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2005年03月12日(土)
『天然のカオス、大森南朋』

『天然のカオス、大森南朋』@ユーロスペース1

意外にも東京初開催、大森南朋くんの特集上映。思えば横川や金沢でやっていて羨ましかったものでした。『忘れられぬ刑事たち(全長版)』以外は全て観ているラインナップですが、スクリーンでまた観られる!スクリーンで観てみたかった!と言う作品を選んで行くつもり。初日は『殺し屋1』です。

いっやー久し振りにスクリーンで観ましたが、やはり面白い!4年前の作品なのに、あの“熱”が未だに感じられる。18歳以上で良かったなーと思える大人の娯楽作。今回観て、ホントこれ娯楽作だわと思いました。フィクションとして楽しめる。痛みを知っている大人が楽しめる。サドやマゾの性癖を持っているひとが、どう犯罪と折り合いを付けながら、あるいは犯罪の隙間をくぐりぬけながら満足を得ようとしているか。歌舞伎町のケイオスっぷり。その歌舞伎町にホントに住んでいそうな出演陣。サントラと効果音の素晴らしさ。

先日『パッチギ!』を観た時にも思ったけど、殴れば痛いとか、どのくらい痛めつければひとは死ぬんだってのを肌で判っているひとだったら、何歳であろうがフィクションラインの判断を下せると思うんですよね。『パッチギ!』にはR指定はついていない。むしろノンフィクション的な部分もある。でもこの作品は、先日書いたように“ケンカの礼儀”をわきまえていた。

『殺し屋1』にはR18と言う枠がありますが、こういう基準は年齢では決められないと思います。でも法律で決めとかないとややこしくなるからね…。18歳以上が大人とは言えないが、18歳以下が子供とも言えません。でも18歳にならないとこれは観られない。

同様にSMの世界は、そういうのが好きなひとが好きでやっていると言うか、そうしないと満足を得られないので仕方がないよなあと。ピアッシングやタトゥーもそうかな。勢いでやると後悔するんで、覚悟はしましょうと。傷害や人殺しは犯罪になるってことを想定に入れた上で快楽を追求すればいいんじゃないのと(丸投げ)。で、そうなると相手への想像力が必要になる。SじゃないひとやMじゃないひとへ強要するのはダメですよーと。まあやってみれば目覚めるひともいるかも知れないけど(笑)

セーラちゃんは好きで(殴られるのも含め)あのヒモ男のとこにいたんだったよなあ。原作ではそこらへんが突っ込んで描かれてた。で、イチも、彼女をヒモ男の暴力から救い出そうとしてじゃなくて、自分が暴力を振るいたくての行動だったんだよね。そんなん当事者にしか判りませんからね…。

ああ、だから山本英夫さんの作品は面白いんだ。実はすごく倫理観が見えているひとだと思います。で、その倫理観を揺さぶろうとしている。そんなことが道徳的なの?それをあなたは正しいと言うの?と問いかけてくる。『ホムンクルス』も今後の展開が楽しみです。

しかしこれを映画化した宮崎プロデューサーも三池監督もすごいなと思いましたわ…。えーと、あんまりひとには勧められませんが(苦笑)ホント面白い作品です、映画も原作も。

大森くん若い!黒目多い!かわいい!(そこか)いやーかわいかったなー。その分スイッチ入った時のイチの顔はすっごい怖かった。うわキてるー。ああいう冴えない人物の中に潜んでいる狂気をさらっと見せられるのは何故だろう。会場で配られていたパンフレットにあった「(無論あくまでそう見えるというだけの話だが)この人は本当に人を殺す。いくら凄んでも駄目な人は駄目なのだ。大森さんはさして凄みもせず、“普通に人を殺す”のだ」と言う中井監督のコメントそのものズバリ。こういう空気ってのは努力では出せるものではないよね…。こんなひとが保険会社のCMでほのぼの新婚さんを演じているなんて、空恐ろしいです(笑)役者ってのは怖い職業だ…。

それにしても改めて観ると、タケシのキックがモロ入っていて痛そうでした。うまい具合プロテクターがない箇所(脇腹とか)を蹴ってるよ。こどもは遠慮がないね…(笑)タケシくん、あと何年経ったらこの自分の出演作品が観られるようになるのかな。

そしてあんな衣裳を難なく着こなせている浅野くんはやはりすごいなと思った。着られてる感が全くないよね…。塚本さんのムキムキシーンは思う存分笑わせて頂きました。名シーンです。監督ステキ!國ムラジュンさんも寺島さんもステキ!そしてそんな濃いーメンツに混じってさらりと存在している大森くんはやはり魅力的な役者さん。お、巧く締めました(笑)