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2005年03月09日(水)
『トニー滝谷』+α

『トニー滝谷』@テアトル新宿

合ってる。合ってる。村上春樹さん原作で、市川準監督で、イッセー尾形さんと宮沢りえさんと言うキャスティング。ちょっと不思議で、でもどっしりと重くのしかかる孤独感をすんなりと受け入れられるような錯覚に陥る。それが当たり前のことのように。登場人物は風をまとっている。室内でも髪が風になびいている。室内から見える風景はどこまでも拡がっている。まるで窓がないみたいだ。

西島秀俊さんによるナレーションが淡々と続く。そのナレーションを登場人物がモノローグとして受け継ぎ、自らの心情を吐露するシーンが何度もある。

観客を我に返らせる仕掛け。ナレーターは現在迄の物語を知っている。現在に立っているひとが過去を語っているんですよと言うルールを観ているひとに提示する。その時その時の登場人物が何を思っていたかの確認作業を、観客はナレーションとモノローグを通してやっていくことになる。

その「観客を我に返らせる仕掛け」は、トニー滝谷の美大生時代をも尾形さんが演じていると言う無理にも使われている。尾形さんが、ボサボサロン毛のヅラを被って、若い(歳相応の美大生に見える)子たちと一緒にデッサンをしている。トニー滝谷でもなく小沼英子でもないナレーターは、現在のトニー滝谷の姿しか見たことがないのだと思う。その印象のまま過去が描かれる。最初は驚いたけど、トニー滝谷はずっとこんな佇まいだったんだろうなあと納得もさせられる。

未来への余韻を残して物語は終わる。ナレーターと観客は、ここで初めて、知らないトニー滝谷へ思いを馳せる。これから語られる彼のこと。まだ語られることが起こっていない彼のこと。これから彼はどうするだろう。これから彼は、何をするだろう。

坂本教授の音楽もひたすら静謐。音楽が流れているシーンはとても多いのに、それでも静かだった。

りえちゃん美しかったなー。「洋服を着る為に生まれてきたような」って表現がぴったり。服もだけど、かわいい靴が沢山出てきて楽しかった!絵になるー。

英子の遺骨を抱えて部屋に入ってくるトニー滝谷の姿が印象的だったな…。あの丸めた背中。自分の家なのに、おずおずと入ってくるような姿。目に焼き付いてしまった。

余談。本編上映前に隣のひとがスナックをボリボリバリバリ食べていて、うわー市川監督作品てただでさえ静かなのに、こりゃキツい…と思っていたんだけど、予告編終了と同時にものすごい勢いで袋をたたみ席に身体を沈めスタンバイ。始まったら身動きひとつしなかった。上映前にもりもり食べていたのも、「お腹を鳴らすものか!」ってな意気込みだったのかもな(笑)静かな静かな作品でした。

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■和やかそうだなあ
JOHNNY DEPP LEADS HUNTER S. THOMPSON TRIBUTE
葬儀じゃなくて追悼式だからかな。ベニシオさんもジョン・キューザックもいます。濃い〜なあ…

■にゃー!
16日のおーもりくん特集上映にご本人来場決定してるー。でもこの日はR.E.M.@武道館なんだー