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2005年04月02日(土)
『隣人13号』

『隣人13号』@シネクイント

えーとね、すごくいい作品です。巧い!と思った。でも、ひとに勧めるのは難しい。5つに項目を分けます、ネタバレあります、原作は未読です。

■話・構成
娯楽作品としてとても巧くまとめてある。でも問題提起はしっかりある。この作品R15なんですが、むしろ15歳以下の子供に見せたらいいんじゃないのと思ったのですが。が。
今の自分の年齢で観たからそう思えるのかも知れないなとも思うんだよね…。その歳の子供が観て、「いじめはよくない!」「いじめられてる子は勇気を出して抵抗した方がいい!」と受け取ることが出来るかどうか。子供のいじめって、正直それ自体に意味を見い出せてるとは思えないので…。13号(大人になっている)の殺人は目的意識がハッキリある。そこの違いをどう受け取るか。
いじめた方が全面的に悪いか、いじめられてる子が抵抗しなかったから悪いかと言う微妙な問題もあります。
そこを、ふたとおりに分かれるラストで、バランス良く着地しています。13号と言う人格が生まれていた場合の結末と、生まれていない場合の結末。卒業アルバムのエピソードが巧く使われています。

■演出
殺害シーンが巧み。引きの撮影、加害者の背中に覆われて被害者が全く見えない構図。刺してる、殴ってるシーンは巧妙に隠されている。これが効果的!個人的にいちばん怖かったのは、13号が関くんを殺すシーン。真っ昼間で、外(建築現場)で、すぐ側の通りをバイクが走り抜ける。数メートル先で殺人が起こっているのに、誰も気付かない。残酷なシーンもありますが、過程を隠して結果だけを見せるところが多く、その過程を観客が想像することになり、恐怖感が増します。

■ビジュアル
事前に何かで読んだ記事でミシェル・ゴンドリーとスパイク・ジョーンズの名前が出てきていたので、トリッキーな面があるのかなと思っていたのですが。使い方が巧い!奇をてらってない、適材適所。アニメの導入も自然だし、小屋の中で向かい合った十三と13号が踊るシーン(しかし何故小栗くんだけ全裸なんだ。獅童さんも脱ごうよ!(笑))も、イメージの視覚化として効果的。小屋の扉から外にはねとばされるとそこはアパート、と言う掴みも巧い!

そうそう、演出とビジュアルに、いい意味で隙間がないんです。無駄もない。機能的と言えるくらい。

■役者陣
不思議とだんだん似て見えてくるんです、獅童さんと小栗くん。入れ替わる部分をCGで混ぜてるところは勿論あるんですが、そうでないシーンでも似てる…と感じたところが沢山あった。
獅童さんが…マジで怖かった…きっとあの子役くんはマジ泣きしてた!イタコかってくらい13号が降りてるー。声の使い方がすっごく気持ち悪くて、怖くて、不快だったー!役者って怖い!(泣)
小栗くんは役の性格からして大人しめの演技なのですが、その抑えっぷりが巧いなあと思った。元々華のある役者さんだと思うんだけど、それを封じてるのがむしろ凄い。地味〜です。
新井くんはうわーホントこいつワルかったやろとつい思ってしまうような…。追いつめられてる時も変に落ち着いてるところとか。「わああ!」とか「ひいい!」とか極力言わないところが、肝据わってる感じで迫力ありました。それにしてもこのひと、ウンコがらみの芝居多いねー(笑)
由美ちゃんは特攻服がとても似合ってました。さ、流石(笑)

■個人的事情
現在正に隣人(上の住人)がヤヴァくて参ったなと思ってるところに観たから凄く、凄く怖かった!パンフレットで、原作の井上三太さんが「以前近所に住んでた頭おかしいひとのことがヒントになってて」「警察がいて、法律があって守られてる筈なのに、サイコが相手だとこっちも原始的に闘うと言う対処しか出来ない」と言っててますますブルブル。三池監督みたいに「うるせー!」って言ったら刺されちゃうかなあ…。
上のひと、ホントはいいひとだといいなあ、単に痴話喧嘩してるだけだったらいいなあ(泣)最近は静かになってます。そのまま仲良く暮らしてくれ!

■おまけ
三池監督と言えば、キャラクターの仕込みが面白過ぎました。その姿の意味は!(笑)

うーん、いろいろ考えちゃったな…。気持ちが落ち着いてる時にリピートしたいようなしたくないような。でも観て良かった、ホントに。