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2005年03月19日(土)
自転車キンクリートSTORE『海辺のお話』

自転車キンクリートSTORE『海辺のお話』@俳優座劇場

上の住人は、最近ではひらいけんを夜中の3時に熱唱するだけでは物足りないらしく、明け方の5時とか6時に大乱闘を始めます。冷蔵庫並に重い物を落としただろう!と言うくらいの音と地響きが!投げ飛ばし合いとかしてんのかな…目も覚めるっちゅうねん。あまりにもあんまりなんで大家さんに相談したら「学生の男の子ふたり暮らしで、大親友らしいんだけど…」とのこと。大親友がどうして明け方に乱闘すんねん。しかも叫んでる!号泣とかしてる!丸聞こえ!引っ越して来た時はちゃんと挨拶にも来て、礼儀正しい子だなと思っていたのに…どうしてくれよう。数カ月は何ごともなかったのになあ。やはり他人が一緒に暮らすってのは難しいことだよなあ。ましてや一生を共にするとなると?

と言う訳で昨夜も上がうるさくて眠れなくなり、寝ぼけ眼で観に行ったので前半はうとうと…すみません…。そして後半は、他人が一緒になるってえのは〜てことを延々考えながら観る。以下ネタバレありです。

海辺に遊びに来ているチャーリーとナンシー。退職もして、余生を静かに過ごしたいと思う夫チャーリーと、3人の子供たちを立派に育てあげ、残りの人生を有意義に過ごしたいと思う妻ナンシーのすれ違いが描かれていきます。長年連れ添った夫婦だけど、決定的に価値観が違う。今からでも離婚したいと思い始めるナンシー。会話はどんどんすれ違い、ふたりの心もどんどん離れていく。そこへレスリーとセアラと言う夫婦が現れます。彼等はちょっと奇妙な夫婦です。えーと、トカゲなんです。ええ、姿が。海からあがってきた両生類と言った風情です。

チャーリーたちはそりゃもう驚いて大騒ぎになりますが、不思議なことにレスリーたちと言葉が通じます。意外と言葉が通じると安心するもんだよね(笑)4人は会話を始めます。人生について。夫婦について。死について。

愛情の概念がなく、「それって何?」と問うレスリーたちですが、レスリーはセアラを大事にしています。終盤チャーリーはセアラに「レスリーがいなくなったらどうする?」と問います。多分死の概念がないセアラは応えます、「探しに行くわ」。「それでも見付からなかったら?二度とレスリーが帰ってこないと判ったら?」今迄考えもしなかった可能性を突きつけられ、セアラは泣き出してしまいます。それを見たレスリーは、「何でセアラを泣かした!こんなことセアラは初めてなんだぞ!」とチャーリーの首を絞めるほど激怒します。

つがいになり、交尾をし、卵を沢山海に放し、雄は雌を守る。全て本能からの行動です。それでもレスリーに、セアラへの愛情のようなものを感じるところが面白い。見かけはトカゲなのに(笑)小松さんがめっさ格好いい!あれは惚れるって!あんな格好いい小松さん初めて観たよ…。リーフレットに本人も「あーいう格好してるからできる。普通にスーツとか着てたらできない」と言ってましたが(笑)格好いい小松さんを観たいひとは観に行くといい!ホントステキだから。理想の男がトカゲの着ぐるみ着てるだけと思えばいいから!

レスリーとセアラは人間が進化する以前の姿かも知れないし、進化したものがひとまわりした姿なのかも知れない。別の世界に暮らしている自分たちかも知れない。チャーリーが子供の頃海に潜って遊んだことを話すシーンがあります。チャーリーはレスリーかも知れない。とっくみあいをしたふたりは、最後握手しようとします。握手と言うものを知らなかったレスリーたちに、ナンシーが教えたものです。しかしふたりが握手をしようとするその時、当のナンシーが「だめ!」と叫びます。やっぱり解り合えないか。それは仕方のないことです。それでも、何とか解ろうとする努力は忘れてはいけないんだと思います。諦めないと言うのは難しいけど。

と綺麗に締めたいけど、上の住人はお互いを解り合う云々の前に周りの住人に迷惑かけてるってのに気付いてくれ…どっか引っ越してくれ…。

見かけのインパクトもありますが、小松さんと歌川さんのトカゲ演技はとてもチャーミング。トカゲ動きなので、かなり身体はキツいんじゃないかな…着ぐるみも重いし暑いだろうし。小松さんて腰痛持ちじゃありませんでしたっけ…だ、大丈夫かなー。花王さんと木内さんのすれ違い夫婦も痛くてよかったな…「違和感を感じながらここ迄来ちゃった」って感じが。それを認めてしまうと、今迄の自分の人生って何だったわけ?と言うことにもなる。それでも踏み込んでしまった。やりすごしてもいいんだけど、そうはしなかった。

おもろうてやがて悲しきオールビー作品。描く世界は徹底的に同じもののような気がします。人間は決して解り合えない。言葉は決して有効ではない。それならどうする?それでも生きていく?『動物園物語』も『山羊』も、観た後に孤独を痛感させられるものでした。機会はなかなかないけど、これからもいろんな作品を観ていきたいな。