見る・聞くことが出来ない。そこで何らかの事件が起こったとしても、それは第三者からすれば想像でしかない。
岩松さん、嫌いだなー、怖いなー。そんで好きだなー、面白いなー

■最後の八千代の声
「まだあげそめし前髪の〜」(島崎藤村の『初恋』ですね)は戯曲に明記されているんだけど、その後に流れる「あなたに許してもらわなければ、私には帰る場所はないのだ」(うろおぼえ)と言うくだりはない。これも何かの引用なんだろうか

■ちなみに
戯曲には、海へ行く話も、ロマンスカーのいちばん前の席でロマンス(笑)のくだりもない。文面の限り、八千代は竹田の部屋にはいない。初演ではどうだったんだろう。こっこっがっ、演出家・岩松了の恐ろしいところでもあるなあ。劇作家としても充分恐ろしいのになあ

■余談
『シブヤから遠く離れて』(昨年の自分のベストワン。感想はこちら)の時、戯曲に出て来る花のモチーフはゼラニウムだけだったんだけど、蜷川さんが真っ黒に枯れたヒマワリを舞台一面に配して岩松さんを驚かせたそうだ。こういう劇作家と演出家のガチンコバトルも楽しいよねー

■で
おーもりくんなんですが。
いやホント今回はよかった…いろいろ言いたいことがあるんだけど言葉になりませんわ〜、と言うか、昨日の呑み会で語り尽くしたんでもうねえ(涙)
まあちょっと書けば(書くんかい)竹田の孤独感がひしひしと伝わってきて、すごく切なかったです。あの古い家屋に5年間ひとりで住んでて、隣りの夫婦は自分ちに入り浸ってて、そのダンナは変な執着心があり、嫁はオンナ特有の気紛れで自分を振り回す。今度来る下宿人はちょっとおかしな女かも知れない。でも何かを期待せずにはいられない。日常をちょっと変えたいと思っている。でも、日常がちょっと変わること、と言うのは、自分の人生がちょっといい方向に動くか、とことん悪い方向に動くか、どちらかはわからないものだ。
巻き込まれるままにしておいた方が楽かも知れないし、安心かも知れない。でも、その「ちょっといい方向」を、ちょっとだけ期待している。そんな感じを、大森くんの竹田は、あの大きな背中ともっさりした横分けメガネ(笑)の佇まいで見事に表現していました。勿論見かけだけでなく、ちょっとした仕種、声色の効果も大きい。
カーテンコールでは前髪が全部落ち、表情も大森南朋に戻っていた。そのギャップにハッとしました

■最後のあいさつ
大森くんの仕切りで役者紹介、岩松さんを呼び込んで、小林さんは帰っていたので(笑)岩松さんが挨拶後、大森くんが大きな声で「本日はありがとうございましたっ!」と言いました。普段クールに振る舞って、醒めたイメージのある大森くんがあんなに熱い挨拶をするとは思わなかったので、驚いた反面ぐっときた。ちょっと泣きそうになった。春からいろいろあったし、ファンとしてはなんつーかまー、心が痛むこともあったんでね。
本人も手応えがあったんじゃないだろうか。これからの仕事も楽しみだな。おつかれさまでした

■戯曲
何故か劇場では販売されていませんでしたが、Amazonにはあります。興味のある方は是非。
『隣りの男 ―岩松了戯曲集』岩松 了

岩松了3本連続公演、これにて終了〜。面白かった!岩松さんの作品には再演してほしいものが沢山ある。またこういう企画があれば嬉しいな。

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■帰宅したら
丁度情熱大陸やってて、予告編で菊地さんが出た!うっはーホントにやるんだね!クアトロの「HARD CORE PEACE」がガンガンにかかって、当日のことを思い出してぞわっときた。オンエアが楽しみだ